PostmatesとUber は米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に訴状を提出し、会社が労働者を独立自営業者と扱うことを制限する法案は憲法違反だと主張した。訴状にはギグワーカー2名が共同原告として名を連ね、下院法案5号(AB-5)が有効になる1月1日を控えた米国時間12月30日に連邦地方裁判所に提出された。原告は本訴訟の審議中AB-5を暫定差し止めするよう要求している。
訴状はAB-5が国およびカリフォルニア州憲法の複数条項に違反しており、例えばライドシェアリングサービスおよびオンデマンド配送会社における当局のギグワーカーの分類方法は、その他20以上の業界で「著しく似た作業」を行う労働者が適用除外されているのと比べて平等性を欠くと主張している。
AB-5は南カリフォルニア第80選挙区の民主党選出のLorena Gonzalez(ロレーナ・ゴンザレス)議員が起草し、2019年9月にGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)州知事が署名して法律として成立した。そしてこの法律は、Dynamex Operations West対カリフォルニア州ロサンゼルス最高裁判所の裁判で下された、従業員と自営業者の分類方法を規定し、ギグエコノミー・ワーカーは最低賃金や健康保険、労災補償などの福祉を受けられるようにすべきであるとする2018年の画期的裁定を支持することを目的としている。
しかし、この裁判の対立側となるIT企業やビジネスモデルがギグエコノミーに依存している企業、フリーランスのジャーナリストなどは、この法律が自分たちの職業機会と収入を得る能力を制限するものだと主張している。
UberとPostmatesに加え、原告団にはオンデマンドサービス会社のドライバーであるLydia Olson(
リディア・オルソン)氏とMiguel Perez(ミゲル・ペレス)氏が加わっている。ペレス氏はPostmatesのブログ記事で裁判に加わった理由について、AB5は「私がここ数年家族を支えるために依存している自由と柔軟さを脅かす」ものだからだと書いている。Postmatesは声明で「AB5は鈍器であり、議会がまるで行きあたりばったり24業界を適用除外にしたのはそれが理由だ」と語った。
同社は、AB-5の除外対象なりたいわけでもDynamexの判例を覆してほしいと思っているのでもなく、「オンデマンドワーカーのニーズに合わせた近代的で堅牢な安全策を講じるようカリフォルニア州議会と話すよう業界と労働者に呼びかけ、通算可能な年金モデルを確立し、最低賃金より高い報酬を保証し、全労働者が必要としている強い発言権と彼らが要求している柔軟性を与えることを要求したい。これらは現行の国や州の法律では考慮されていない」と付け加えた。
AB-5が平等保護条項に違反している証拠として、訴状は「法案の大部分は、販売員、旅行代理店社員、助成金ライター、工事トラック運転者、漁業従事者などの除外職種を羅列したものである。これらの除外には理由がなく定義はあいまいだったりまったく未定義だったりするため、何が含まれ何が含まれないかを見分けることは不可能だ」と主張している。
さらに訴状は、AB-5は人々がギグカンパニーで働くことを阻止しているのは、適正手続きに反するものであり、また、UberやPostmatesのような会社に契約者を従業員として再分類するよう強制することは、既存の契約を無効化あるいは著しく変更するものであり、契約条項に違反していると指摘している。
AB-5の起草者であるゴンザレス氏は、訴訟に関する声明で「Uberに関してはっきり言えること、それは彼らが、我々全員の安全性を高め、彼らのドライバーが自活できるようにするための規制から逃れるためにはどんなことでもする会社だということだ。その一方で、UberのCEOが億万長者になっているのに対して、多くのドライバーは車の中で寝泊まりすることを余儀なくされている」と語った。
この訴訟の前にも、AB-5を無効化あるいは制限しようとする取組みはあった。10月にはLyft、Uber、DoorDashのドライバー集団が、AB-5に対抗するべく2020年11月に州民投票を行うプロジェクトを提案した。会社から多額の経済的支援を受けているこの法案は、ドライバーが今後も自営業者として働けるだけでなく、最低賃金、経費、医療保険などの福祉も保証するものだ。
今月、フリーランスライターを代表する複数の組織がロサンゼルスの連邦地方裁判所に訴状を提出し、AB-5は言論の自由に対して憲法に反する制約を課していると主張した。その前日、Vox MediaはAB-5に対応するためにカリフォルニア州内のフリーランサー数百人を解雇すると発表した。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )