数週間前に比べてビデオ会議を使う機会が増えた、という人は多いだろう。以前から頻繁に使っていた人でも、ここ数週間でさらに頻度が高くなったのではないだろうか。この状況がすぐに変わることはなさそうだ。であれば、ビデオ会議を徹底的に活用してみるのはどうだろう。MacBookに搭載されている標準的なウェブカメラでもビデオ会議の目的は果たせるが、素晴らしい出来にはほど遠い。ビデオ会議の質を上げるには予算に応じてさまざまな方法がある。毎日のバーチャル立ちミーティングをもう少しまともにするとか、バーチャル会議でのプレゼンの質を上げるとか、新しいビデオポッドキャストを立ち上げるとか、さまざまな目的を達成するために手持ちの機器でできる対策や、最高レベルのビデオと音声を手に入れるために必要な機材について、いくつかアドバイスしてみたい。
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照明を点けて正しい場所に置く
ビデオ会議でカメラ映りを向上させる最も簡単な方法は、手持ちの照明を点けてカメラの背後に置き、顔を照らすようにすることだ。つまり、照明を移動するか、今ある照明がすべて固定されている場合はコンピュータを移動するだけでよい。これだけで劇的に見栄えがよくなる。以下に挙げる例を見てほしい。これは筆者のMicrosoft Surface Book 2の画面だ(Surface Book 2内蔵のカメラは、内蔵ビデオカメラとしては最高の部類に入る)。
上の画像は部屋の天井の照明しか点いていない状態だ。下の画像は、手持ちの照明を点けてSurface Bookの後ろ斜め上に固定したものだ。ビデオがオンになっているのに気づかずに不意打ちを食らったような感じがなくなって、実際に会議に出席していてもおかしくないくらいの画質になっている。
背景に映り込むものに注意する
ビデオ会議に出席するたびに周りを完璧に片付けるのは無理だとしても、少し時間を割いてカメラに何が映るのかをチェックしておく価値はある。整然と並んだ装飾品などの他はほとんど何も映らないポイントを見つけるのが理想的だ。背景に入るドアは閉め、開いた窓の前ではビデオを撮らない。パンデミックのせいで部屋が散らかっている場合は、横にまとめてカメラに映らないようにしよう。
システムサウンドの設定を確認する
デバイスとオペレーティングシステムの入力ボリュームの設定がどこにあるのかを確認する。大半のアプリやシステムは妥当なデフォルト設定になっていて、そのまま使っても問題ない。しかし、たとえば自分以外にもう1人画面に収めるためにノートパソコンから離れて座るなど、普通とは違うことをするときは、スライダーを動かして音声入力のレベルを上げ、ビデオ会議出席者にこちらの音声が確実に聞こえるようにするとよい。
おそらくどんなアプリでも音声入力レベルは直接調整できると思うが、Macでは、「システム環境設定」>「サウンド」>「入力」に移動して、お使いのデバイスで入力レベルを直接調整できるかどうか、調整してみて望みどおりの結果が得られるかどうかを確認してみるとよい。
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外付けのウェブカメラを入手する
大半のノートブックやオールインワンパソコンの内蔵ウェブカメラでは、満足できる結果は得られない。しかし、専用のウェブカメラを購入すれば、まず間違いなく質を上げることができる。今はビデオ会議の質を上げようとして誰もがこぞってウェブカメラを買っている状態なので、在庫切れになっているかもしれない。予算が許すなら、私が下記の動画を撮影するのに使ったLogitech C922 Pro Stream 1080pなどを入手すれば、鮮明さ、微光での性能、発色などを改善できるだろう。
標準的なUSBマイクを入手する
もう1つ、比較的低コストで簡単に大きな効果が得られる方法として、専用の外部マイクがある。上記の動画では、人気のSamson Meteor USBマイクを使った。このマイクは、脚部が折りたたみ可能で専用のボリューム/ミュートコントローラが付いている。必要な機能をすべて備えており、USB端子に差し込むだけですぐに使えて、人の声に最適化された高品質のサウンドが得られる。
ヘッドフォンを入手する
種類は問わないがヘッドフォンがあればビデオ通話やビデオ会議の質が向上する。マイクがスピーカーの反響音を拾ってしまう可能性が最小限に抑えられるからだ。耳を完全に覆うモデルは音質はよいが、いかにも頭に何か着けているという感じで映りたくない場合はイヤホンタイプのほうがよい。
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専用のカメラとHDMI-to-USB変換インターフェイスを使う
