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武田薬品からカーブアウトしたファイメクスが約5.5億円調達、タンパク分解誘導剤の研究開発加速へ

タンパク分解誘導剤の研究開発に取り組む創薬スタートアップのファイメクスは5月28日、東京大学協創プラットフォーム開発、ANRI、京都大学イノベーションキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額約5.5億円を調達したことを明らかにした。

同社は2018年に武田薬品工業からカーブアウトする形で創業したスタートアップ。冨成祐介氏(代表取締役)や蒲香苗氏(同取締役 / 共同創業者)らが前職在籍時に研究していたアセットのライセンス提供を受け、現在はがん免疫の領域に特化してタンパク分解誘導剤の研究開発を進めている。

ファイメクスでは2018年4月にもシードラウンドで武田薬品とコスモ・バイオから2.6億円を調達済みで(その後個人投資家などからの調達も実施)、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達となる。

タンパク分解誘導剤は近年世界的にも注目されている創薬技術だ。冨成氏によると「人の体内には2万弱のタンパク質が存在することが知られてていて、そのうちのだいたい1500は疾患と関連することが報告されている」にも関わらず、現時点ではそのうちの300ほどしか薬になっていない。残り1200のタンパク質はというと、既存の低分子や抗体といった方法では標的にすることが困難な「Undruggable Targets(薬を作ることができない標的分子)」とされてきた。

つまり疾患との関連自体は明らかになっているものの、創薬研究が進んでこなかったのだ。

この残された1200ほどのタンパクを「どのように薬にするか」を各企業が必死で考えている状況であり、その技術として期待されているのが疾患の原因や増悪に関わるタンパクを直接分解するタンパク分解誘導剤だ(タンパク分解誘導剤の仕組み自体はファイメクスのサイトに詳しい解説がある)。実際にグローバルではこの領域で数十億円から数百億円規模の資金調達を実施しているスタートアップが複数生まれている状況で、その先駆者的な存在であるARVINASは2018年にNASDAQに上場している。

ただしタンパク分解誘導剤には既存の創薬手法を適応するのが難しく、最適な薬剤をデザインする難易度が高いなどの課題もある。ファイメクスの大きな特徴は最適な化合物を半自動合成によってスピーディーに合成できる基盤技術「RaPPIDS」を有していることであり、その技術によって実際に多くの化合物を合成した上でデータを見ながら評価できる点だ。

通常は合成科学者が合成を行なっていたためそこに多くの時間とリソースがかかっていたところを、ファイメクスでは半自動合成技術によって効率化するとともに迅速化する。また同社自身が薬剤設計の自由度を高める独自の分子を複数保有していて、それをRaPPIDSと組み合わせながら新薬開発のプログラムを進めている状況だという。

同社のビジネスモデルは自社で見つけてきた化合物を製薬企業にライセンスアウトするタイプ(社内プログラム)と製薬企業との共同研究タイプの大きく2つに分かれる。特に社内プログラムに関しては現在3つのパイプラインがあり、最も進捗のいいIRAK-M タンパク質分解誘導剤については非臨床試験の段階まで達している状況だ。

ファイメクスでは今回調達した資金を活用しながらIRAK-Mを軸に複数のタンパク分解誘導剤のプログラムを進めつつ、並行してRaPPIDSの改良などにも取り組んでいくとしている。

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