●What’s ビザールウォッチ?
<今月の時計>
Vol.13
FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4
2020年は閏年。2月は29日まで存在する。それはなぜか? カレンダー、すなわち暦は、太陽の動きと月の満ち欠けから導き出され、そこに権力者のわがままが加わることで、複雑に変化していった。そんな数百年単位の暦の変遷を語る、ロマンティックな時計が存在する。
FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4
宇宙の法則を再現する機械仕掛けの時計
「暦」は不思議だ。本来なら、1日=24時間と同じく、1年=365日で固定するべきだ。しかし実際には、閏(うるう)年がある。では、閏年とは何なのか?
紀元前3000年ごろ古代エジプトでは、太陽と月を観測することで、1年が約356.25日であることを理解した。ここで問題になるのが「0.25日」という端数。これをどのように扱うかで、その後の世界覇者である古代ローマは悩んだ。というのも為政者は、太陽や月といった人智の及ばない存在に対しても影響力がある(と見せかける)のが大切。それゆえ暦を読み解き、儀式を行うことが重要だったのだ。
偉人ユリウス・カエサル(「ブルータス、お前もか!」の人)が、紀元前45年に制定したのがユリウス暦。これは、1年を30日の月と31日の月とに分けて並べるというもので、重要性が薄かった2月のみ28日にする。交互ではないのは、8月生まれのアウグストゥス(ローマ帝国初代皇帝)に敬意(忖度)を表して8月を31日に格上げし、次の9月を30日に変更。それ以降を交互にしているから。そして4年に1度、とくに宗教的儀式もない時期である2月を+1日にすることで、0.25×4=1日のズレを吸収した。
さて、このユリウス暦は、その後1000年以上も使われてきたが、やっぱりちょっとずれが気になるという話が出てきた。というのもキリスト教の中で重要な祝祭である「イースター(復活祭)」は、暦と連動しているのだ。十字架にかけられたイエス・キリストが、その3日後に復活したことを祝するイースターは、とても大切な日。日が決まっていない移動祝日で、「春分の日(昼と夜の長さが同じになる春の始まりの日)の後の最初の満月の次の日曜日」という複雑な暦によって決められる。経験上、春分の日は3月21日ごろになるはずなのに、どんどん暦がズレてきた。実は太陽が作る1年は、正確には365.2422日なのだ。この問題に多くの学者が取り組み、最終的に第226代ローマ教皇グレゴリウス13世が、1582年に「グレゴリオ暦」を制定。「西暦が100の倍数で400の倍数でない年は閏年としない」というルールの暦が、現代も使われている。
さて、このグレゴリオ暦だが2000年や2400年、2800年は閏年になるが、2100年、2200年、2300年、2500年、2600年、2700年は平年になるということ。この複雑すぎる暦を、歯車とレバーの組み合わせだけで挑戦したのが「フランク ミュラー」である。
そもそも機械式時計には、月ごとの日数の変化と4年ごとの閏年の有無を把握する「永久カレンダー」機構が存在している。これだけも十分に特別だが、フランク ミュラーの「エターナルカレンダー」は、永久カレンダー機構に加えて、100年ごとにやってくる“閏年にならない年”にも対応。該当年になると、2時位置のインジケーターがグリーンになるという仕組みになっており、カレンダーも自動的に修正する。100年ごとに一度しか使われない機構を持つ時計というのは、十分にビザールといえよう。
フランク ミュラーといえば華やかなデザインでお馴染みだが、実は“マスター オブ コンプリケーション”の異名をもつ超技巧派。この「エテルニタス メガ4」は、ありとあらゆる複雑機構を詰め込んでおり、価格は3億円超! ラテン語で永久を意味する“エテルニタス”と命名しただけのことはある、空前絶後の永久時計だ。
FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4
自動巻き、18KWGケース、ケースサイズ縦61×横42.1㎜。370,700,000円
問フランク ミュラー ウォッチランド東京 ☎03-3549-1949
https://www.franckmuller-japan.com/
篠田哲生が断言するビザール度!
視認性★★★★4
メカニズム★★★★5
コンセプト★★★★★5
プライス★★★★5
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000121230/
- Source:デジモノステーション
- Author:篠田哲生