ウッドデッキの完成を喜んだのも束の間、編集長のわがままで始まったウッドデッキの屋根作り。母屋側に支持材を取り付け、次は柱と桁の作成が始まる。
「さて編集長、柱を立てますよ!」
「柱が出てくると、いよいよ建築物って感じだな」
「それだけ屋根工事というのは大ごとなんですよ」
前回も書いたが、特殊な工法や材料が使えないDIYの屋根工事では、どうしても屋根を支える柱が必要になってくる。
「柱に使うのは、床束に使ったものと同じ9cm角の材木か?」
「そうですね。本当はもうワンサイズ太い10.5cm角、三寸五分が柱の定番なんですけどね」
「じゃあ、なんで使わないんだ。そんなに値段も変わらないだろ」
「この工事では、最初は柱を立てる予定がなかったですからね。今ついてる束を、すっと抜いて、そこに柱を差し込むので束と同じ太さでないとダメなんです」
すぐ隣にある既存の庇(ひさし)の高さに合わせて9cmの角材を切断し、元々束が立っていたところに柱を差し込んだ。
「うーん、角材って縦に持つと不安定だな。立ち方はこんなもんで良いか?」
ぐらぐら揺れる柱を保持しながら、ビスでさっさと固定しようとする編集長。しかし遠目で見ると明らかに傾いている。
「ダメダメです。もし屋根に雪が積もったとしたら、ほんの少しの傾きでも一気に倒れてしまいますよ」
「それは、こわいな」
「前もいいましたが、平たいウッドデッキと、人の頭の上に重量物がある屋根では、安全の重要度が大きく変わります」
「そうは言っても、ぐらぐら揺れて難しいぞ」
長さのある資材は、横にして持つときに比べ、縦に立てると格段に不安定になる。なるべく二人で作業し、安全に配慮しながら素早く固定しよう。
「さ、水準器を柱にあてがって前後左右方向の傾きを慎重に整えて」
「こんなもんかな?」
長めのコーススレッドでしっかりと固定できたら、次は屋根を支える桁を取り付ける。
「いわゆる軒桁ってやつですね。材木はこれを使ってください」
「おお、これは太いな」
我が愛車ハイラックスの荷台から取り出したのは、デッキ材に使った2x4の倍の太さがある2x8材。
「本当はウッドデッキの真ん中に、もう1本の柱があれば、もっと細い材木で大丈夫なんですけどね」
「せっかく開放感のあるウッドデッキの真ん中に柱は嫌だな」
「そういうと思って、柱はデッキの両端だけにしたんです。そうすると柱と柱の距離は約3.6m。流石にこの長さになると、桁にはこれくらいの太さが必要になりますね」
日本の大工さんの世界では古くから「間四の法」という教えが伝わっている。これは「柱と柱の間が一間(1.8m)なら、梁桁の太さは四寸(12cm)」という考え方だ。このセオリーに編集長のウッドデッキを当てはめれば、柱間は二間(3.6m)なので、桁の太さは八寸(24cm)必要ということになる。
もちろんこの考え方は、角材を使った時の場合なので、今回はセオリー通りの材料は使えないが、必要な材木の太さを考えるときに、非常に参考になるので覚えておきたい。
「しかし柱と同じで、長いから水平に取り付けるのが難しいな」
「脚立に上での作業ですし、一度にしっかりと固定するのは無理ですよ」
「じゃあどうするのよ」
「焦らずゆっくりとです。短めのビス1本で仮止めして、反対側に回ってください」
「そして反対側からしっかり固定か?」
「いやいや焦らずです。反対側も仮止めして、また反対へ。急がば回れですよ」
長尺材の施工では、手元の少しの誤差が大きな傾きにつながる。ビス留めする時は、一気に固定せず、短めのビスを使って両端で微調整を繰り返しながら、位置決めと固定を繰り返すのが、結局は早くて確実なのだ。
「よーし、しっかり水平に固定が終わったぞ」
「おめでとうございます!!」
「祝福はありがたいが、まだまだ屋根の形も見えてないぞ」
「いやいや、ここの屋根の場合は、前回に母屋外壁につけた支持材と今回の桁で、屋根の構造材は完成です」
「まあそういうことだな」
「ってことは、これで棟上げってことですよ」
「棟上げかー。そう言われると、結構嬉しいな」
本来なら屋根の乗る横方向の材木が全て据え付けられ、一番てっぺんの横木=棟木が完成して「棟上げ」だが、今回の屋根はいたってシンプルなのだ。
「めでたい棟上げの次は、屋根の斜め部分の下地となる垂木の施工です」
「次から次と大変だなー」
「編集長が屋根作りたいっていったんでしょ。さ、これを使ってください。ここまでで一番大物の電動工具の登場ですよ」
「おう、すごいなこれは!」
今回登場するのは、HiKOKIの「卓上スライド丸ノコ C7RSHD」。
卓上スライド丸ノコは、電動丸ノコが作業台となるベース部分と一体になっている工具で、安全性と切断精度が通常の丸ノコに比べ非常に高い。
「おお、丸ノコがブレたりしないから、とても安心だな」
「角度の調整も確実なので、同じ部材を大量に作るときに、とても便利なんですよ」
垂木には屋根の重さが強くかかるので、強度の高い太めの材木を使うことが多い。
「そんな材木を何本も同じ寸法で切断するのはしんどいですが、これを使えば簡単です」
「怖くないだけでも、疲れ方が変わるな」
「そこが卓上丸ノコの利点のひとつです。セルフビルドの現場に友達が来てくれた時とかに、比較的気軽に頼めるのがよいですね」
必要な本数の垂木を揃えられたら、桁の上にコーススレッドで固定していく。使用するコーススレッドは90mmを選択。
「今回は長いビスが多くて疲れるな」
「それだけ負荷がかかる重要な場所ってことです。垂木は台風などの強風をもろに受けるので、しっかりとした固定が必要なんですよ」
軒先から入り込んだ強風は、屋根を持ち上げる方向へ力をかける。垂木の固定が甘いと、屋根が飛んでいってしまうので気をつけよう。
「屋根が飛んでったら、怖いな」
「怖いだけでなく危険です。DIYもここまで大きくなると、責任重大ですからね」
「気をつけるよ」
長めのコーススレッドを打つには、やはり36vのインパクトドライバは大活躍であった。
「よし、最後の1本が完成っと」
「編集長、インパクトの扱いが本当に上手になりましたね」
「垂木の斜めのラインがつくと、一気に屋根っぽくなるな」
「これで上に屋根材を張れば、ついに完成ですよ!」
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(写真・文/阪口克)
- Original:https://www.goodspress.jp/howto/287323/
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