スタンドアロンのカメラ(HDMI出力機能を備えた一般的な小型デジタルカメラで構わない)が手元にある場合は、HDMI-to-USBビデオキャプチャインターフェイスを入手して、より高品質のウェブカメラに変身させてみよう。以下のクリップでは、Sony RX100 VIIを使用している。RX100 VIIは間違いなくハイエンドの消費者向けデジタルカメラだが、他にも選択肢はいろいろとある。Sony RX100シリーズの古いモデルなどを使ってもこれと同じレベルの品質が得られるはずだ。
HDMIインターフェイスを探すときは、Zoom、Hangouts、Skypeなどのビデオ会議用アプリがMacおよびWindows上で、専用のソフトウェアなしで動作することを謳っているものを使うようにする。このようなタイプはUVC機能を備えている可能性が高い。つまり、ドライバをダウンロードしたり特殊なソフトウェアをインストールしたりしなくても、OSがこうしたタイプのインターフェイスをそのままウェブカメラとして認識するということだ。このようなインターフェイスは新型コロナウイルス感染症のため需要が増えており、筆者がこの記事で使ったElgato Cam Link 4Kはおそらくどこでも在庫切れになっているだろう。代わりに、IOGear Video Capture AdapterやMagewell USB 3.0 Captureなどが使える。あるいは、Blackmagic ATEM Miniなどのライブ放送専用デッキにアップグレードすることを検討してもよい。これについては後述する。
有線小型マイクを入手する
シンプルな有線小型マイクは音声の質を上げる素晴らしい方法だ。価格も比較的安い。それなりの性能を備えた有線小型マイクでもAmazon(アマゾン)で20ドル(約2,100円)で入手できる。3.5ミリメートルの入力端子がない場合でも、USBバージョンを使えばコンピュータに直接接続できる。RodeのLavalier GOは中価格帯では素晴らしい製品で、Wireless GOトランスミッター/レシーバーキットとも相性がよい。このキットについては次のセクションで説明する。このマイクの短所は、コードの長さによっては、マイク着用時に動ける範囲がかなり制限される可能性があることだ。
複数の照明を入手して効果的に配置する
照明は凝りだすとキリがないが、手始めにいくつかの照明を購入して最も必要な場所に配置するのは、安価でよい方法だ。アマゾンで、予算に合わせてさまざまな照明キットが販売されている。グースネック型の照明にPhilips Hueのライトをいくつか取り付けて正しく配置し、色温度と明るさを調整するだけで、かなりの効果が得られる。
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レンズ交換可能なカメラで高速レンズを使う
一般レベルの小型デジタルカメラの次の段階は、レンズが交換可能なカメラだ。レンズ交換可能なカメラを使用すると、最大絞り値の高い(つまりf値が低い)高級な高速レンズを使って焦点のぼけた背景を得ることができる。これにより、被写体と背景を自然な形で切り分けることができ、映画のような映り具合で、全員参加の月次会議で同僚たちをあっといわせることができる。
ワイヤレス小型マイクを入手する
小型マイクは素晴らしいが、ワイヤレス小型マイクはもっとよい。ケーブルの長さが足りなくなるのではとか、作業スペースにある他のケーブルと絡まるのでは、といった心配をしなくて済む。サウンドをコンピュータに取り込むのに使える音声インターフェイスの選択肢も幅広い。おすすめはRODE Wireless GOだ。RODE Wireless GOは単独でも使えるし、RODE Lavalier GOなどのマイクと組み合わせて柔軟な素晴らしいサウンドを作ることもできる。
インナーイヤモニターを使う
この段階ではまだヘッドフォンを使いたいと思うだろうが、是非使ってほしいのは、できるだけ外から見えないように設計されたインナーイヤモニターだ。Shure製のような放送品質の専用モニターもあれば、低遅延でBluetooth最新バージョンに対応したBluetoothヘッドフォンもある。Apple(アップル)のAirPods Proは素晴らしい選択肢だ。また、Bang & Olfusen E8完全ワイヤレス型イアホンも優秀なアイテムだ。私はこのイヤホンをかなり使い込んでいるが遅延が気になったことは一度もない。
3点照明を使う
この辺りでそろそろ照明について本格的に考えてみてもよいだろう。ストリーミング、ビデオ会議、その他デスクから行うすべての作業を最もバランスよく最適化するには、ElgatoのKey LightまたはKey Light Airを最低2台用意するとよい。
