「このビジネスを始めて1年になるまで『貨物フォワーダー』という言葉の意味を知らなかったんですよ」。物流スタートアップのFlexportが直近で32億ドル(約3420億円)の評価を受けたことを考えると、2016年にCEO兼創業者のRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏に初めてインタビューしたときのこの言葉に、今となってはいっそう驚きを禁じ得ない。
しかし、そこに同氏がテック産業で最も才能のある、エキサイティングな経営者の1人である理由が透けて見える。何といっても、彼は学ぶ。謙虚に。休むことなく。果たす役割が大きくなると、それに必要なことは何でも学ぶ。
まさに今なら、旅客機の座席に人が座っているように箱をシートベルトで固定すると医療用マスク115万枚を搭載できることを学ぶ、という意味だ。Flexportはこれまでに個人用防護具約6200万個を輸送している。そのうち1000万個以上が同社のFlexport .orgの働きにより資金提供されたものだ。 一方でピーターセン氏とFlexportはFrontline Responders Fund(最前線対応者支援ファンド、FRF)の設立に協力し、同ファンドは新型コロナウイルス(COVID-19)対策支援のために700万ドル(約7億5000万円)の資金調達を行った。
「彼は私が知る中で最も印象的な創業者の1人ですよ」と語るのは、FRFを率いる仲間でScienceの共同創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏。「ライアンは本当に私欲なく、ただ問題を解決したいと思っているのです」。
これを踏まえて、TechCrunchがこれまで4年間にわたり行った6回のインタビューから、13億ドル(約1390億円)の調達と数億の収益を達成してきたピーターセン氏の歩みを振り返る。
面倒なことを無視しない
ピーターセン氏はほどなく、「貨物のフォワーディング」が出荷と引き渡しの諸々を調整し、そこにある商品のパレットやコンテナを、トラックや船、飛行機を使って地球の反対側にいる販売業者へと届けることだと知った。それまでに、Flexportは2014年のY Combinatorに参加し、1兆ドル産業の貨物業界に参入する準備をしていた。
「問題の規模が大きすぎて、解決できると思えなかった」と同氏は振り返る。「どうやって世界貿易を修正すればいいんだろう? だいぶ経ってから、とにかくやってみよう。壊れっぱなしというわけにはいかないだろう、と思うようになったのです」どうしてか、当時の貨物フォワーディングの世界というのは、ファックスの記録と紙の積荷目録だらけで、Excelファイルか電子メールを受け取れればその顧客は運が良いほうだった。
貨物フォワーディングは多くの起業家の悩みの種であったが、誰もこのことに取り組もうとしなかった。困難が大きすぎて克服できないことから、YCの共同クリエイターのPaul Graham(
ポール・グラハム)氏が名づけた「schlep blindness」(面倒な仕事を無視すること)を引き起こしているようだった。
「面倒な仕事を無視することとは、あまりにも大変すぎるので脳がそのことを考えないようになってしまう、ということです。私たちの脳には必要な機能だと思います。そうでなかったら、座って死について一日中逡巡して、何もできなかったということになるでしょう」とピーターセン氏はいう。「Stripeが現れるより前にインターネットで何かを販売したことがある人なら、恐ろしく面倒な決済の手続きをしたことがあると思います。インターネット起業家なら100%その問題を経験していて、それぞれの方法ででやってきたと思います」。100年前からあって今なお現役の貨物輸送手続きと、山のような規制当局の頭文字語。参入したい人なんているのだろうか。
「Ryanは私が呼ぶところの『徹甲弾』ですよ。他の人が諦めるような障壁を乗り越え続ける創業者です」とグラハム氏は言う。同氏はFlexport.orgの新型コロナウイルス対策支援に100万ドル(約1億1000万円)を寄付している。「彼は意思が固いというだけじゃない。他の人に見えないものが、彼には見えるんです。貨物ビジネスは巨大でありながらものすごく前近代的で、けれど何千人もスタートアップ起業家がいて、誰がそのことに気づいたでしょうね」。
