【#家電最前線】
企業戦略から機能性・デザイン性に最新テクノロジーなど、日々革新を続ける白物家電業界から届く新製品を、記者独自の目線によるレポートで紹介。新たなライフスタイルやビジネス視点のヒントを探っていきます。
アイロボットジャパンがロボット掃除機の最新モデル「ルンバ s9+」を発表しました。従来モデルの「i7シリーズ」と同様、光学センサーによって毎秒23万400以上のデータポイントを収集しながら住宅内の地図作成と自己位置推定を同時に行う「vSLAMナビゲーション」機能を搭載したモデルです。2月28日発売で、直販価格は16万9800円(税抜き)。
■“Dシェイプ”として生まれ変わった
清掃後に自動的にダストケースからゴミを吸い出す「ルンバ i7+」と同様に、“ダストステーション”が付属しており、ダストケース30個分のゴミをためておくことができるようになっています。
「ルンバ s9+」の大きな特徴は、ルンバシリーズとして初めて“D型シェイプ”を採用した点にあります。D型シェイプはネイトロボティクスの「Neato Botvac」シリーズなどが採用するスタイル。
従来のルンバは丸型シェイプでブラシ(吸引口)が中央部分(車輪の間)に配置されていましたが、最新モデルではブラシを本体前面に配置したことで幅が従来比で約30%広がりました。
それに加えて、吸引力はルンバ600シリーズに比べて約40倍にまでアップしたとのこと。これまでの最上位モデルであるi7シリーズは600シリーズ比で10倍となり、i7シリーズ比で約4倍にアップしたことになります。
■CEOが語るs9+の新デザインになった理由
アイロボット・コーポレイション CEOで創設者のコリン・アングル氏は「クリーニングシステムの幅を広げるためにD型シェイプを採用しました」とコメント。
「幅を広げたことで清掃効率が高まり、部屋をより早くきれいにできるようになりました。ブラシを前方に配置しているため、部屋の隅のゴミをより取りやすくなっています」(コリン・アングルCEO)
ルンバは最も古くから続くロボット掃除機のシリーズですが、D型シェイプを採用するという意味では後発。D型シェイプの方がブラシを前方に配置して幅も広げられるというのは明らかですが、なぜこれまで採用してこなかったのかというと、「丸型とD型では動きのナビゲーションが異なるため」だとのこと。
アイロボットジャパン合同会社 プロダクト&マーケティングストラテジー部 部長の山内洋氏は、丸型からD型に変更した経緯について次のように話しました。
「ルンバs9+は部屋の隅や壁際のすき間にもアプローチできる『PerfectEdgeテクノロジー』を採用しています。さまざまな形状を試作評価した上で、狭い場所や袋小路に入った時に回転して出てきやすいことから丸型がベストと考えていましたが、センサーに技術革新があったことでD型でも正確に入って出てこられるようになりました」(山内部長)
s9+はvSLAMに加えて、部屋の間取りを学習して効率的に掃除する「Imprintスマートマッピング」も搭載しています。学習した間取りをスマートフォンアプリで確認し、フロア全体でなく「リビングだけ」とか「主寝室だけ」といったように決めた部屋だけ掃除することも可能です。
■発売後もどんどん賢くなっていく
また、本体内蔵ソフトウエアは3カ月ごとにアップデートしていく模様。
「クアッドコアプロセッサや大容量メモリ、高性能光学センサーなど、清掃だけの機能で見れば、かなりの余裕を持たせた設計になっています。これは将来のソフトウエアアップデートを見据えたもので、3カ月ごとにアップデートしていきます。アイロボットはフィードバックに基づいて機能追加改善を常に行っています」(山内部長)
s9+は米国では2019年5月に発売したが、日本へは9カ月も遅れての投入となった。その経緯についてアイロボットジャパン合同会社 代表執行役員社長の挽野元氏は次のように語った。
「我々は基本的にグローバルプロダクト戦略を採っており、世界で同じ商品を売ろうとしていますが、各市場での品質要求は異なります。日本のお客様は品質要求が非常に高いので、ある程度製品が受け入れられることが重要です。そこで(米国などの市場での)フィードバックを聞きながら、よりよいものを市場に投入することになりました」(挽野社長)
コリン・アングルCEOは続ける。
「ロボットの形状がD型になったことでナビゲーションがより複雑になりました。日本の家庭では家具やものの密度が高いため、s9+は2世代目のナビゲーションソフトウエアを搭載しています。これはいい意志決定になったと考えています」(アングルCEO)
■さまざまなサービスを通じてルンバ愛好家を増やしていく狙い
アイロボットは2019年に史上初の売上高12億ドル(前年比+11%)、累計販売台数3000万台を達成しました。そのうち900万台が「iRobot Home」アプリを通じてインターネットにつながっているといいます。
2018年10月には税抜き5万円を切りながらもWi-Fiに接続して遠隔操作も可能なスタンダードモデル「ルンバe5」を発売し、15カ月連続数量シェア1位に。また、2019年2月に発売した「ルンバi7」シリーズは販売金額シェアで11カ月連続1位になったと挽野社長は説明。
2019年6月には月額1200円から利用できるサブスクリプションサービス「ロボットスマートプラン」をスタート。挽野社長は「まだスタートして1年経っていませんが、継続利用したいという方が98%おり、『迷っているけど使ってみようか』というきっかけになっていると思う」と語りました。
挽野社長は今後の戦略やルンバs9+について次のようにアピールした。
「2018年10月に、『一家に1台ロボット掃除機を』と宣言し、2023年までの5年間でルンバの普及率10%を達成したいと発表しました。いろいろな試みを通じて現在は普及率6.3%となっており、着実に進んでいます。
2020年、アイロボットは『最高の顧客体験を提供する』というテーマで市場にアプローチしていこうと思っています。ルンバs9+は最高レベルの技術を持った商品です。これを使っていただいて、『使ってよかったな』、『生活の質が上がったな』と思える世界を実現していきたいと考えております」(挽野社長)
(取材・文/安蔵靖志)
- Original:https://www.goodspress.jp/news/280276/
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