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注目が集まるオンラインイベントのプラットフォームを提供するRun The Wolrd

このところ毎日、イベントがキャンセルされたニュースを聞く。もちろん新型コロナウイルスに対する懸念が原因だ。Microsoftはゲーム開発者のカンファレンス、GDCへの参加を取り止めたと発表した。Facebookも5月に予定されていたF8 2020の開催をキャンセルした。

F8はFacebook最大のイベントであり、毎年大勢の参加者を集めてきただけにキャンセルの影響は極めて大きい。 Facebookはイベントのオフラインで行うものを中止したものの、他はオンラインでストリーミングする計画だ。

Facebookであれば、こうした大規模イベントのオンライン化は社内のテクノロジーを利用して行えるだろう。しかしそうしたリソースを社内にもたない場合、新しいオプションがある。社員18人、創立1年半になるRun The Worldは台湾と中国にもエンジニアのチームを持つマウンテンビューのスタートアップだ。

Run The Wolrdはオンラインイベントの組織、運営に必要な参加登録、チケット販売、ビデオカンファレンス、ソーシャルネットワークなどを含むプラットフォームを提供する。パンデミックに対する懸念からイベントのオンライン化を考えている主催者には理想的なサービスだ。

このスタートアップに対する最大の投資家はシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、a16nとして知られるAndreessen Horowitzで、すでに430万ドル(約4億6500万円)のシード資金を投じている。株主にはGSR Ventures、Pear Ventures、122 West Ventures、Unanimous Capitalに加え、エンジェル投資家でFacebookグループのCalibraのバイスプレジデントであるKevin Weil(ケビン・ワイル)氏、Patreonの共同ファウンダー、Sam Yam(サム・ヤン)氏、Jetblue Airwaysの会長であるJoel Peterson(ジョエル・ピーターソン)氏らが参加している。

写真左のRun The Worldの共同ファウンダー、CEOのXiaoyin Qu(シャオイン・ク)氏はFacebookとInstagramでエンタテインメント関係のプロダクトのリーダーを務めた。ク氏によれば「エンタテインメント分野のインフルエンサーやクリエーターに関係あるすべて」を扱ったという。

ク氏はスタンフォード大学のMBAを中退して、写真右のXuan Jiang(スアン・チアン)氏とともにこのスタートアップを始めた。チアン氏はFacebookでク氏の元同僚でジョージア工科大学のコンピュータ科学の修士だ。Facebookではイベント、広告、ストーリーの上級エンジニアだった。

Andreessen Horowitzのジェネラル・パートナーのひとりででこの投資をまとめたConnie Chan(コニー・チャン)氏にク氏について教えられ、私はク氏に2月27日にインタビューすることができた。

ク氏によれば、このスタートアップを始めたきっかけは中国で医師、医療研究者として働く母親の体験だった。2018年に髄膜炎の専門家としてシカゴのカンファレンスに参加したとき、やはり髄膜炎を研究しているドバイの医師と知り合い、貴重な知見を交換することができた。

シリコンバレーの起業家やジャーナリストのようにいつも世界を飛び歩いている人間にはさほど特別な経験には思えないが、ク氏の母親にとっては大事件だった。中国からの出国手続き、アメリカのビザ取得の煩雑さはいうまでもなく、チケットの購入や宿泊にはひと財産が必要で、旅行時間も非常に長い。しかもこの旅は35年の医師生活で初めての海外出張だったという。

ク氏は「スタンフォードだったら毎日のようにカンファレンスが開かれているので、キャンパスを歩いていれば避けるのが難しいくらいだ」とジョークを言う。

多くのファウンダーと同様、ク氏も自分自身や身近な人々が現実に遭遇した「痛点」を解決するために創業した。ク氏の場合は、母親が中国にいながらリモートワークで参加し、髄膜炎の研究に役立つ情報を得られるオンラインで行われるカンファレンスのプラットフォームを作ろうとした。

このプラットフォームの提供は図らずも絶好のタイミングとなっている。現在、多くの人々が集まるイベントを計画している主催者はRun The Worldが提供するようなオンラインイベントへの切り替えを真剣に検討しているところだ。

ク氏のスタートアップが実際にサービスの提供を始めたのは4カ月前に過ぎないが、すでに数十回のイベントをホストしており、予定されているイベントは数百にも上る。ク氏によれば、ユーザーの1社は wuhan2020という武漢のオープンソースコミュニティーで、新型コロナウイルス対策に役立つソリューションを求めて3000人以上のデベロッパーがリモートワークによるハッカソンを実施している。

このプラットフォームはラオスにおけるゾウの保護に関するカンファレンスを実施し、2週間で15カ国から3万ドル(約324万円)の寄付を集めることができた。主催者は乏しい予算しかなかったが、まったくムダのない低予算でオンラインイベントを開催し、経済的に余裕ある人をはじめとした多くの人々から寄付をつのることができた。

Run The Worldはこうした小型、低予算のイベントを効率的にホストできるのも強みだ。たとえばエンジニア向けにデートのテクニックをコーチするというイベントではわずか40人を対象にしたワークショップを開催することができた。ク氏によれば主催者は1300ドル(約14万円)の収入を得ることができた。

このスタートアップのビジネスモデルはごく単純で、カンファレンスのチケット販売額の25%を得るのと引き換えにイベントの主催に必要なサービス一切を提供する。これにはカンファレンスの紹介、告知のテンプレートから参加登録、チケットの販売と支払い(Stripeを利用)、カンファレンスのストリーミング、専用のソーシャルネットワーク、イベント終了後のフォローアップなどが含まれる。さらに現実のカンファレンスにおけるカクテルパーティーをオンライン化した参加者同志をマッチングして数分間親しく会話できる機能も含まれる。

【略】

Run The Worldが規模を拡大すれば「(副作用を取り除くための)新しい方法を考えねばならないだろう」とク氏は言う。

FacebookとInstagramにおける経験が、プラットフォームの構造や成長を勢いをづけるビジネスモデルについての洞察を与えたことは間違いない。ともあれク氏は「200万人を集めるイベントを扱いたいとは思わない。むしろ50人が集まるイベントを200万回扱いたい」と述べた。

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滑川海彦@Facebook

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