ピーターセン氏が腹を立てていたのは、顧客の貨物が最適とは言いがたいルートで輸送されているのに、そのことが価格やスケジュールにどれほど影響しているかを顧客に知られたくないと、大手貨物フォワーダーが考えていたことだった。「全体がどう機能しているかを私自身が理解できないことで、彼らはお金を儲けていたわけです。それで、当時は、この分野にまだ疎い起業家にありがちなことなのだろうと思っていたのですが、実は大企業でさえこのことに苦労していることがわかったのです。貨物利用運送事業者に利用されてしまうのではないかと恐れていたのです」。
ところが、ピーターセン氏はそれほど世間知らずではなかった。実のところ、それまでずっと貨物ビジネスと関わりがあったのだ。
ソーダの売買からスタートアップの創設へ
「母はたぶんそうとは知らずに、私たちを起業家として育てたのだと思います」とピーターセン氏は振り返る。同氏と兄のデビッドの母親は生化学者であり、食品安全ビジネスを手がけていた。父親はその会社のプログラミングを担当していた。「子供の頃の会話といえば、ソフトウェアを活用し、どうやって政府規制をもっとアクセシブルにするか、ということばかりでした」。Flexportが最終的に、米国の43もの貿易規制当局を突破したのも、同社のCEOにしてみれば自然な成り行きだった。
ピーターセン氏が発散している行動的なエネルギーからは、いつも次の難題を待ち望んでいるような印象を受ける。「その頃は、何もかも飽き飽きしていて」それで、母親の職場に連れて行かれた。「母は私にオフィスに買い置きするソーダを納品させて、報酬を払ってくれたんです。Safeway(セイフウェイ)まで父の車に乗せてもらい、ソーダを1ケース4ドルで買って、9ドルで会社に販売しました」。同氏は笑いながら、ふと考えて「それって、子供のお小遣いを非課税にする方法だったかもしれませんよね」と語った。
ほどなく、ピーターセン氏はもっと大きな商品をもっと遠くへ輸送するようになった。中国でスクーターを買い付け、米国内でオンライン販売した。2005年までピーターセン氏は、サプライチェーンに近い場所にいるため中国で暮らしていた。その翌年、同氏は兄とMichael Klanko(マイケル・クランコ)氏と共同でImportGeniusを創業した。そこで彼らが気づいたのは、紙の積荷目録には膨大な量の価値ある情報が詰まっているということだった。そこで、輸入者と輸出者が競合会社の動向をチェックできるよう、スキャンしたデータを販売し始めた。
ピーターセン氏が初めてスポットライトを浴びたのは、2008年に偶然Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)に出会ったときだった。ImportGeniusは、Apple(アップル)が大量の「電子コンピュータ」を出荷しようとしていたことを掴んだ。これは同社で初めての出荷分類品目だ。 「iPhone 3Gの発売を、公開積荷目録データからスクープしたのです。スティーブ・ジョブズが米国税局に連絡し、国税局から私に連絡が来ました」と2016年のインタビューで語った。
ImportGeniusは結局頭打ちになったが、ピーターセン氏はここで知識を蓄え、後に自らの「面倒な仕事」を突き止め、それを無視することなく打ち砕くことを学んだ。 「最大の難問が本丸から私をじっと見ているようでした。世界貿易は難しすぎて、管理できるソフトウェアがありませんでした」と同氏は振り返る。「その頃、この業界では中小企業向けのソフトウェアが不足しているだろうと予想していました。しかしその後分かったのは、この業界には本当にまったくそのソフトウェアがないということでした」。
最初はImportGeniusの社内で後のFlexportを立ち上げたかったが、既存の投資家にリスクを取るよう説得するのは困難だった。何か別のことを始めるのは怖いが、エキサイティングでもある。「兄は私の親友で、最良のアドバイザーでもあります」とピーターセン氏は言う。お互いに嬉々として競争している2人 — ライアンのTwitterハンドルは「@TypesFast」だ。一方のデビッドは「@TypesFaster」である。
