さまざまなプログラミング言語に対するコーディングクラスを提供している、米国ニューヨークに拠点を置くオンラインインタラクティブプラットフォームのCodecademyは、目立たない企業だ。創業者のZach Sims(ザック・シムズ)氏が、まだコロンビア大学の学生だった2011年に会社を創業してから、同社は堅実に運営を続けてきた。それは多くの人が知っていて、利用もしてきたブランドだが、耳目を集める資金調達ラウンドは行わず、またニュース価値のあるレイオフもなしに着実に成長して来たために、この90人の会社が日頃プレスの注目を集めることはほぼない。
それはシムズ氏にとっては気になることではない。私たちはシムズ氏と先週話をする機会を持ったが、それは最近若いライバルのLambda Schoolが行った4800万ドル(約53億円)の資金調達という、シムズ氏にとってはあまりうれしくないニュースの直後のことだった。ちなみにこれまでCodecademyが調達してきたのは総額で4250万ドル(約47億円)である。シムズ氏は、彼の会社は順調に進み続けていると語る。
ここでの問題は、それがVCたちにとって「いい」かどうかの問題が、ますます大きくなってきているということだ。実際、Codecademy は、多くのスタートアップたちが現在直面しているものと同様に、スマートで堅実だが、大きく成長しているビジネスではないという厄介な立場にあり、それが次のステップに対する疑問を投げかけている。
私たちが最後にシムズ氏と話したのはおよそ2年前だが、当時それまで意味のある収益をどのように生み出すかで長年苦労してきたCodecademyは、2つのプレミアム製品を開始したばかりだった。それらの1つであるCodecademy Proは、コーディングの基礎に加えて、機械学習やデータ分析を含む最大10領域をより深く学ぶためために月に40ドル(約4500円)(または年間240ドル(約2万7000円)を喜んで払いたいひとのためのコースだ。シムズ氏は、これは軌道に乗っていると言うものの、その詳細について語ることは拒んだ。
ウェブサイト開発、プログラミング、もしくはデータサイエンスのいずれかに6〜10週間学習者を没頭させるようにデザインされた2つ目の製品「Codecademy Pro Intensive」は、その後廃止されている。
どんな人が有料ユーザーなのだろうか?シムズ氏によれば、そうした人たちは2種類に分かれる傾向があるという。1つは単発のスキルセットを学ぶ人たちで、おそらくウェブサイトを作るために切羽詰まっている人たちだ。そしてもう1つは、現在職には就いているものの、昇格もしくは転職を考えており、Codecademyに週に数時間費やすことがそれを実現するための手段だと考える人たちである。およそ60%が米国の居住者で、残りはインドやブラジルを含む様々な場所の人たちだ。コーディングスキルの必要性は「米国に限られる現象ではありません」とシムズは指摘する。
シムズ氏は、Codecademyの価格設定を考えると、投資の回収はかなり迅速行えるだろうと口にした。比較として挙げるなら、一部のオンプレミスコーディングスクールの中には、年間2万ドル(約220万円)以上を請求するものもある。これはたいそうな金額だが、そうしたスクールは利用者が参加しやすくするために事前の徴収は行わずに、就職した後の給与の中から一定の割合で徴収する。
当然ながらCodecademyは主にオンラインで運営されているため、そこで認識されている欠点についてときおり批判されている。ある顧客(自称コンピューターサイエンス専攻)は12月に思慮深いレビュー を投稿しているが、そこには「プログラマーであるということは、単に構文を覚えられるということ以上のものだ」と書いている。確かにCodecademyは「達成しやすい中毒性のあるひと口サイズの学習」を通じて「多くの学習者にコンピューターサイエンスの基礎」を伝えてきたものの、このレビュアーはそれは「プログラマーのマインドセット」の育成には不十分だと書いている。
とはいえ、十分な数の人たちがCodecademyの提供する膨大な数のコンテンツに価値を見出したおかげで、同社は最近重要なマイルストーンに到達した。現在はキャッシュフローが黒字になったのだ。昨年は収益を2倍にした。
シムズ氏はこの結果を当然のこととして誇りにしており、「持続性と利益性が高い成長を続け、ビジネスに再投資可能な現金を生み出しているコーディングプラットフォームは、ほとんどありません」と語る。
Codecademyは最初から変わらない追い風を受けている。コーディングスクールに対してはより広く懐疑的な見方が広まっているが、ソフトウェアの設計、実装、修正、そしてセキュリティ実現の能力は、ますます重要になっている。手ごろか価格の関連教育を受けられることは、相変わらず魅力的な提案のままなのだ。
これは同社が消費者に対して提供を続けているものであり、企業の場合は、Codecademy型のコースを従業員に対して提供し始めているのではないかと私たちは推測している。Codecademyはすでにコースのまとめ売りを行っているが、シムズ氏は、2020年に力を入れたいのは、従業員に対して教育特典を提供したいと考える企業とのタイアップだと語っている。
同様に投資家の喜ぶ絵を描くつもりなのかどうかは、明らかではない。シムズ氏に対して、より広意味での資金調達について尋ねたところ、回答は拒否された。
確かに、先週の「ポートフォリオの肥大化」を扱った記事で説明したように、後期ラウンドは成立させることが難しくなってきている。その理由は、近年VCたちがこれまでにない速さで、新しいスタートアップに注ぎ込むための資金を大量に集めているからだ。そして、彼らはそのすべての資本からリターンを得るために、「次の有望株」を見つける必要に迫られている。
これにより、着実に成長している多くの企業が、今のところ自分のことは自分で面倒をみる状況になっている。
その結果がどうなるかは、まだ誰にもわからない。Codecademyの黒字化したキャッシュフローは、その答を出す期限を引き伸ばしてくれるだろう。
トップ画像クレジット:scyther5 / Getty Images
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(翻訳:sako)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/02/21/eight-years-later/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Connie Loizos