【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。
この記事では、InstagramとTikTokの活用事例をチェックしていく。TwitterとSnapchatの最新事情についてはこちらの記事、注目の次世代SNSについてはこちらの記事を参照してほしい。
YouTubeの売上をも超えるInstagram
いまやInstagramは、どのプラットフォームよりも人気かもしれない。Instagramの2019年の売上は200億ドルだったとのこと(YouTubeの150億ドル越え)。Facebookの全体の25%以上の売上。Instagramの買収に10億ドル払ったFacebookからすると、18日に1倍の投資額が入ってくるレベルだ。
「インスタ映え」と言うコンセプトも一般化され、Instagramを起点として多くのビジネス、インフルエンサーが立ち上がった。ここではその中でも、新しいInstagramの使い方、お勧めの活用方法をまとめてみた。
活用事例1:インスタ小説
ニューヨーク公共図書館が絶妙なSNSプロモーションを出した。不思議の国のアリスなどのクラシックなストーリーをInstagram Storiesで公開。この「インスタ小説」の使い方は素晴らしい!
まずインスタ小説のローンチする動画もめっちゃいい。明確にメッセージングを伝えている。
こちらが不思議の国のアリスのインスタ小説をプロモーションする動画。テキストだけでもキャラクターの紹介、ストーリー内の話をちょい出しするやり方が素晴らしい。
インスタ小説の素晴らしい点は、
- カバーのアートとアニメーションがいい
- Thumb here(ここに親指を置く)ボタンで動画スピードを調整可能
- Thumb hereのアイコンがページごとに進化する
- アニメーションが入ったページがあるので飽きない
しかもInstagram Storiesで小説を読むのが難しいと思われる人のためにチュートリアルの動画まで準備している。さらにニューヨーク公共図書館のIG Stories Highlightsでアーカイブされるので、いつでも読み返せる。
活用事例2:Instagram Storiesフィルター
去年末から米国では大人気になったInstagram Storiesでのフィルター。
自分は何の、ディズニー、ポケモン、セレブ、動物、。ヒップホップアーティストなのかなどをランダムで出してくれるフィルターで、そのリアクション動画を撮れるようになっている。このフィルターによって新しいInstagramスターも生まれている。フィルター自体が見つけにくいので、Google(グーグル)で「Instagram filter」の検索する人が増えている。
実際にフランス人のClément Quennesson(クレメント・ケネソン)さんが作ったフィルターが2020年1月2日から1月10日までに100万回以上使われた。彼女は「Which Baby Animal」「Which Hip Hop Artist」「Which Sea Creature」などのフィルター作ったそうだ。Which Hip Hop Artistフィルターは4日間で3500万インプレッションがある。
クレメントさんはInstagramからボットだと思われ、一瞬アカウントがバンされたこともあった。バズった後に数社のブランドから連絡が来て、フィルターを作ってくれと依頼が来ている。このようにInstagramでのセルフィー文化をうまく取り入れてその上にバズりそうなフィルターなどを作ることによってブランド認知の向上にもつなげられる。
事例3:テキスト・プレゼンの新しい共有方法?
Instagramで写真や画像ではなくエッセイを投稿する動きも出てきている。今後、エッセイやパワーポイントなどのスライドをシェアする動きが増えるかもしれない。
1年を振り返るSpotify Wrappedもプレゼン風フォーマットをInstagram Storiesに落とし込んだもの。四季別で聞いたアーティストに分けてくれたり、誰を一番聞いてたかを簡単にまとめてくれる。
既にSpotify Wrappedが人気だったが、Spotifyの素晴らしいところはそれをInstagram Stories用のサイズに自動調整してシェアできるように設定しているところ。
こちらが2013年のSpotify Wrappedだ。
事例4:映画予告のプロモーション
Instagram Storiesで映画や番組をうまくプロモーションする事例。まず「The Gentlemen」(日本では2020年秋公開予定)の映画トレーラーをInstagram広告用にフォーマットしたもの。俳優の映像からはじめるのがうまくて面白く、なおかつ早いカットを使い、メディアからのコメントもうまく使っている。
ディズニーは自社IP(知的財産)を使って見事にDisney+番組のプロモーションをした。ザ・シンプソンズが、マーベル系、スターウォーズ風、ディズニー風のパロディーをした映像をまとめて個々のIGTV動画として出した。
事例5:1年間のまとめ
食品宅配のPostmates(ポストメイツ)は2019年の振り返りインフォグラフィックをInstagramで公開。数字の切り出し方や見せ方がユーモアで、うまくプロモーションできている事例。一番おかしい数字を出してバズらせるのはいいプロモーションだ。
事例6:マイクロインフルエンサーの活用
スターウォーズがInstagram用にイラストレーターを採用して新しい映画公開のためにさまざまなオフィシャルポスターを作ってもらった。クリエイティブのクオリティーがすごい!
