サイトアイコン IT NEWS

時計を手にするきっかけなんて、いろいろあっていいじゃない! カルチャーな腕時計たち Vol.13 ルノーF1チームとベル&ロス

クルマと腕時計には長く深いつながりがある。現在、F1のオフィシャルタイムキーパーはロレックスが務め、同社はカーレーサー向けに設計した名作「コスモグラフ デイトナ」を1963年より展開。また、タグ・ホイヤーは1911年にダッシュボードクロノグラフを発表し、その後、1970年代にはF1の公式計時も担当。現在もF1ドライバーやフォーミュラEのチームをサポートするなど、モータースポーツとの関わりを継続している。それ以外にもモータースポーツとコラボレートしているブランドは数多く存在するが、なかでもベル&ロスとルノーF1チームとのつながりは、他にはない独自性が見られる。

2016年にスタートしたルノーF1チームとのパートナーシップ

ベル&ロスは1992年にフランスのパリで創業したブランドだ。1997年にファースト・コレクションとなる「ヴィンテージ」を、2005年にはスクエアケースとラウンドのダイアルを組み合わせた「BR01」をそれぞれ発表。なかでも「BR01」に代表される、航空計器に着想を得たインストゥルメント・コレクションは、その後のベル&ロスにおけるアイコンとなった。

フランスを拠点とするブランドだけに、ルノーF1チームとのパートナーシップは必然とも捉えられるだろう。しかしその一方で、航空計器にインスパイアされたコレクションを展開するベル&ロスとF1との融合は、やや意外性を感じさせる。

ベル&ロスがルノーF1チームとのパートナーシップを結んだのは2016年のこと。それは、創業以来ブランドが作り上げてきた航空計器モチーフのイメージを刷新すべく実施されたものだ。当時、ベル&ロスのCEOであり共同創業者のひとりであるカルロス・A・ロシロ氏は次のように語っている。

「ルノーF1チームとベル&ロスは、メカニクスの限界を押し上げるという共通の目標を持っており、それは限定モデルでよく表されている。このパートナーショップはとてもエキサイティングでやりがいのあるものなのです」

このコメントとともに発表されたコラボレーションモデルの第1弾が「BR-X1 R.S.16」と「BR-X1 R.S.16 トゥールビヨン」の2モデル。スクエアケース×ラウンドダイアルというインストゥルメント・コレクションのデザインコードを踏襲しながらも、R.S.16マシンにインスパイアされたイエローのアクセントカラーやフォージドカーボン素材のケース、時計のメカニズムを可視化するオープンワーク・ダイアルを採用し、なんともレーシングの雰囲気を感じさせるタイムピースに仕上がっている。

2016年に発表された「BR-X1 R.S.16」(左)と「BR-X1 R.S.16 トゥールビヨン」(右)は、ケース素材にグレード5のチタンとフォージドカーボンを採用し、頑強さと軽さを両立させた。ともに販売終了。

このコラボレートはその後も継続。翌2017年発表の「R.S.17」ではF1マシンのステアリング・ホイールに着想を得たマルチカラーを採用し、続く2018年はシャシーからインスピレーションを受けた「R.S.18」を、2019年はF1コックピットのボタンに用いられるグリーンやレッド、オレンジといったビビッドカラーを施した「R.S.19」をそれぞれ発表した。

2017年発表の「R.S.17」コレクションは、ステアリング・ホイールにインスパイアされたマルチカラーを採用。写真は「BR-X1 R.S.17」(販売終了)。

2018年に発表された「R.S.18」はケースやベゼルに凹凸を設け、シャシーから着想を得ていることがうかがえる。写真は「BR-X1 R.S.18」。

ルノーF1チームのドライバーが操るステアリングホイールをイメージした「BR 03-94 R.S.19」(販売終了)。

重要なのは“インスピレーション”が湧くデザイン

そして、パートナーシップ締結5周年の節目を迎えた2020年にアナウンスされたのが「R.S.20」だ。新コレクションが着想を得たのは2020年のルノーF1チームのマシン「R.S.20」と、コンセプトカー「R.S.2027 Vision」のふたつ。これをモチーフとした全4モデルのコレクションはいずれも、ブラック×イエローのカラーリングに加え、ルノーF1チームで採用しているタイポグラフィやチェッカーフラッグを想起させる目盛りなど、これまで以上にレースの雰囲気を強めたタイムピースとなった。

2017年の上海モーターショーで発表された「R.S.2027 Vision」は、ルノーが考える2027年のF1マシンを示したコンセプトカー。

ベル&ロスがルノーF1チームとのパートナーシップを続けているのには理由がある。これまで同ブランドは、航空計器にとどまらない幅広いソースをデザインのインスピレーションとしてきた。なかでもユニークなのが、「B-ロケット」や「エアロGT」「ベリータンカー」「BR-バード」といったレーシングマシンやエアレース機などの機体で、これらをモチーフにした時計もリリースしている。しかも時計製作のために外部から専門家を招き、オリジナルのマシンを企画・設計しているというのだから驚く。

それは、ベル&ロスのもうひとりの共同創業者でクリエイティブ・ディレクターを務めるブルーノ・ベラミッシュ氏が、空想の産物からはインスピレーションを受けないからだという。つまり、実在するものや実際に製造できるものだけが、ベル&ロスのデザインソースとなっているのだ。2019年、ベラミッシュ氏は筆者のインタビューにおいて次のように答えている。

「“インスピレーションを感じさせるもの”であることが重要なのです。飛行機やバイクはもちろん、ルノーF1チームのマシンもインスピレーションが湧くデザインだと思っています」

毎年繰り出されるR.S.コレクションはいずれも、モータースポーツ・ファン以外の琴線にも触れるスポーティかつ斬新なデザインであり、次のコレクションがどのような仕上がりになるのか、つい期待してしまう。両者のコラボレートは時計のデザインをさらに昇華させるための重要なピースなのだ。

ベル&ロス
BRV3-94 R.S.20
52万8000円

ステンレススチール製のケースを採用したラウンド型のモデル。レーシンググローブを想起させるパンチングレザーのカーフレザーストラップが付属。ブレスレットを付属したモデルもラインナップ(57万2000円)。世界限定999本。自動巻き、SSケース、100m防水、ケース径43mm。

ベル&ロス
BR03-94 R.S.20
82万5000円

マットブラック セラミックケースとパーフォレーションを設けたブラックラバーストラップとの組み合わせでクールなイメージに。世界限定999本。自動巻き、セラミックケース、100m防水、ケース径42mm。

ベル&ロス
BR-X1 R.S.20
269万5000円(予価)

オープンワークのダイアルと、PVDコーティング チタン、セラミック、ラバーで構成されたケースは、コンセプトカーと同様にフューチャリスティックなイメージを創出。世界限定250本。自動巻き、チタン×セラミックケース、100m防水、ケース径45mm。2020年4月末発売予定。

ベル&ロス
BR-X1 トゥールビヨン R.S.20
2145万円(予価)

フライングトゥールビヨンを採用した世界限定20本のモデル。約100時間のパワーリザーブを誇り、ダイアルの8〜9時位置のインジケーターによって残量を確認できる。手巻き、チタン×セラミックケース、100m防水、ケース径45mm。2020年5月発売予定。

問ベル&ロス ジャパン●03-5977-7759
https://www.bellross.com/ja

モバイルバージョンを終了