空間を時間単位で提供するサービスといえば、古くからある貸し会議室から「スペースマーケット」のようなマッチングプラットフォームまで、今や、さまざまな選択肢が選べるようになっている。2019年4月に創業したPit in(ピットイン)が提供するのも、時間・分単位で多目的に使えるスペースのサービスだ。
「あらゆる空間をレスポンシブにする」をビジョンに掲げるPit inは、ソフトバンク出身の代表取締役CEO・中村知良氏が、不動産系スタートアップのイタンジ創業者である伊藤嘉盛氏と共同創業した会社。彼らの「レスポンシブスペース」とは、不動産の非稼働在庫を「年契約」ではなく「時・分単位」で利用可能にする“フラグメント化”と、単一の事業所によるシングルユースから複数業態で利用できる“マルチユース化”により、ユーザーの多目的なニーズに応えようというものだ。
2020年2月現在、渋谷、六本木、新橋で計7拠点を自社で開発・運営するPit in。テナントが決まりづらい、築年数が古いビルでサービスを展開しており、オープンから累計で、延べ1万3000名超のユーザーに利用されているという。
冒頭に挙げたように、コワーキングスペースや貸し会議室、あるいはスペースシェアのプラットフォームなど、「時間単位でスペースを借りる」というニーズに対しては、既に対応するサービスがいくつもある。そうした中でPit inが特徴とする点について、中村氏は「内装デザインから清掃・管理などのオペレーション、予約まで、顧客体験を一気通貫で提供できるところだ」と説明する。
「スペースマーケットなどのマッチングプラットフォームは、物件を持たない“メディア”だと捉えている。我々は物件を借り上げて開発し、オペレーターとして運営する。また、格安のレンタルスペースでは、Wi-Fiの速度などが、ビジネスで利用する際に必要なレベルになかったり、無人で運営する前提となっていて、清掃やメンテナンスが行き届いていなかったりすることも多い。Pit inでは、社外でも安心してビジネスユースで使えるスペースの提供を行っている」(中村氏)
また、予約の簡単さも特徴だというPit in。コワーキングスペースはファシリティや環境面では安心できるが、予約が完了するまでに事前契約や見積もりなど、手間がかかることも多い。Pit inでは、オプションや清掃料などの複雑な料金体系を排除し、5分ほどで予約完了できるサイトを自社で開発。ユーザー予約体験にも自信があるという。
創業のきっかけについて中村氏は「自分たちが手軽に使える打ち合わせ場所がなくて、自分たちが欲しかったサービスを作った」と話している。「世の中にはまだ、ビジネスで安心して使えるスペースが不足している。自分たちのオフィスとして使える場を、もっと増やしたい」(中村氏)
Pit inは2月28日、伊藤氏が代表を務めるトグルのグループ企業・社員と不動産テックVCのデジタルベースキャピタルを引受先として、総額約3000万円の資金調達を実施したことを明らかにしている。
調達資金は新規拠点の開発、予約サービスの開発に充てるというPit in。中村氏は「都内のほかの地域にまずは拠点を展開し、その後大阪など各都市部にも進出したい」と話しており、2020年内に全国50拠点の開発・運営を目指すとしている。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/02/28/pit-in-fundraising/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Wakako Mukohata