それで、Davidがまず動いた。後に2300万ドル(24億5000万円)を調達するBuildZoomを創業し、工事業者手配の兵站を固めた(このパターン、お気づきでしょうか)。その後2013年にライアンが退社する。「自分の城を出て自分を試したいと……1人で陣頭指揮を執れることを証明したいと望む自分がいたと思います。本当にすごく大きな挑戦でした。その日が来て、初めて味わうような解放感があって、すばらしい気分でした」。
「笑いのタネ」が10億ドルを調達
規制当局の認可をすべて受け、Flexportの商品の基盤を構築するのに数年かかった。Founders Fundからの早期の資本で、ピーターセン氏は待望の貨物ソフトウェアを構築した。それでも「大企業の経営者からは笑いのタネに。私たちのことを(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の)Emett Brown(エメット・ブラウン)博士と次元転移装置に例えた人がいて。でもその人は、博士はタイムマシンを発明して、それは実際に動いたということを忘れていたのだと思います」。
2016年までに、Flexportは64カ国で700社のクライアントにサービスを提供した。僕が以前書いた記事のなかで、「Flexportはイノベーションを寄せ付けない退屈な巨大産業に立ち向かう、最もセクシーでない1兆ドル産業のスタートアップ」とFlexportのことを表現したことがある。それからコンシューマー向けスタートアップが飽和状態になり、投資家はこれまで触れられなかった市場で進化しているテクノロジーに目を向けるようになった。2017年の資金調達後、企業価値9億1000万ドル(971億2000万円)と算定されたFlexportは、DSTが主導する1億1000万ドル(117億4000万円)の資金調達ラウンドを実施し、シリコンバレーの目に留まり始めた。
幸運なことに、Flexportが1800社の顧客と取引し月間7000件の貨物を取り扱うようになっても、まだ貨物業界の巨人たちは笑って見ていた。「スタートアップのライバルは気にしていません。大手が私たちのことをジョークだと思わなくなったら心配です」と同年ピーターセン氏は語っていた。ほどなく、創業25年の中国の民間物流大手S.F. ExpressがFlexportと業務提携し、2018年の追加の1億ドル(106億7000万円)のラウンドにつながった。一方で、Flexportは老舗のライバルたちのようになろうと努力していた。 当時ピーターセン氏は「スタートアップという言葉を外したいと考えていました。(当社のお客様は)成長を助けてくれる企業を求めているのであって、地に足のつかないスタートアップは求めていませんでした」と話していた。
その点、ピーターセン氏は貨物ビジネスか魅力的かどうかは気にしていなかった。「セクシーとも、セクシーでないとも考えたことがありませんでした。世界経済のバックステージパスだと考えていただけです」と後に同氏はそう説明した。それでも、サウジアラビアを後ろ盾とするソフトバンクのVision Fundには魅力的に映った。その頃Flexportは、販売業者が数カ月後に販売予定の商品の決済を完結できる貨物ファイナンス機能を追加していた。自社で航空機をチャーターし、自社の倉庫を運用するようになった。その倉庫では、入庫するすべての貨物のサイズをスキャンしてその先の輸送を最適化できる次世代ロジスティクスの実証実験を行った。
それまでに、Flexportには数多くのイグジットの選択肢があった。しかし、ピーターセン氏は運転を楽しんでいたのだ。「ただおもしろいのです。目的があれば興味深いことに引き込まれる。ビジネスを売却してしまえば、ただのどこにでもいるお金持ちです。ビジネスを売却したいとはまったく思いません」。幸いにも、貨物フォワーディングでの利益拡大の見通しから、ソフトバンクは2019年前半、Flexportに仰天の10億ドル(約1067億円)を投資することに同意し、資金調達後の企業価値は32億ドル(約3415億円)になった。
「当社の役員会でも物議を醸しました。これは大きな希薄化だと考えられていました。しかし、これからやってくる上がり下がりの波で、サイクルを乗り切るのにキャッシュが必要だと説得しました。私の考えでは、世界は不確実なものです。あらゆる出来事に準備ができていなければならない」とピーターセン氏はいう。嵐を乗り切れさえすれば「やがて将来勝利するということです」。
