2019年12月、アウディ「SQ2」が日本に上陸しました。モデル名の頭に“S”が付くことからもお分かりの通り、先にデビューを飾ったコンパクトSUV「Q2」のハイパフォーマンス仕様です。
Q2は、都市部でも扱いやすいボディサイズで、2019年に日本で販売されたアウディの中で、「A3」に続くセールスを記録しています。そんなQ2に、300馬力の直4ターボエンジンとフルタイム4WDシステムを搭載したSQ2は、果たしてどんな魅力を備えているのでしょうか?
■S系モデルらしいスポーティな仕立て
2019年にフラッグシップSUVの「Q8」を発売したほか、2020年には新型「Q3」の導入がウワサされるなど、日本でも積極的にSUVのラインナップ拡充を図るアウディ。そんなSUVファミリーのエントリーモデルQ2が日本に上陸したのは2017年のことですが、それから約2年の時を経て、“ピリ辛”のスポーツモデルSQ2がラインナップに加わりました。
新世代のアウディ製SUVにおける特徴のひとつである8角形のシングルフレームグリルや、ポリゴン(多角形)を取り入れたエクステリアは、基本的にQ2のそれを踏襲するSQ2。しかし、仔細に観察すると、フロントグリルが大胆な格子状デザインとなるほか、バンパーのインテーク形状が改められ、さらに、標準モデルより大径のタイヤ&ホイール(ノーマルは18インチ、試乗車はオプションの19インチ)を与えられるなど、S系モデルらしい、スポーティな仕立てとなっています。
さらに、リアへ回ると、迫力ある4本出しテールパイプが特別なモデルであることを主張。また、アウディ愛好家ならば、シルバー仕上げのドアミラーカバーでも、標準モデルとの違いに気づくのではないでしょうか。
SQ2のボディサイズは、全長4220mm、全幅1800mm、全高1525mm。エクステリアパーツの変更などにより、Q2とは若干サイズが異なりますが、実質的にはほぼ同等。つまり、平置き式のコインパーキングはもちろん、一般的な立体駐車場でも問題なく収まるサイズ設定ですから、都市部で暮らす人にとっても便利なのはいうまでもありません。
そして、SQ2のキモとなるエンジンは、排気量1984ccの直列4気筒DOHC+ターボで、最高出力は300馬力、最大トルクは40.8kgf-mを発生します。トランスミッションは、デュアルクラッチ式の7速“Sトロニック”のみの設定で、駆動方式はアウディ自慢のクワトロ、すなわち4輪駆動を採用しています。
ちなみにリアサスペンションは、FFモデルの場合はトレーリングアームとなりますが、クワトロ仕様のSQ2は、マルチリンクへと置き換えられています。こうしたメカニズムの違いやスペックを眺めると、ちょっとしたスポーツカーさながら、といった印象ですが、欧州参考値におけるトップスピードは250km/h(リミッター作動)、静止状態から100km/hまでの加速タイムも4.8秒といいますから、実際のパフォーマンスもかなりの実力派といえるでしょう。
■装備内容は1、2クラス上のモデルと比べても遜色なし
そんなSQ2と対面して真っ先に感じたのは、「想像よりもコンパクトに映るな」というものでした。これは、実際に小さいわけではなく、ムダな脂肪分を削ぎ落とし“引き締まっている”というのが正確かもしれません。
頂上モデルたるQ8のスタイルからもお分かりの通り、最新のアウディSUVにおけるデザインは、ポリゴンを生かした直線基調へと移行しています。今回のSQ2も、曲線や曲面が複雑に入り混じることはなく、張りのある面をメインとしつつ、鋭利なナイフでその面を削ぐような造形とすることで、アクセントとなる抑揚を生み出していることが分かります。
例えば、ヘッドライトからテールランプへと伸びるラインは、フロントドアに前後して、面をカットするような意匠となっています。膨らませることで迫力を与えるのではなく、削ることで均整を取る辺りは、スポーツマン的といいますか、クールな都会派というアウディのイメージに合致しているのではないでしょうか。
インテリアは、現行の「A3」や「TTクーペ」に通じる、丸型のエアコン吹き出し口が配されたコックピットがカジュアルな印象を与えます。とはいえ、カジュアル=低品質というわけではなく、キルティング風のステッチがあしらわれたレザーシートの風合いは上質ですし、ダッシュボード回りに並ぶスイッチやレバーの感触も高級感があります。
