今月テストしたギア
Rab
MOMENTUM SHORTS
実勢価格:7700円
重量166g、股下22cm(サイズL)
UKブランドらしさが注目を集める
マルチパーパスショーツ!
パタゴニアやザ・ノース・フェイスといったアメリカのブランドは、1970年〜1980年代といった早い段階から日本市場に本格参入したこともあって、日本のアウトドアアスリートにとっては身近な存在であった。一方で、ヨーロッパにも性能の高さがワールドワイドで評価されるアウトドアブランドが存在している。今回紹介するRabもそのひとつだ。
このブランドは、1981年に自らも登山家だったRobert Carringtonが、自らの愛称Rabをブランド名とした寝袋を製造したことからスタート。彼の手作りによるスリーピングバッグは、彼の友人や地元の登山家コミュニティにおいて評判となり、注文が殺到した。1990年代に入ると、寝袋造りで培ったその技術力をアウトドアアパレルへと広げる。創業以来のコンセプトである「登山家により登山家のために開発された、虚飾を排し、過度に機能を付け加えることなく、買い替えるより修理してでも使い続けたくなる、ただ誠実に機能するギア造り」を忠実に守ることにより、21世紀に入ると同ブランドはそのプロダクトラインアップを拡大。世界中の極寒環境、アルパイン登山に特化した高品質のアウトドアウェア、スリーピングバッグ、テント、リュックサック、グローブやゲイターetc.におけるリーディングカンパニーに成長し、UKのみならずヨーロッパを代表するアウトドアギアブランドのひとつに数えられる存在となったのである。
2016年に取材でイギリスのマンチェスターを訪れる機会があり、その際に地元の有力アウトドアショップであるエリス・ブリガム・マウンテンスポーツでショップスタッフのインタビューを行った際に、Rabがザ・ノース・フェイスよりも広い面積で展開されていたことは印象深い。
そんなRabだが、日本市場においては知る人ぞ知る存在で、最も知られているのはマイクロライトジャケットやマイクロライトベストといった軽量ダウン製品。カラダにピッタリとフィットする独自のシルエットのプロダクトは根強い人気となっていた。一方で、ダウンジャケット以外のプロダクトの機能性の高さも徐々に認知され始めており、今回紹介するモーメンタムショーツもそのひとつだ。軽量で伸縮性に優れたストレッチ素材を使用したアウトドアショーツで、サイドポケットと背部中央のジッパー付きポケットを装備するなど、収容能力も高レベル。股下は20cm前後あり、一般的なランニングショーツよりもかなり長めだ。
実際に履いてみると、どちらかいうとスリムなシルエットで、臀部や腿部分にピッタリとフィットするが、走ってみると、生地自体に優れた伸縮性があるので、ストライドを妨げることはない。長めの股下もストレッチがしっかりと効いたファブリックを用いているので、走行中も快適だ。日課の6kmランを終える頃にはうっすら汗をかいていたが、吸汗速乾性能も優れているので、ラン後のストレッチの間に生地の湿気は乾燥していたように、高レベルの快適性を提供してくれた。また、ジッパー付きポケットにスマートフォン(iPhone XR)を入れて走ったが、揺れは最小限で、ランニング中に邪魔にならない点も有難かった。そして、このショーツが一般的なランニングショーツに比してアドバンテージがあると思うのは、前述の通り長めの股下でサイドポケットを有していることから、ランニングシーンだけでなくカジュアルシーンでも活躍してくれること。いかにもランニングウェアといったデザインではないので、ゴルフ、テニス、リゾートシーンといったあらゆるシチュエーションに対応してくれ、1着あると本当に便利なはず。同種の定番アイテムとしてはパタゴニアのバギーズショーツが挙げられるが、ナイロン100%の生地は伸縮性がないのと「バギーズショーツはみんな履いてるからなぁ…」という他人との差別化を図りたいユーザーには、こちらのほうに優位点があり、2020年春夏シーズンにおいて、マルチパーパスに使えるショーツの新たな選択肢となることだろう。
profile : 南井正弘
ランニングポータルサイト『Runners Pulse』編集長。某スポーツシューズブランドに勤務し、『カルトQ』のスニーカー部門チャンピオンにも輝いた実績を持つ。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000124848/
- Source:デジモノステーション
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