この戦略はほどなく当たった。国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したために中国との貿易が事実上停止し、Flexportの取り扱いコンテナ数は激減したが、他の後発スタートアップ企業のように大規模な解雇をせずに済んだ。2月4日に、先を見越して減速が予測される採用部門を中心に従業員の3%にあたる約50人を削減した。「社員を落胆させるのは本当に辛いこと」とピーターセン氏は打ち明ける。
不況時代のCEOとして舵をとること、そして思いやりを持って人員を削減することが、ピーターセン氏の新しい目標になった。「そのことに私が個人的な責任を負っているということを、社員に知って欲しかったのです。ここには透過性があることを」と同氏は語る。事態の深刻さに、その声に力がこもる。「社員は不安を感じるとリーダーに目を向ける。そのときリーダーが不安を感じていないと分かると、いっそう不安が増すのです。でも、社員が不安を感じていて、『ああ、リーダーもやっぱり不安なのかな?』と思えば、その時は大丈夫。彼らもきちんと行動してくれます」。
新型コロナウイルスの国内感染拡大前に素早い決断力で行動したことで、Flexportの推進力は強く、滑走路は開かれた。ピーターセン氏は、不況でも好況期と同じように同社を導けるだけのちからを証明しつつある。
Flexportのマネジメント術
「この18カ月ほどで得た最大の学びは、全部はできないということです。やりたいことは何でもできるけれど、全部はできないのです」とピーターセン氏は説明する。「良いアイデアが浮かんで『やろう!』というでしょう。するとすぐ手を広げすぎになってしまう。物事に『ノー』という、何らかのトップダウン的な規律が必要なのです。創業後の数年間、私たちにはそれが欠けていました」と彼は苦笑いしながら話した。
規律の探求によって同氏は、顧客ニーズと企業文化維持の優先度付けのための、2つの重要なフレームワークを開発し、今はそれに従っている。Flexportは従業員1800人、14拠点、6つの倉庫、そしてSonos、Kleen Kanteen、Timbuk2など1万社の顧客を獲得するまでに成長したのだから、それらのフレームワークは決定的に重要だ。
最初のフレームワークは、ピーターセン氏のメンターである米国ビジネス界の大御所であるCharlie Munger(チャーリー・マンガー)氏からヒントを得たものだ。ビジネスが成功するために満足させなければならない6種類のステークホルダー、または「お客様」を明らかにする。ピーターセン氏が述べるにはこうだ。
- 顧客:お金を払ってくれる人たち。Flexportにとっては、輸入者と輸出者の両方だ。
- ベンダー:自分が支払う相手。Flexportの場合、航空機、船舶、トラックの所有者。
- 従業員:彼らの待遇を必ず良くすること。Win-Winな関係でなければならない。
- 投資家:自分の投資のリターンを得る資格がある人たち。リスクを取っているから。
- 規制当局:誰に免許を与えるかを決める人たち。Flexportにとっては、輸入製品に関係するもので、米国内だけでも43の規制当局がある。
- コミュニティ:事業を行っている場所。いつかこれは、グローバル社会になるかもしれない。
「すべての項目でBグレード以上、できればAを取れなければ、長期に持続可能ではありません」とピーターセン氏は説明する。そこで働くべきか、投資すべきか、取引すべきか、または自分で導いて向上させられるか、会社を評価するときに誰でも使えるスマートレンズだ。
Airbnbを例に取ってみよう。顧客は概してこのホテルの代わりのサービスを好んでいるし、従業員の採用も継続的に有効にできている。そして、投資家は数十億ドルのオファーを提示し、同社が新型コロナウイルスの災禍を生き延びるよう資金を注入している。ただし、ベンダーであるホストとその近隣住民は問題のあるゲストに手を焼いていて、コミュニティと規制当局は住宅供給に与える影響を巡ってこのスタートアップと衝突している。この「6種類の満足」で、Airbnbが何をもっと頑張らないといけないかが分かるだろう。
2つめのフレームワークは、ピーターセン氏が自ら開発したもので、事業の拡大期に会社のコアバリューを確実に維持する方法に関するものである。6種類の文化的な問いが与えられる。
- Why:なぜ自分は存在するのか。自分の目的、ミッション、ビジョン、影響力は?