このような、拡散板が組み込まれたLEDパネルライトは使い方も簡単だ。頑丈な作りの連接型チューブマウントをクランプでデスクにしっかり固定できる。また、Wi-Fiに接続してスマートフォンやデスクトップアプリケーションでコントロール可能だ。色温度も調整できる。つまり、状況に応じて照明の色をブルー寄りまたはオレンジ寄りにできる。明るさも調整可能だ。
Elgatoの照明を3台設置すれば、標準的な3点照明セットアップが完成する。このセットアップはインタビューや、カメラに直接話しかける場合に理想的だ。つまり、バーチャルの会議/イベント/ウェビナーなど、想定されるあらゆる用途に使える。
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HDMI放送品質スイッチャーデッキを入手する
HDMI-USBキャプチャデバイスを接続すれば大半のカメラをウェブカメラとして使うことができるが、さまざまなオプションを試したいなら、Blackmagic ATEM Miniなどの放送品質スイッチングインターフェイスにアップグレードするとよい。昨年発売されたATEM Miniには、これまで基本的に映像のプロしか使えなかった多くの機能が詰め込まれている。サイズもコンパクトで使いやすく、これだけの機能を備えていることを考えれば信じられない低価格だ。
高性能カメラとATEM Miniを組み合わせるだけで、実に多彩なビデオ機能が使えるようになる。静止画を準備したり、コンピュータ入力に切り替えてビデオを表示したりできる。グラフィックアプリをライブで操作することも、コードのデモやプレゼンテーションも可能だ。ピクチャー・イン・ピクチャー表示や画面下部の3分割表示、専用のハードウェアボタンでフェードアウトして真っ暗な画面にすることもできる。
ATEM Miniを最大限に活用したいなら、2台目、さらには3台目、4台目のカメラを追加することだ。ほとんどの用途では、それほど多くのカメラは必要ない。1人の人間が話しているときに撮影できるアングルなど所詮限られているからだ。だが、カメラの配置と被写体にちょっとした工夫を凝らせば、ストリーム中に別の映像に切り替えるのも楽しいし面白い。スピーチや長いプレゼンテーションなどの場合は特にそうだ。発売されたばかりの新しいATEM Mini Proには、録画機能とストリーミング機能が内蔵されている。
放送品質ガンマイクを使う
ATEM Miniには1つの音声入力専用端子があるため、非常に幅広い使い方ができる。たとえば、1つの入力端子をiPod touchの出力に接続すれば、iPod touchを手軽なサウンドボードとして使用して、導入部やタイトルに音楽や効果音を付けることができる。正しいインターフェイスを備えていれば、高品質のマイクから音声を取り込むことも可能だ。
ビデオの画質低下を最小限に抑えながらトップレベルのストリーミング品質を実現するには、優れた放送品質のガンマイクがおすすめだ。エントリレベルのガンマイクRode VideoMic NTGは、カメラの上に取り付け可能という柔軟性を備えている。ただし、最大限の結果を得るには、Rode NTG3mをブーム式アームに取り付け、映像に映り込まないようにして、マイク側を自分の口に向けるよう角度を調整するのがおすすめだ。
アクセント照明を追加する
3点照明についてはすでに説明したとおりだが、前述したように、照明は凝りだすとキリがない。アクセント照明は、映像を一段とプロっぽく見せてくれるし、簡単に手に入る機器で手軽にセットアップできる。Philips(フィリップス)のHueはどんなシーンにも活気を与えてくれる筆者のお気に入りだ。すでにHueシリーズの照明を使っている場合は着色電球で間に合わせることもできる。最近フィリップスから発売されたHue Play Smart LED Light Barなどは基本的にアクセント照明用途に特化して開発された製品で、1台の電源アダプターに3つまで接続できる。壁用のアクセント照明として素晴らしい効果が得られる。
もちろん、この記事で紹介した製品がすべて、基本的なビデオ会議、バーチャルハングアウトやミーティングに必須というわけではまったくない。ただ今後、新型コロナウイルス感染症をめぐる事態が収束して、ある程度通常の生活に戻ったとしても、生活の中でリモートビデオが果たす役割が大きくなると考えているなら、予算と必要に応じてアップグレードする要素を検討してみる価値はある。この記事が何かのお役に立てば幸いだ。
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Category:ハードウェア
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(翻訳:Dragonfly)