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楽天モバイルの料金プランは本当に安いのか検証してみた

楽天モバイルが4月から自社回線での携帯電話サービスを開始します。正確に言えば、昨年10月から「無料サポータープログラム」として限定的なサービスを始めていましたが、それが誰もが利用できる正式なサービスに切り替わるわけです。

3月4日にライブ中継された発表会では、気になる料金プランが明らかにされました。同社が「ワンプラン」という通り、プランはひとつだけ。月額2980円の「Rakuten UN-LIMIT」というプランだけです。楽天回線エリアのデータ通信は使い放題で、国内通話もかけ放題、さらに海外でのデータ通信も月に2GBまでは無料で使えます。かなりお得な内容です。しかも、300万人までは1年間無料。ほとんどの人が無料になると考えていいでしょう。

▲楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」の内容。300万人は1年無料。すでに申し込み受け付けが始まっているが、無料対象となるのは先着順ではないとのこと

しかしこのプランには、注意すべき点がいくつかあります。まず、データ使い放題になるのは「楽天回線エリアだけ」ということ。楽天モバイルは、現在、急ピッチで基地局を設置していますが、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県などの一部エリアに限られます。しかし、エリア外では通話・通信ができないわけではなく、パートナー契約を結んでいるau(KDDI)の回線につながります。ただし、au回線に接続した場合は使い放題にはならず、1ヶ月に使えるのは2GBまで。足りない場合は、1GBにつき500円の追加チャージが必要になります。

▲「Rakuten UN-LIMIT」の詳細。au回線エリアでは月に2GBまでしか使えず、足りない場合は、500円/1GBの追加購入が必要

▲2020年3月現在、楽天回線がつながるのは東京23区、名古屋市、大阪市およびその周辺と、神戸市の一部地域など。2021年3月までに全国に拡大する計画

1年無料なので、主に楽天回線エリアで使う人は申し込む価値はあるでしょう。楽天エリア以外に住んでいたり、訪れたりする機会は多い人は、慎重に検討する必要がありそうです。

では、「1年無料」はさておき、条件付きながら「使い放題で月額2980円」という料金プランは本当に安いのでしょうか? 各社の料金プランと比べてみました。

■大手3キャリアの大容量プランよりも格段に安いが…

ドコモの「ギガホ」は30GBまでの高速通信が使えて、超過後は最大1Mbpsに減速されるプランです。しかし4月30日まで、毎月60GBまで使える「ギガホ増量キャンペーン」が実施されており、5月以降も同様のキャンペーンを続行することが予告されています。よほどのヘビーユーザーでない限り、1日に2GBも使うことはないでしょうから、実質的には「ほぼ使い放題」のプランと言っていいでしょう。

auの「auデータMAXプラン Pro」は、データ通信が使い放題のプランですが、テザリング、データシェア(複数台での利用)、世界データ定額で使う場合には合計30GBまでという制約があります。

ソフトバンクが3月12日から提供する「メリハリプラン」は、従来の「ウルトラギガモンスター+」と同じく「YouTube」「Amazon Prime Video」「TVer」などの動画サービスと、「LINE」「Twitter」「Facebook」などのSNSを利用する際のデータ消費がカウントされません。それに加えて50GBまで使えるので、これも「ほぼ使い放題」のプランと言えるでしょう。

大手3キャリアのプランは、対象の固定通信サービスに加入したり、家族で契約したりすると割引が適用されます。最大限の割引が適用され、5分までの通話が無料になるサービスを追加した場合、各社の料金は次のようになります。

楽天モバイル
1年目:無料
2年目以降:2980円
2年間合計:3万5760円

NTTドコモ
6カ月目まで:4680円
7カ月目以降:5680円
2年間合計:13万320円

au
6カ月目まで:4980円
7カ月目〜12カ月目:5980円
13カ月目以降:6180円
2年間合計:13万9920円

ソフトバンク
6カ月目まで:4280円
7カ月目以降:5280円
2年間合計:12万720円

楽天回線だけで足りるという前提であれば、楽天モバイルの安さは圧倒的です。しかし先述の通り、楽天回線のエリア外に居住していたり勤務したりしている人は、注意が必要です。au回線エリアで2GBを使い切ると速度制限がかけられ、データ容量の追加購入が必要になります。

 

■既存の格安スマホより割高になることも!?

次に、「格安スマホ」と呼ばれる、大手キャリアのサブブランドの料金プランと比べてみました。

ワイモバイルの最安プランは「スマホベーシックプランS」。月額2680円で月に3GBまでのデータ通信ができて、10分以内の国内通話は無料というプランです。

UQモバイルの最安プランは「スマホプラン S」。月額1980円で月に3GBまで使えるプランですが、通話料は従量課金(20円/30秒)です。ワイモバイルと同じように、10分以内の国内通話をかけ放題で使うには、月額700円のオプションを追加する必要があります。

ワイモバイルには対象の固定通信サービスへの加入、または家族での利用に対する割引サービスがあります。UQモバイルも家族での利用する場合は割引が適用されます。これらの割引が適用された場合の各社の最安料金は下記のようになります。

楽天モバイル
1年目:無料
2年目以降:2980円
2年間合計:3万5760円

ワイモバイル
6カ月目まで:1480円
7カ月目以降:2180円
2年間合計:4万8120円

UQモバイル
2180円
2年間合計:5万2320円

楽天モバイルは1年目は無料ですが、2年目以降はワイモバイルとUQモバイルのほうが安くなります。UQモバイルは、ここでは月額700円の「かけ放題(10分/回)」を追加して計算しましたが、月額500円の「通話パック(60分/月)」を選ぶとさらに安くでき、そんなに電話をかけないのであればオプションの通話定額プランに加入する必要がありません。コストを最重視するのであれば、UQモバイルや、他のMVNOが経済的と言えそうです。

 

■海外で使う場合にお得なキャリアは?

楽天モバイルは、海外渡航時の通話・通信が安いこともセールスポイントとしています。海外出張・旅行が多い人は、検討する価値がありそうですね。大手3社の海外ローミングサービスと比べてみました。

▲海外渡航時のデータ通信は月に2GBまでを利用でき、追加購入は500円/1GB。日本への通話は無料

データ通信については、楽天モバイルは2GBまで。例えば、5GBまで使った場合は、3GBを追加チャージする必要があり、1500円が請求されます。

ドコモとauは、定額料金を支払うことで、国内で使っているデータプランが消費される仕組みです。ソフトバンクは「海外パケットし放題」というサービスを提供し、他社と比べると、やや割高感があります。しかし「アメリカ放題」という独自サービスがあり、アメリカに滞在時はデータ通信が使い放題になります。

通話料は、渡航先から日本向けに電話をかける場合は、楽天モバイルは「Rakuten Link」という専用アプリから発信することで、かけ放題です。大手3キャリアは通話は従量課金となり、日本国内での通話料よりも割高です。しかし、ソフトバンクは「アメリカ放題」によって通話も無料になります。アメリカに行く場合は、ソフトバンクが圧倒的にお得という認識で間違いありません。

 

(取材・文/村元正剛

むらもとまさかた/ITライター

iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。

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