バルミューダの代表である寺尾玄氏は、メーカーを創業する以前にプロフェッショナルのミュージシャンとして活躍していたことでも知られている人物だ。音楽にも造詣が深い寺尾氏が率いるバルミューダが、体験を届ける家電メーカーとして今までオーディオを手がけてこなかったことが今さらながら意外に思えてしまう。満を持して登場するバルミューダの「BALMUDA The Speaker」とは、どんな製品なのだろうか。
バルミューダらしさが際立つスピーカー設計
BALMUDA The Speakerは縦型円筒デザインのBluetoothスピーカーだ。本体の高さは約188mm。直径サイズは約105mm。
天面に上向きに配置した77mm口径のフルレンジスピーカーユニットを、出力8Wのデジタルアンプでドライブする。アクリル製の密閉型エンクロージャーを大胆に採用したデザインはいかにもバルミューダらしく、異彩を放っている。
エンクロージャーの中には3本の有機ガラス管が配置されている。オーディオや楽器用のアンプが増幅回路に採用する真空管のようにも見えるが、実は3基ともにBALMUDA The Speakerが掲げるコンセプトである「音楽の輝きを再現するスピーカー」の柱と呼ぶべきLEDユニットである。
電源をオンにすると、3基のLEDユニット以外にも内蔵されているランプが点灯して、鏡面仕上げの底部とそこからまっすぐ伸びてスピーカーユニットを支える2本の支柱が煌びやかに輝く。
音楽ソースはBluetooth入力と3.5mmアナログ音声入力を備えている。スマートフォンとペアリングして、SpotifyやApple Musicなど定額制音楽配信サービスから最新のヒット曲を見つけて聴いてもよいし、ケーブルでオーディオコンポに接続すればお気に入りのCDコレクションもBALMUDA The Speakerで楽しめる。
スピーカーはバッテリーを内蔵しているので、家の中で自由に場所を移りながら音楽が聴ける。本体は約1kgと軽く、置き場所も取らない。フル充電から約7時間の連続音楽再生に対応する。
煌びやかなLEDによる「光の演出」
BALMUDA The Speakerはただ音楽を聴くためだけに開発されたワイヤレススピーカーではない。本機のユニークな「光の演出」に注目してみよう。
本体にLEDユニットは照明器具として周囲を明るく照らすために搭載したものではない。スピーカーが再生する楽曲に同期して、LEDの光が明るさと明滅速度を変えながら光る、バルミューダ独自のアルゴリズムが組み込まれている。
LEDユニットの明滅パターンは一定のリズムに固定されているわけではなく、再生する楽曲に合わせて変化する。独自のアルゴリズム解析により、0.004秒の速さで音を光の輝きへと変換しており、Aメロやサビで異なった輝きを見せるのは企業秘密とのこと。アップテンポな楽曲ではゴージャスに瞬き、しっとりとしたバラードでは柔らかくほのかな光を揺らめかせる。
部屋の照明を落として、リラックスしながらお気に入りのアップテンポなロックを聴きたい時には、音楽再生を始める前に3種類のプリセットを選択しておきたい。スピーカー背面の「LIGHT」スイッチを押すと短いビープ音が鳴って、「Beat」「Ambient」「Candle」の3つのパターンがスイッチを押すたび順に切り替わる。Beatを選ぶと最も光がダイナミックに明滅する。程よい抑揚感にチューニングされているAmbientと、落ち着いた雰囲気のCandleを上手く使い分けよう。
音と光が重なる時、アーティストの姿が浮かび上がった
BALMUDA The SpeakerにiPhoneをペアリングして、Bluetooth再生のサウンドを聴いてみた。
鮮やかな中高音域と、コンパクトなサイズから想像できないほど厚みのあるパワフルな低音に息を吞んだ。メロディラインの抑揚感がとても豊かで、ボーカリストの声が伸びやかに突き抜ける。
デスクトップに置いて近い距離で聴くと、繊細な声の表情やバンドによる演奏の立体感がリアルに迫ってくる。ボリュームを上げれば12畳前後のダイニングルームにも力強く密度の濃いサウンドが広がった。夜間は音量を下げても十分に聴き応えのある、芯のしなやかな音が楽しめた。
LEDユニットによる幻想的な光の演出にも、思わず引き込まれてしまう。音楽再生を始めた途端、目の前にステージの情景が浮かび上がり、まるでミュージシャンが目の前で演奏しているような贅沢な雰囲気を存分に味わった。
光のパターンは「Beat」を選んで、エアロスミスの楽曲『Angel』を再生してみると、ダイヤモンドのようなイルミネーションが音楽と最高にマッチした。ボーカルのハイトーンがとてもクリアで透明感にあふれている。
続いてパターンを「Ambient」に切り換えて、ビル・エヴァンス トリオの『Waltz for Debby』を聴いた、時間と空間を超えてニューヨーク・マンハッタンのヴィレッジ・ヴァンガードに迷い込んでしまったような、生々しい音楽にノックダウンされてしまった。鍵盤をたたくピアニストの指先から放たれる熱量、ウッドベースの弦が波打つ様子や、ハイハットの残響が煙のように立ち、静寂の中に溶け込んでいく様子が目に見えるように感じられたほどの存在感だった。
「Candle」は甘やかな女性ボーカルにのめり込みたい時にぴったりだ。カーペンターズの『Close to you』を再生すると、声の繊細な表情のディティールが淡い光に照らされながら浮かび上がってきた。シルキーな余韻に優しく包まれる。ボーカルの温かみを耳だけでなく、全身で感じられる喜びをかみしめながらThe Speakerのサウンドを聴いた。
以下参考までに、エアロスミスの楽曲「Livin’ on the Edge」をそれぞれかけてみた動画を貼り付ける。上からそれぞれ【Beat】【ambient】【candle】の光り方を比較してみた。光り方がまったく違うことがわかる。(権利関係上、音は削除しています。【※動画は読み込むのに少し時間が掛かります】)
血が通う生のサウンドをすべての音楽ファンに味わってほしい
バルミューダのBALMUDA The Speakerは、とりわけ人の声の自然な再現力に長けたスピーカーだ。それもそのはずである。代表の寺尾氏をはじめ、同社のエンジニアは現代音楽の中核にボーカルを位置付けながら、感動を呼び覚ます音楽体験を徹底的に追求してきたそうだ。理想とするスピーカー再生にたどり着くまで、ユニットの開発にも丁寧に時間をかけた。スクラップ&ビルドを繰り返しながらようやくたどり着いた最良のユニットが、このBALMUDA The Speakerに搭載されたという。
その探求の成果は、音楽演奏の空気感までも蘇らせる血の通ったサウンドとして実を結んでいる。ぜひ音楽を愛するすべての人に体感してもらいたいスピーカーだ。
なお、商品購入予約はバルミューダの公式サイトで本日4月22日から開始。発売は6月中旬、価格は3万5200円(税込)となっている。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000123844/
- Source:デジモノステーション
- Author:山本 敦