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店舗ビジネスのDXを支援する「はたLuck」運営が7.6億円を調達

店舗マネジメントツール「はたLuck」を展開するナレッジ・マーチャントワークスは5月25日、GMO VenturePartnersや三井不動産のCVCファンド(グローバルブレインが運営する「31VENTURES Global Innovation Fund 1 号」)などを引受先とする第三者割当増資により総額7.6億円を調達したことを明らかにした。

本ラウンドはシリーズBに該当し、同社にとっては2018年9月に2.7億円を調達して以来のもの。累計調達額は約10.3億円となった。

はたLuckは小売や飲食、サービス業などリアル店舗・施設を展開する企業の生産性向上をサポートする領域特化型のSaaSだ。現在は複数店舗を構える大手企業を中心に数十社へサービスを提供。店舗で行われる日々のコミュニケーションからマニュアル教育、情報の引き継ぎ、シフト作成などの各種機能を1つのアプリに搭載することで、現場の業務効率化を後押しする。

同サービスの顧客に共通するのは交代勤務制のアルバイト(ナレッジ・マーチャントワークスではシフトワーカーという表現をしている)が活躍する現場であること。曜日や時間帯によって様々なメンバーが入れ替わりで仕事をする状況において、常に高いクオリティを担保することが求められる企業たちだ。

ナレッジ・マーチャントワークス代表取締役の染谷剛史氏によると、そういった現場ではデジタルシフトが十分に進んでおらず、メンバー間の情報共有やコミュニケーションは現在でも「紙の大学ノート」が主流なのだそう。一部のコミュニケーションにはLINEなども使われてはいるものの、非効率な部分も多くアップデートの余地が大きいという。

「シフトワーカーが軸となって運営されている職場では、パズルのように人を組み合わせながら365日に渡ってサービスの品質を守っている。そのためには日々の情報交換や引き継ぎを相当しっかりやる必要があるが、近年は人手不足に加えて『好きな曜日に少しだけ働きたい』という働き手が増えていることもあり、2000年代初頭は30人で回っていたところが70人いないと回らないような状態だ。その現場をマネジメントする負担がかなり大きくなっている」(染谷氏)

はたLuckの特徴は、各スタッフが保有するスマホ上で日々の業務管理や情報共有が完結する点にある。染谷氏の話では「シフト作成ツール」など1つ1つの機能を見れば既存のサービスも存在するが、今まではそれぞれが連携していなかったために大きな効果が見込めなかったり、顧客にとって高コストになっていたりした。

はたLuckではそれらを1つのアプリに集約。利用店舗数とユーザー数(1ID200円)に応じて柔軟に導入できる形で提供する。

「たとえば教育の機能とシフト作成機能が連携することでメンバーのスキルを考慮した最適な人員配置が実現できるといったように、個々の機能が繋がることで本当の意味での業務効率化が実現できると考えた。その結果として必要な仕組みを網羅したオールインワンサービスというアプローチをとっている」(染谷氏)

はたLuckは店長のマネジメント業務の負荷軽減、ワーカーの業務効率化を実現するだけでなく、複数店舗を管理するSV(スーパーバイザー)の業務改善にも貢献する。

従来本社からは見えなかった“各ワーカーのスキルや貢献度”などのデータをアプリを通じて可視化することで、それを集約した各店舗の戦力値をスコアにして比較・分析することも可能に。たとえばA店に比べてB店の業績が悪い場合に「具体的にどこで違いが生じていて、改善するためには何をすればいいのか」がわかる。

今までは何も見えていなかったが故に「店長の責任」とされがちだったが、はたLuckの場合は全体の状況を俯瞰しながら各店舗ごとに適切な打ち手を講じられるのがポイント。今後は「SV pro」のような形で、高度な分析のできる管理者向けダッシュボードの開発も進める。

はたLuckの顧客はショッピングモールに出店している企業も多いため、予定していた全店舗展開の計画が遅れるなど「直近では少なからず新型コロナウイルスの影響も受けている」(染谷氏)そう。一方でスーパーマーケットやドラッグストアなど業界によってはむしろ需要が増えているところもあり、今はそういった業界に絞る形で事業を展開しているという。

中長期的にはアプリから取得できるデータだけでなく、顧客の購買プロセス、売り場づくり、販売方法などに関するさまざまな情報を統合して分析できるデータベースプラットフォームの構築を目指していく計画。並行してSMB向けの機能開発にも取り組んでいく方針だ。

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