日本レストランエンタプライズが運営するそばいちは、注文が入ったら店舗で生蕎麦を茹でて提供するスタイル。
コネクテッドロボティクスの沢登哲也CEOによると「東小金井駅は弊社から近いこともあり、実証実験の場として選ばれた」とのこと。「生蕎麦を茹でるというそばいちの調理方法が弊社開発のロボットとマッチしました。これまでそれほど気にしてなかったのですが、食べ比べてみると茹でおきした蕎麦とはまったく違いました」とまずは味の感想を語ってくれた。現在、蕎麦店だけでなくラーメン店などからも問い合わせが来ているそうで、「ラーメン、特にとんこつラーメンの場合は麺の硬さを選べますが、それこそがロボットが得意とする部分です」と沢登氏。
駅そば店は朝早くから夜遅くまで稼働時間が長いことからメンテンスの頻度について質問したところ「メーカーによりますが汎用アームロボットは4〜5年の連続稼働を想定して開発されており、実際には10年ぐらいは大きな故障もなく使えることが多い」とのこと。なお、今回の蕎麦茹でロボットの導入コストは明らかにされていないが、以前の取材で沢登氏は「RaaS(ロボットをサービスとして提供)として提供する場合、1年間のコストはアルバイトの1人分の人件費程度」と語っていたことを踏まえると、安定した蕎麦茹でスキルを備えたロボットが最低でも5年程度、通常運用であれば10年稼働することによって、人手不足の解消に貢献することは間違いないだろう。
同社の佐藤泰樹COOもラーメン店でのロボット展開に期待を寄せる。「チェーン展開しているラーメン店の多くはとんこつラーメン店で、専用の麺茹でロボットとなると麺の茹でより時間が重要になってくる」としたうえで「問題はバリカタです」とのこと。店舗によって茹で時間は異なるが、一般的に「粉落とし」「ハリガネ」「バリカタ」などは茹で時間が数秒から十数秒と短いため、麺茹でロボットにとっては克服すべき課題の1つとのこと。またとんこつラーメン店では替え玉の需要が高いが「替え玉の場合は、麺茹でのあと麺を畳むように丼に入れ、ラーメンのタレをかけるまでの工程を自動化したいという要望もあり、超えるベきハードルは多い」とのこと。
今回の蕎麦茹でロボットの実戦配備については「蕎麦茹で以外の店舗作業のロボット化についても要望が多いのですが、展示会などでのデモンストレーションだけでなく、実際の飲食店で本格稼働するロボットをいち早く世に出したかった」と語る。
ちなみに同社開発のロボットはすでに飲食店2店舗に実戦配備されている。2018年7月に長崎県のハウステンボスにある飲食店、2019年10月に千葉にあるイトーヨーカドー幕張店に、たこ焼きロボットのOctSheff,ソフトクリームロボットのレイタがともに稼働中で、期間限定ながら蕎麦茹でロボットが導入されるのは今回が初だ。そのほか、大手企業のたこ焼き工場に配備されている機体もある。
JR東日本スタートアップの柴田 裕社長は今回の実証実験について「駅構内といっても郊外の飲食店は人手不足が深刻です。今回の実証実験で運用上の問題点などをチェックして本格稼働につなげていきたい」と語る。「一昨年にはサインポストと無人コンビニエンスストア、昨年はShowcase Gigとセルフオーダーなどの取り組みを続けてきました。JR東日本沿線では郊外や観光地の駅構内・隣接の飲食店は、対策を打たないと近い将来に人手不足で閉店になってしまうところもあります。この問題をロボットが補うことで多くの店舗の閉店を回避したい」と今回の実証実験について期待を寄せていた。
今後の蕎麦茹でロボットの配備計画は未定としたうえで「そばいちは現在8店舗あり、ほとんどの店舗が東小金井店と同じキッチンレイアウト」とのこと。ロボットのサポート・メンテナンス体制などの課題もあるが、本格導入が決まればまずは系列店舗に配備されるかもしれない。ちなみに今回、東小金井駅のそばいちに配備されたアームロボットは壁に取り付けられおり、事前に壁の補強工事などを実施したとのことだが、既存のキッチンスペースを拡張することなく配備が完了したとのこと。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/03/16/connected-robotics-sobaichi/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Hiro Yoshida