- Who:誰を雇用していて、どのような価値観と行動を求めているか。
- What:自分は何に焦点を合わせているか、成功の尺度にどのような指標を使っているか
- How:どうやって意思決定していて、どのようにして改善のためのフィードバックループを短くしているか。
- When:いつまでにやり終えて、商品はいつ出荷しなければならないのか。
- Where:自分のチームはどこに帰属意識を持っていて、自分はどうすればもっと多様性を受け入れられるのか。
ピーターセン氏はこれらの理念を医学的な状況への対処になぞらえる。リーダーが早くからチームの文化にそれらを組み込んでおけば、あとで直そうとするよりもずっと簡単だ。「どの会社でも、これらを正しくできれば、競争に勝てる」と同氏は考えている。
これらを実践するために、ピーターセン氏は身近な人たちでチームを編成した。チームは「当社のOKR(目標と主な結果)は明確か、きちんと文書化され、多様性を受け入れた会議をしているか、社員が自ら責任をもって業務しているかを確認すること、それだけです」。この方法はアマゾンの企業スタイルに大きく影響を受けている。ピーターセン氏は2019年に「英語には官僚制を意味するポジティブな言葉がないですよね」と語っていた。
プロセスを真面目に捉えるCEOは従業員にも好評だ。「ライアンの元で働いたおかげで、この10年でキャリアが大きく前進しました。彼は人に能力を最大に発揮させるような、不思議な力を持っているのです」と語るのは、Flexportの元商品担当副社長を長年勤め、後にPlacementを創設したSean Linehan(ショーン・リネハン)氏である。「ライアンは、オペレーション集約型のテックビジネスの戦略を作り上げているのです。グローバルロジスティクスの巨大企業を一から作るのは、頭がおかしくなるほど複雑な仕事です。でもライアンは複雑さの中で成長しています。ほとんどの起業家がだめになってしまう状況で、彼は本領を発揮するのです」。
現在直面している経済的な向かい風の中でFlexportが上場を目指すならば、ピーターセン氏にはこの推進力が必要だろう。ご想像どおり、同氏はそのことについても学んでいるところだ。「年次報告書を読むのが好きなのです。趣味みたいなものです、特に競合会社の報告書が」とピーターセン氏は言う。「上場したいです。ただし、利益を出せるようになってからです。ウォールストリートの気まぐれに流されたくありません。上場していて損を出して、そのとき自社の株がウォールストリートに嫌われたら、死のサイクルに入ってしまいます」
他をしのぐ会社のCEOであることで、新しいメンターへの扉も開かれた。エグゼクティブコーチのMatt Messari(マット・メッサリ)氏と、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏である。ピーターセン氏はナデラ氏に「学びと成長を測定可能にする方法はないか」と相談した。レドモンドの実力者の答えは「すべてを測定しなくてもよい」だった。ピーターセン氏はメモを取った。自分が正しいと思うことをすればいい時もある。
戦時CEO
真心を持って率いてきたFlexportは、新型コロナウイルス対策支援に大規模に参加することに舵を切った。「私たちはただ温かい毛布にくるまってベッドで寝ているためにここにいるのではない。世界のために何かするときがやってきた」とピーターセン氏はツイートした。
Flexportの対応は2020年1月に始まり、週に数回ブログに記事を投稿して、新型コロナウイルスが世界貿易に与える影響、支援組織がサプライチェーンの問題に対処する方法、そして政府や企業が支援する方法を明らかにした。そして、Frontline Responders Fundを立ち上げ、Flexport.orgへの寄付をすべてこのチャリティーに回し、必要ならばいつでも貨物フォワーディング費用の大幅割引を提供して個人防護具の入手を支援した。