ダッシュボード上面やドアトリムといった樹脂パーツの質感は、正直いうと、もうひと声望みたいところですが、これはベース車がQ2ゆえ、仕方のないところかもしません。もし、オプションでレザー仕様などを選べれば、印象はさらに良くなることでしょう。
とはいえ、ドライバーズシートに収まった際に気になるのは、その程度。今回の試乗車はフルオプション状態だったこともあり、12.3インチの液晶パネルによる眼前の“バーチャルコクピット”、8.3インチディスプレイの“MMIナビゲーションシステム”、スマホと連携できる“アウディコネクト”など、多彩な先進・快適アイテムを装備。その内容は1、2クラス上のモデルと比べても遜色ありません。
気になるユーティリティは、フロントシートはもちろん、リアシートの足下や頭上スペースは十分ですし、広大というほどではありませんが、ラゲッジスペースも355Lと実用的な容量を確保しています。
最新のクルマらしく、“ADAS(先進運転支援システム)”も充実。アダプティブクルーズコントロールはもちろん、駐車をアシストする“アウディパーキングシステム”、歩行者検知機能を備えたブレーキシステムなどが標準装備されており、不満を覚えることはなさそうです。
加えて、渋滞時にドライバーのステアリング操作をアシストする“トラフィックジャムアシスト”なども、パッケージオプションとして用意されます。ほかにも、多彩なオプションが用意されており、先に紹介した「ナビパッケージ」(36万円)や運転支援系の「アシスタンスパッケージ」(13万円)、「Bang & Olufsenサウンドシステム」(12万円)などとともに、オーナーの好みに合った1台を作り上げる楽しさもSQ2にはありそうです。
■走り重視なら常時ダイナミックモードでいい!?
さて、エンジンをスタートさせ、SQ2で公道へと歩みを進めます。その走りをひと言で説明するならば、爽快にして刺激的。痛快な身のこなしが実に印象的です。右足にグッと力を込めれば、300馬力プラス、クワトロシステムによる強烈な加速を味わえますが、何より記憶に残ったのは、ちょっとしたワインディングでの楽しさ、でしょうか。
19インチホイールを装着した試乗車の場合、“Sスポーツサスペンション”も相まって、街中での乗り心地は結構硬く感じますし、不快でこそありませんが、大きめの段差では明確な振動が伝わってきます。ところが一転、走るステージを高速道路やワインディングに移すと、路面をしっかり追従する足回り、リニアでシャープなハンドリング、そして、クワトロならではの強力なトラクションなど、Sモデルならではのうま味が明確に現れます。
ただしこれは、「エフィシエンシー」「コンフォート」など、5つのドライブモードが設定されている“アウディドライブセレクト”を「ダイナミック」に設定した場合のこと。このモード設定ですが、ダイナミック以外はセッティングが明確に異なり、SQ2の鍛えられたフィジカルに対し、操作系の感触や反応が時に心もとなく感じることもあります。
一方、ダイナミックモードでは、ステアリングやエンジン、トランスミッション特性やサウンドもグッと勇ましさが増し、何より、Sモデルやスポーティというキーワードから想像するイメージと、クルマの動きがピタリと合致します。SQ2に求めるのは、ドライビングでの心地いい汗や爽快感が第一という人ならば、常時ダイナミックモードでもいいのでは? と思ったほどでした。
スポーツカーには興味があるけれど、SUVの実用性も捨てがたい。そして、何より2台持ちは難しいだけれど、スポーツカー気分を日常的に味わいたい…そんな人にとってSQ2は、とても魅力的な1台といえそうです。
<SPECIFICATIONS>
☆SQ2
ボディサイズ:L4220×W1800×H1525mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT
最高出力:300馬力/5300~6500回転
最大トルク40.8kgf-m/2000~5000回転
価格:599万円
文&写真/村田尚之
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/292298/
- Source:&GP
- Author:&GP