<&GP自作部>
チープな腕時計が好きな私は、よく中国・アリババのECサイト「AliExpress(アリエクスプレス)」を利用するのですが、先日たまたま別ジャンルのトイ(玩具)系を検索していたら、なかなか面白そうなモノを見つけたので購入してみました。
注文から数週間で到着。外箱の写真を見ると木製の歯車がひしめき合っている置物ですが、実はこれゼンマイで動く振り子時計なのです。私はメカニカル(機械式)ウオッチが大好きなのですが、中身のムーブメント構造にも興味があったので、どのように動いているのかを理解するのにちょうど良いかも…と、興味を持った次第。価格は日本円で約3300円ほどでした。
■意外と工作精度は悪くない
箱を開けると中身はこんな状態、レーザーカッターでパーツ分けされたメインの合板素材が数枚ほど。それにメタル軸とその軸にはめるリングなどの樹脂パーツ、ゼンマイとして使うメタル板などが入っています。
レーザーカッターの精度が良いのか、板とパーツが繋がっているのは1ミリに満たないのが数か所だけ。指でポコンと押していけば簡単にパーツは抜き取れます。とはいえ動力を伝える大事なパーツなので、少しだけ残ったバリ跡はカッターナイフで丁寧に削っていき、添えられた説明書に沿って歯車を組み立てていきます。
接着剤などは特に必要とせず、板を重ねてハメこんでいくだけ、それにメタルの軸とリングを付けて歯車部分は完成です。
■ゼンマイをコリコリ回すと…
歯車同士の噛み合いをチェックして、輪列がしっかりと組み合わさっているかを確かめながら組み上げていきます。
数日に分けてコツコツと組み立てて、ついに完成。実作業時間としては6〜7時間ほどでしょうか。
真ん中の大きいダイヤルは分針用、60分で針が1周回ります。その右下、小さいダイヤルは時針になっていて、12時間で1周回る仕様になっています(下部の半円状に入っている目盛はただの飾りのようで、特に使用することはありません)。
左下にあるツマミ部分がパワーリザーブのゼンマイとなっているので、こちらをコリコリと回していくと…。
ツマミの裏側はゼンマイが香箱に収まっているワケでもなく剥き出しになっています。そのゼンマイが巻かれて、パワーが歯車を伝わり、いよいよ振り子が動き出し針が進み始めます。
「コイツ、動くぞ…! 」
中には金属板が入っていて、下部のツマミネジを回すとその板の位置が動き、時計の進みや遅れの微調整が可能です。
…とは言うものの、ゼンマイをいっぱいに回したところで、動いているのは半日くらいなもので、正直な話、実用品の置時計として使用するのはかなり厳しい。飾って眺めて、たまにゼンマイを巻いて動かせて遊ぶ、そんな感じのトイとして楽しんでいます。
眺めていて一番心躍るのは、やはり脱進機、ガンギ車とアンクルの部分でしょうか。ゼンマイのほどける力を利用して歯車が回り出し、その歯車の回転に一定のリズムを与えるのが脱進機の役割で、メカニカル(機械式)ウオッチにおいては「心臓部」と表現されることが多い箇所です。
ぶら下がっている振り子の上部へと伸びる先に付いているのがトングのような形をしたアンクル。これがガンギ車の回転を止めては離れ、止めては離れ、一定のリズムを刻んでいます。
「自作置(掛)時計」のキットというと、ムーブメントはクオーツの既製品を使用して、外側を自作するだけというモノばかりだったのですが、まさかムーブメントから自作できるキットがあるとは…! と、かなり興奮&感動の購入してしまいました。
完成させてゼンマイを巻き、時計が動き始める瞬間までのワクワク感はなかなかのモノですよ。
AliExpressで購入しましたが、国内でも取り扱っている代理店が存在するようで、Amazon等でも「Robotime、振り子時計」などで検索すると出てきます。
ひとりで黙々と作るも良し、お子さんなど家族と一緒に作るも良し。それほど難しくはないので、機械式時計の仕組みが知りたい人や、プラモデルではない工作キットを探している人でも楽しめるのではないでしょうか。
取材・文/白賀太一
白賀太一|腕時計好きの趣味が高じて、機械式のメンテナンスから分解、カスタムまで行う。資金が乏しいという事情により、もっぱらネットで見つけたチープな時計をいじっている。好きな時計は、ダイバーズ、
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/293892/
- Source:&GP
- Author:&GP