「今回受け取った寄付は100%、最前線の人々にできるだけ速くマスクを輸送することに直接費やされます。お受けした寄付は1セントでも無駄にしないことをお約束します」とピーターセン氏はツイートした。自分のビジネスもまた世界貿易と需要の混乱における自身の問題に直面している中で、同氏はすべての時間をFlexport.orgの運営とFRFの支援を行うことにした。Arnold Schwarzenegge(アーノルド・シュワルツェネッガー)氏やEdward Norton(エドワード・ノートン)氏のようなセレブの支援もあって、700万ドル(約7億5000千万円)以上の資金を調達した。FRFはこれまでにマスク690万枚、 ガウン24万着、人工呼吸器1000台、手袋15万5000枚、そして社会的に弱い立場の人々の食事25万食を届けている。
ピーターセン氏は多くのリーダーに声をかけ人道支援を説いて回ることに躊躇がない。救援活動を妨げている主なボトルネックの広範なガイドを記している。「慈善活動家たちもステップアップして、個人防護具を受注したものの、代金を前払いで受け取らないと仕入れの資金がないという組織に対し、資金提供するべきです。パンデミックが落ち着いたらお金は戻ってくるのだから、今できる慈善活動で最も効果の高い方法のひとつです」。
同氏の意欲が従業員たちの心を動かし、彼らも腕まくりを始めた。「危機の中で、リーダーたちは彼らが体現する価値観を如実に示しています」とFlexport.orgの責任者Susy Schöneberg(スージー・シェーネベルク)氏は語る。「新型コロナウイルスの大流行後、ライアンは民間企業と非営利団体の顧客を支援するために、すぐに多くのリソースを提供してくれました。ここ数週間、私の1日は彼との会話に始まり、彼との会話で終わるという状況でした。時刻が何時だろうが構わずにです」。
ピーターセン氏の立場を利用することに加え、同氏には利益を得るために危機を利用しようとしている人を見抜く特別な視力がある。「どの病院システムまたは最前線緊急事態対応者に提供するかを明らかにされないお客様からのご依頼の場合、Flexportは個人防護具を輸送いたしません。このことは即時有効とします」とピーターセン氏はつづった。「個人防護具は世界的に不足しています。簡単にお金を稼ぎたい起業家に戦争で儲けさせるような行為は、非道徳的です」。
連邦政府レベルの適切な危機管理の欠如により、ピーターセン氏は対新型コロナウイルス戦線の事実上の総司令官になった。「問題の規模が甚大であること、そして先に説明した市場の失敗の複雑さを考えれば、米国政府がみずからこの問題を解決できるとは思いません。それでも、障壁を取り払い、民間セクターの対応を調整するようなリーダーシップは発揮できるし、そうしなければなりません」それまで、ピーターセン氏は全速力で今すぐ必要な戦時CEOになることを学んでいることろだ。
ピーターセン氏は故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏の言葉を借りて「自分のゴールがわかっているとき、世界は全部図書館になる」と締めくくった。
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Category:ネットサービス
Tags:Flexport Softbank Vision Fund 物流
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(翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/05/05/2020-04-26-ryan-petersen-flexport/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Josh Constine