この作品は、有名なクリエイティブスタジオのPosterPosse(ポスターポッセ)とコラボした作品。さまざまアーティストをコンテンツクリエイターとして活用しているのは正しい戦略だ。12月のスターウォーズのInstagramアカウントで2番目にいいねされた投稿はアートポスター投稿(53万いいね)だった。唯一勝ったのはBaby Yodaのコンセプトアート投稿だけだ。
これにより、各アーティストは自分のチャネルでも投稿できた。自分のアカウントで投稿できることによって各アーティストのフォロワーにもプロモーションできる。これでうまくクリエイターをマイクロインフルエンサーに変えている。
過去には、「Pacific Rim: Uprising」(パシフィック・リム:アップライジング)の公開時でも似ているプロモーションをしていた。ストリートアーティストをうまく活用するのは今後流行りそうだ。
このまま成長し続けるか?「TikTok」
Bytedance(バイトダンス)はどのSNSよりも早く10億MAUを突破。TikTokはインフルエンサーが主流になってから初めて流行しだしたSNSだ。ただ、その成長は本当なのか、それとも作られたものなのか?
10年前のYouTube、新しいVineとして有名になっているが実際は広告で伸びている。2018年だけで10億ドルの広告費を使い、Snap、Facebook、Instagramでのプロモーションをかなりやっていた。実際に2018年に一番Snap上で広告出したのはTikTokだった。さらに、米国ではMusica.lyを8億ドルで買収によりさらに成長し、最近はSnap、Twitter、Quoraにも買収の興味を持っているらしい。
もともとZ世代のプラットフォームとして知られていたが、ミレニアル世代もTikTokにハマり始めている。しかし、面白いのはミレニアル世代ですらTikTokコンテンツが何故人気なのかがわからない子が多いこと。ただ、実際にみんなTikTokに入り込んでいるのは明らかなので、今後もかなり成長は期待できる。
最近だとFacebookも危機感を感じているのか、Facebook Messengerの広告をTikTok内に出している。
TikTokでウケるコンテンツとは?
おもしろ系やダンス、ふざけた動画、メイク動画などが伸びるが、ほかだと政治や医療系の教育動画も増えている。Z世代はTikTokは単純に遊ぶ場だけではなく、学べる場としても考えている。
ブランドとしてTikTok上でコンテンツを出す際にはかなり慎重にやるべきだ。米国のTikTokユーザーは広告っぽいコンテンツを見た瞬間スキップするので、周りのTikTokコンテンツっぽいものを出さなければいけない。NBA、Chipotle、Washington Postなどはかなりうまくプラットフォームに合わせたコンテンツを出せている。
そしてインフルエンサーを使う際にも気を付けなければいけない。TikTokの強調的ポイントは知名度とは関係なくコンテンツが広がること。コンテンツが面白ければ面白いほど広がる傾向にある。なのでフォロワーが多い人だからバズる確信はまったくない。そのインフルエンサーとうまく、その人にあったコンテンツを作るのが大事。そのため、商品紹介とかの場合は30日間そのプロダクトを使い続けてもらってからインフルエンサーキャンペーンをやるべき、そして一発ではなく何回にも渡ってやるべき。
ただ、まだTikTokインフルエンサーを活用している企業が少ないため、かなりいいチャンスだと思っている。特にコスメ系の会社とかであれば低いCACでキャンペーンを実施した実績も過去にある。
TikTokはまだ新しいので、どんどん新しい活用法が出てくる中で、幾つか面白かった事例をまとめた。
活用事例1:誰もが知りたい非日常体験レポート
Makall Lauren(マカル・ローレン)さんはディズニーのインターンプログラムに参加した際に、あることに気づいた。それはインターンの内部情報をみんなが知りたいこと。マカル氏の最初のディズニー動画がバズったときに、過去のTikTok動画をすべてアーカイブしてディズニーに特化することを決めた。
マカルさんのプロフィールに行くと、すぐに何のコンテンツを提供するかがわかる。このような1つの目的があることが重要。彼女のプロフィールを見ると、ディズニーで働いていて、ディズニーについて語るチャネルとなっている。ディズニー好きな人だと、フォローする判断はすぐにできる。
