米国カリフォルニア州が州全域のロックダウンを発表したとき、Tony Martens(トニー・マーチンズ)氏とMaurits van de Ven(マウリッツ・バン・デ・ヴェン)氏はオランダ・アムステルダムに帰えらずに同州にとどまることを決めた。
そして、Plantible創業者である彼らは、トレーラー2台を運び込んで同社の本部で生活し始めた。本部とはサンディエゴにある広さ2エーカー(約8100平方m)のアオウキクサ(アヒルなどの餌になる植物)の農場だ。
Plantibleは、植物由来のタンパク成分を抽出するために小さな水草であるアオウキクサを使う。このタンパク成分で食品会社が動物ベースのプロダクトを植物ベースのものに変えることができるようになる。ベーキング商品やプロテイン粉末を作ったりする企業、製造過程で卵白をたくさん使う企業にとっては魅力的な選択肢となるはずだ。
Plantibleは乳清や乳製品タンパク質の代替品販売に取り組んでいて、米食品医薬品局(FDA)の承認取得作業の最中だ。「自然の中にあるもので人間が必要とする食材を十分に供給できると我々はかたく信じている」とマーチンズ氏はオフィスとなっているトレーラーで話した。
Plantibleはこのほど企業といくつかの実験を行った。そして「Plantibleはベーキング食材会社や植物ベース肉の販売会社とアオウキクサの抽出物が代替品になることを確認した」とマーチンズ氏は述べた。だがPlantibleは現在の活用方法だけに限定していない。
「我々が目を向けていた部門だけに時間をかけていたら、スポーツ栄養の方のチャンスが逃げてしまう。我々はそこも取りにいきたい」とマーチンズ氏は語った。「当社の可能性を証明する必要がある」。
Plantibleは競争が激しい業界に参入している。このところ、ひよこ豆の缶詰の煮汁から作られる液体のアクアファバが、外出禁止による料理ブームの中で再び人気を獲得している。アクアファバは(メレンゲのような)泡立ち度を再現できるかもしれないが、ゲル化(あるいは温めたフライパンに卵を割り入れたときにできるトロリとしながら焼けている外観)は再現できないとマーチンズ氏は指摘する。Plantibleはテクスチャや栄養を損なうことなく卵白代替品になると主張する。
Plantibleにはまた、タンパク質代替品を手掛ける資金潤沢な競争相手がいる。Plantibleが最も競合するベンチャー支援の企業はClara Foods(クララ・フーズ)とFUMI Ingredients(フミ・イングリディエンツ)だ。両社とも卵白代替品の生産を手掛けている。Clara Foodsは卵白を作るのにニワトリの代わりにイーストを使っていて、Plantibleと同様にマカロンやスポンジケーキ、プロテイン粉末といったものを作るのにかなりの量の卵白を使用する事業者に製品を販売している。Clara Foodsはグローバル食材ソリューション企業であるIngredionの支援を受けている。
ライバル企業に勝つには、Plantibleにはスピードと安さ、そしてスケール展開できるオペレーションが必要だ。供給面ではPlantibleはいい位置につけている。アオウキクサは48時間で倍増し、通年の栽培が可能だ。加えて、同社によるとアオウキクサはひよこ豆や大豆、藻類よりも消化しやすいとのことだ。
最もコストがかかるのが抽出作業だ。Plantibleは目下「ラボ規模であり、この規模は本当に金がかかる」とマーチンズ氏は認めた。コストを下げるために同社は、Vectr VenturesとLerer Hippeauが共同でリードしたシードラウンドで460万ドル(約5億円)を調達した。他の投資家はeighteen94 Capital(Kellogg Companyのベンチャーキャピタルファンド)とFTW Venturesだ。
新たな資金を通じて卵白に対し価格競争力を持つ、Plantibleは主張する。現在、卵白液2ポンド(約900g)をつくるのに8〜10ドル(約860〜1070円)かかり、15〜20ドル(約1600〜2140円)で販売されている。
「望まれている食材を生み出すには、最終的には量産できて価格競争力を持つサプライチェーンを展開できるかにかかっている。自然と競争するのは困難であり、我々は高機能で栄養に富んだ酵素を特定することで、できる限り自然を取り込むことにした」とマーチンズ氏は話した。
「自然を活用するほどに、よりスケール展開できるようになる」。シード期のタンパク質代替品会社として、Plantibleが成功するかどうかは販売と生産能力にかかっている。現状ではまだそこまでいっていない。
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(翻訳:Mizoguchi)