米国のような主要マーケットでは、いまや音楽消費の80%超がストリーミングによるものだ。そしてこの分野のリーダー的存在である1社がその恩恵を受けている。Spotify(スポティファイ)は2月5日、2019年第4四半期の決算を発表した。購読者数は前年同期比31%増の2億7100万人で、中でも有料購読者は29%増の1億2500万人だった。総売上高は前年同期比24%増の20億ドル(約2195億円)、粗利益率は25.6%だった。しかし同社はこれまで同様に営業損失も出した。今期の営業損失額は7700万ユーロ(約93億円)で、1株あたり損失は1.14ユーロ(約138円)ほどとなっている。
成長を牽引したのがポッドキャストで、前年から200%成長した。月間アクティブユーザー(MAU)の16%超がポッドキャストコンテンツを聴いている(おそらくThe Ringerのような人気ポッドキャストブランドを買収しようとしている噂があるのはこれが理由の1つだろう(アップデート:SpotifyはThe Ringerを買収していた)。
決算内容は同社の予想と一致する。予想では、MAU数を2億5500万〜2億7000万人、プレミアム購読者を1億2000万〜1億2500万人、売上高を17億4000万〜19億4000万ユーロ(約2100〜2340億円)、粗利益率は23.7〜25.7%、営業損失は3100万〜1億3100万ユーロ(約37〜158億円)としていた。
一方、アナリストは売上高を20億9000万ドル(約2290億円)、1株あたり損失は0.25ドル(約27円)と予想していて、実際の数字はいずれもアナリスト予想を下回った。
Spotifyはまた、2020年第1四半期についての見通しも示し、MAU数2億7900万〜2億8900万人、プレミアム購読者1億2600万〜1億3100万人とした。売上高は17億1000万〜19億1000万ユーロ(約2060〜2300億円)に減少する一方で、粗利益率は23.5〜25.5%で推移すると見込んでいる。
Spotifyは全ストリーミングサービスの中で最大手という位置にい続けているが、資金を十分に持っている企業との競争が激しくなりつつある。Amazon(アマゾン)は先月、Amazon Musicのユーザーが5500万人であることを発表し、Apple(アップル)は有料ユーザーが6000万人であることを昨夏明らかにした。そしTikTok(ティクトック)も音楽ストリーミングサービスの準備を進めている。ショートビデオで知られるTikTokは音楽に関心があり、そしてモバイルの扱いに慣れている急増中のオーディエンスを取り込むことで音楽ストリーミング業界に一気に食い込みたい考えだ。
上記のサービスはおそらく米国と欧州で最も知れているものだが、他のマーケットをみると、競争はもっと激しい。インドのGaanaは同国だけでMAU1億5200万人を抱え、同国での成長を模索するSpotifyにとって手強い相手だ。
Spotifyは第4四半期のMAUは「これまでの中で最も増加幅が大きく、購読者を1000万人増やすのにかかった時間は最も短かった」と述べた。これは、無料の3カ月トライアル提供によるところが大きく、無料トライアルは現在家族向けプランにも適用されている。一部の小売でも6カ月無料トライアルを提供している。継続しているGoogle Homeとのパートナーシップや、AlexaオーナーへのSpotify無料サービス提供もまた、今後成長に貢献するはずだ。
売上高の成長に関しては、2つの主要事業エリアで逆のトレンドがあると同社は指摘する。平均売上高が5%減少したにもかかわらず(無料トライアルが拡大されているため)、プレミアム講読の売上高はSpotifyの予想を上回って前年比24%増の16億3800万ユーロ(約1980億円)だった。広告は23%増の2億1700万ユーロ(約262億円)だった。
前年比80%増の5億5100万ユーロ(約665億円)だった営業経費と、1株あたりの損失への影響について、Spotifyは「弊社の株価上昇による社会的費用が想定よりも大きかったため」と説明した。
同社が指摘した社会的費用というのは、株価連動型報酬に関係する給与税だ。「スウェーデンはソーシャルコストを考慮するが、サービスを展開するいくつかの国で我々はソーシャル税の対象となっている。ガイダンスでは株価の変動は見通せず、株価の上下は営業経費に影響を及ぼす。第4四半期では、株価の上昇で社会的費用が計画よりも2000万ユーロ(約24億円)かさんだ」。
「想定よりも膨らんだ社会的費用をのぞき、営業損失は粗利額がわずかによくなった結果、予想よりも改善された」とも付け加えた。ポッドキャストは力強い成長を見せ、Spotifyの中で存在感は大きい。Spotifyには70万タイトルものポッドキャストがあり、新たなディスカバリー機能でユーザーはカタログ内を探検できる。
Spotifyは昨年、ポッドキャスト関連事業の買収に4〜5億ドル(約440〜550億円)を使ったとされている。そして今年に入ってもポッドキャストを買収した。Bill Simmons(ビル・シモンズ)氏のThe Ringer networkだ。
今回の買収をSpotifyはスポーツコンテンツの強化のためだけでなく、オーディオを超えた人気のメディア展開という大きな動きをつくりだすために活用している。「我々がここで投資しているトレンドは、ラジオのオンラインへの移行だ」とCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は決算報告で述べた。「我々は次のESPNを買収した」。
Spotifyは長い間、アーティストがコンテンツを売って収益をあげるのをサポートするツールを提供する、両面マーケットプレイスの構築に取り組んできた。またポッドキャストにも守備範囲を広げ、いまやSpotifyはオリジナルのコンテンツとサービスに力を入れ国際展開もしている。日本での「Hypnosis Radio」(ヒプノシスラジオ)、メキシコでの「Fausto」(ファウスト)、ドイツの視聴者向けの「SEKTEN & KULTE」と呼ばれるParcast社「Cults」のリメイク、インドにおける3つのオリジナルポッドキャスト「22 Yarns」「Love Aaj Kal」「Bhaskar Bose」などがある。
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(翻訳:Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/02/06/2020-02-05-spotify-q4-2/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Ingrid Lunden