ユニオンテックは3月16日、同社が運営している建設職人と建設現場をマッチングするサービス「SUSTINA」のブランド名を変更することを明らかにした。新しいブランド名は「CraftBank」となる。実はCraftBankという名称は、同社が運営する建設職人とコンシューマーをマッチングするBtoCサービスですでに使われていたが、今回のリブランドではCraftBankの従来サービスを終了したうえで、SUSTINAのサービスを移管することになる。
関連記事
・建設職人マッチングのユニオンテック、設立20年目にして米VCから約10億円調達、なぜ?
・台風15号の被災地・千葉県富津市をユニオンテックが復興支援、建設職人マッチングサービス「SUSTINA」を活用
同社社長の韓 英志氏は、SUSTINAを既存のサービス名であるCraftBankにリブランドした狙いについて「当初BtoC向けにサービスを提供していたCraftBankですが、実際には不動産業者など法人が建設職人を探すサービスとして活用されていた側面もありました」と説明する。サービスの詳細は異なるが、CraftBankもSUSTINAと同様に結果的にはBtoB向けのサービスになっていたわけだ。
また実際に工事現場で職人の声を聞いたところ「ユニオンテックが提供しているマッチングサービスの内容を知っている職人は多いのですが、サービス名としてはCraftBankのほうが浸透していたことも理由です」と語る。
新CraftBankのサービスの軸となるのは企業データベース。同社がこれまで各種ネットサービスを運用している中で感じたのが「ネットだけのマッチングには限界ある」ということ。自社のPRが得意な会社もあれば、掲載情報が少ない会社もあり、ネット上ではそういった公開情報だけで連絡をとるかどうかを判断するしかない。そこで同社は新CraftBankに登録している建設職人や工務店の詳細な情報を収集してマッチングの精度を高めることに決めた。
この取り組みは昨年から進めていて、当初は同社の建設部門で実際に取引のある業者からデータ収集を開始。現在では新CraftBankに登録している1万5000社のうち約5000社の企業プロフィールをデータ化済みだ。ちなみに企業プロフィールのヒアリングは1社あたり30〜40分かけているという。今後は1日50社のペースで収集する予定で「年内に1万5000社のデータを収集したい」と韓氏。
一般的に建設現場では、1社がすべての作業を請け負うことはなく、鳶、基礎、電気、左官など工事内容によって業者を使い分ける。マンション建設など大規模工事になると発注する業者は20社を軽く超え、決められた工事期間内でそれぞれの業者が請け負う仕事の日程をスケジューリングする必要がある。しかし、天候や資材の調達状況、工事現場の状態などでスケジュールどおりに進まないことがほとんど。一方、受注する業者側は、工事日程が近い複数の仕事を同時に受けた場合、スケジュール遅延により一方の受注を完遂できないリスクが生じる。そのため、1人親方や社員が数人の工務店では一度受けた仕事が終わらないと次の仕事を受けられないこともしばしば。結果、ある程度融通が利く、取引実績のある業者内で仕事を仲介しあうという悪循環に陥っている。
新CraftBankではデータベースを活用してこういった悪循環を断ち切るのが狙いだ。同社プラットフォーム事業部でマネージャーを務める黛 尚太郎氏は「自社サービスながら当初は懐疑的でしたが、実際に使ってみると自分たちのコネクションを使って業者を探すよりも手間と時間が大幅に減りました」と語る。「心配していた工事の質は落ちず、むしろ上がったケースもありました」と続ける。ちなみに同氏は、もともとは同社の建設部門に所属しており現場監督経験もある人物だ。
新CraftBankでは、全国の建設職人や工務店を29工種、約1万5000社から希望条件で絞り込むことが可能だが、フリープランでは同時に2件まで、ライトプランでは同時に10件までという制限がある。自社の工事案件を掲載できる数、協力会社を募集できる数についても、それぞれ2件、10件だ。ライトプランではそのほか、協力会社募集の入稿を新CraftBank側に任せられるサービスある。
新型コロナウイルスの影響は建設業界でも深刻で、中国生産が多いトイレ設備などは資材が届かず工事が中断している現場もあると聞く。精度の高い建設職人のマッチングこそ、いま建設業界に必要なサービスではないか。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/03/17/craftbank/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Hiro Yoshida