インドで最も裕福なMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏のReliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォームズ)に大金が注ぎ込まれている理由が明らかになりつつある。アンバニ氏のeコマースベンチャーJioMart(ジオマート)が全国展開を開始した。
インドの大手通信事業者Jio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)と大手小売チェーンJio Retail(ジオ・リテイル)のeコマースベンチャーとして、JioMartは新たなウェブサイトを立ち上げ、数十の都市で注文の受け付けを始めた。展開都市にはデリー、チェンナイ、コルカタ、バンガロール、プネー、ボカロ、バティンダ、アフマダーバード、グルガーオン、デーラー・ドゥーンが含まれる。Relianceの幹部は、インド国内200の市町村でJioMartが使え、配達を行っている、と話した。
5月23日にサービスエリアを拡大したが、その前はムンバイ郊外の3エリアでのみの提供だった。このサービスでは、グローサリーに加えて果物や野菜といった傷みやすいもの、そして乳製品も家庭に届ける。
先月おおよそ17%の株式を発行して100億ドル(約1兆800億円)超を調達したアンバニ氏のReliance Jio Platformsは3億8800万人超の利用者を抱えるインド最大の通信事業者だ。
アンバニ氏の多くの企業がAmazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)のFlipkart(フリップカート)、BigBasket(ビッグバスケット)、 MilkBasket(ミルクバスケット)、Grofers(グロファーズ)といった競合他社が溢れかえっているマーケットに参入する中での資金調達だ。
今週初め、米国のeコマース大企業Amazonは、Prosus Ventureが支援するSwiggy(スウィギー)とAnt Financial(アント・ファイナンシャル)が支援するZomato(ゾマト)が複占するインドのフードデリバリーマーケットに参入した。Amazonはインドでかなりの人材採用を進めていて、プラットフォーム上で増大する需要に対応すべく、5万人近くの季節労働者を雇用しようとしている。
一方、2006年創業のアンバニ氏のReliance Retailは売上高ではインド最大の小売業者という地位を保っている。6500超の市町村に約1万の店舗があり、毎週顧客350万人超が利用する。
JioMartはAmazonとFlipkartを意識しているかもしれないが、現状ではインド上位2社のグローサリーデリバリースタットアップ、GrofersとBigBasketとの競争を展開している。
この1カ月前には、JioMartはFacebookのWhatsAppにビジネスアカウントを開設した。これを使って人々はWhatsAppで注文を追跡したり請求書を確認したりできる。
Facebookは先月、Reliance Jio Platformsに57億ドル(約6100億円)を投資すると発表し、インドの零細企業をサポートすべくReliance Jioと協業することを約束した。JioMartのWhatsAppアカウントはまだサービス提供範囲を広げていない。
インドで最も富裕であり、Reliance Industriesの会長であるアンバニ氏は昨年eコマースプラットフォームを立ち上げる計画を明らかにした。声明の中で、同氏はMahatma Gandhi(マハトマ・ガンジー)氏の功績に触れ、インドは新たな戦いに挑まなければならないと述べた。
インドでは過去数年間に、ひと握りの企業がeコマースウェブサイトを立ち上げようと試み、失敗した。同国では小売の95%超が実在店舗でのものだ。しかしAmazonとWalmartのFlipkartによる複占に対抗するにあたっては、KKR、Facebook、Silver Lake、Vista Equity Partners、General Atlanticから調達した100億ドル(約1兆800億円)超の資金により、アンバニ氏はユニークな位置につけている。調達した資金はJioMartの展開に加え、Reliance Industriesの210億ドル(約2兆3000億円)もの借金返済にも使われる。
「データの植民地化に対し、我々は新たな動きを起こさなければならない。このデータ主導の革命でインドが成功するためには、インド人のデータのコントロールと所有権をインドに移さなければならない。別の言葉で言うと、インドの富をインド人に戻す必要がある」とNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相が出席したイベントでアンバニ氏は述べた。
画像クレジット: DIBYANGSHU SARKAR/AFP / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)