テック業界に奇妙な感覚が蔓延している。あまりにも無縁で異質な認識することすら困難な感覚だ。何か素晴らしい期待が悪い方へと劇的に変化する感覚。従来止まることのなかったお金の出る蛇口を誰かが締めたような感覚。成長モードにあるときでさえユニット経済が重要であるような感覚。世間は節約モードに入ったのか。
まあ、そこまで極端なことをいうのはやめておこう。しかし我々は今、(比較的)「倹約的」な出来事が驚くほど重なって起きている場面を目撃している。昨年の著名なテックIPOは大成功には程遠かった。Uber、Lyft、Slack、Pinterest、Pelotonはいずれも私がこれを書いている時点でIPO価格を下回っており、中には大きく下落したものもある。市場全体が史上最高値を記録しているときにもかかわらず。6カ月後に大金持ちなれることを夢見ていた人たちは、比較的最近の社員でさえも驚かされただろう。
一方、まだ上場していない企業は出費を抑えるか、あるいは、一か八かのチャンスに賭けようとしている。最近テックユニコーンの間ではレイオフの波が起きている。最近IPO申請したCasperとOne Medicalは、S-1書類のに書いた数字が批判というよりあからさまな嘲笑の的になっている。
WeWork問題についてはなるべく言わない方がよさそうだが、その影響の大きさから無視することはできない。直接的にはソフトバンクの投資失敗の数々がさらにレイオフを呼び、間接的にはシリコンバレー全体のムードを強欲から恐怖の方へと向かわせた。
恐怖の「ほうへ」あって恐怖「へ」ではないことに注意されたい。そこには大きな違いがある。ソフトバンクがいなくなったとしてもベンチャーマネーはそこかしこに山ほどある。ただし、投資家は責任ある資金の使い方を見つけるのに少々苦労している可能性はある。今もベンチャーキャピタリストは、概してテック業界の未来に対して驚くほど楽観的であり、未だに成長を第1に、収益を大差の第2に、キャッシュフローを第3置いており、利益はおそらくさまざまな要因に応じていずれ手に入るものと考えている。
とはいえ、テクノロジーの触れたものは直ちに金に変わるという、かつて蔓延していた感覚はほぼ消え去っている。念の為に言うが、多くの「純ソフトウェア」企業とそのIPOは十分成功している。Zoom、Docusign、Datedogを始め、エンタープライズソフトウェアのフェチでなければ聞いたことのない数多くの会社が実によくやっている。消費者向けテック産業だけが、現在失望させている。あるいは、これまで過大評価されすぎていたというべきかもしれないがそれは観点による。
しかし、最近世界は森であってピザではないという認識が高まりつつあるよはうで、手の届くところにある果実と高い枝に隠れている卵には大きなちがいがある。カスタムソフトウェアを使っているというだけではソフトウェア会社をつくることはできない。それは、今日の賭け金を払っているというだけの意味だ。では、ソフトウェア会社でもなくハードウェア会社でもないとしたら、どうすればテック会社と言えるのだろうか。
その意味で言うと、WeWorkはテック企業ではなく、かつてそうであったこともない。CasperもOne Medicalもテック企業ではない(ただし、これは裏付けのない感覚的なものだ。私の家族の最近の経験から判断すると、One Medicalの新しいソフトウェアシステムは、ケアレベルを改善どころか低下させている)。そういう会社はテック企業のように装いテックの後光をまとっているが、おそろしく説得力がない。
おそらく、この複数市場にまたがる不安は一時的なもので、いくつかの過大宣伝されたIPOと昨年のソフトバンク狂乱の後遺症なのだろう。おそらく、テクノロジーの麦はみせかけの籾殻と分けられて前者はこれからも力強く成長するのだろう。あるいは、もしかしたらだが、 すでに我々は果実が低い枝にぶらさがった黄金の日々が終わりは始めるところを見ていて、本格的な科学か本格的なソフトウェアだけがテクノロジーで成功する道になりつつあるのかもしれない。どちらを望むべきなのかはまだわからない。
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/01/13/2020-01-12-r-i-p-goofy-times/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Jon Evans