彼女の特技は圧倒的な歌唱能力。インターンとしてディズニーの内部ストーリーを語るのだけではなく、それを歌に変えることができるのが素晴らしい。これはまさにTikTokに合ったスキルセット。歌えるかの証拠はこちらの動画で、すでに500万以上の再生回数となっている。
実際に彼女のフォロワー数の成長を見ると、
- 初期ディズニー動画(2020年1月21日):900人
- 歌える証拠動画(2020年1月24日):4.5万人
- フォロー感謝動画1(2020年1月28日):15万人
- フォロー感謝動画2(2020年2月5日):20万人
- 現在:34万人超
歌える証拠動画のテキストの使い方がうまい。動画内にオーバーレイで「ディズニーで仕事している動画が人気になった」と入れるだけで、歌える証拠動画を見た後に次に視聴者がマカル氏のページを見てほかの動画をチェックするように誘導している。インターンのストーリーと歌声のフックを作った。
そして何回も見れらるコンテンツテンプレートを見つけた。引越日などの何かのイベントや瞬間とそのテーマに沿ったディズニーの曲、例えば「アナと雪の女王」の「生まれてはじめて」などをうまくつなげる。
通常のTikTokクリエイターはコンテンツのトレンドに沿って新しい動画を作る。米国だとダンスや曲のカバーをしている。ただ本当のクリエイティブの人たちは新しい、ユニークな体験をオファーする。TikTokでは次の動画を見たがる、「続きは次の動画で」などのいわゆる「クリフハンガー」をよくやる。マカル氏はそれが自然とできている。各投稿は彼女のインターンとしての生活を表しているので、何が起こるのかがみんな気になるのだ。
事例2:シェアしやすい動画のダウンロード機能
ほとんどのSNSプラットフォームがエコシステム内の動画や写真をダウンロードするのを難しくしている中、TikTokは簡単にして、なおかつTikTokロゴとクリエイター名をウォーターマークを自動にして共有しやすくしている。
事例3:TikTokからの新しいソーシャルコマース
去年話題になった「OK Boomer」だが、流行のきっかけは1本のTikTok動画。ミレニアル世代やZ世代はピーターパンみたいに大人になりたくないと批判しているおじさんに対して「OK Boomer」とコメントを返した動画。
古い世代の考え方は世界で通用しておらず、逆に多大なる問題を作り上げたとすごく簡単にまとめている。環境問題の責任を負うのは若手世代なのに、環境問題を信じない大人がいる。「世界が変わっている中、我々のやり方で世界を救ってみせる」というメッセージ性もある。
OK Boomerがコメントやミームで流行っている中、マネタイズする人たちも出ている。19歳のShannon O’Connor(シャノン・オコナー)さんがOK BoomerのTシャツをTikTokでシェアしたところ、すぐに100万円以上のオーダーが入ってきた。
事例4:チャレンジ文化
過去だとIce Bucket Challengeな(アイス・バケツ・チャレンジ)どバズったチャレンジは多いが、TikTokはそのコンセプトをスケールさせた気がする。ダンスチャレンジとかではよく見るが、それ以外の方法も多くの企業が考えている。中でも人気だったのはChipotleのLidFlipチャレンジだ。
引用記事
・Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
・What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
・NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
・The Era of Participatory Social(Medium)
・The Sound of Silence(Posthaven)
・Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
・Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
・To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
・Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)