<&GP自作部>
最近、アウトドア業界では「ブッシュクラフト」と呼ばれるスタイルが流行っているらしいですね。流行に鈍感な私でも見聞きするくらいなので、アウトドア・キャンプ愛好家の間に定着してきたということでしょう。
さて、そのブッシュクラフトを象徴する道具といえば、やはりカッコいいナイフでしょうか。ナイフ1本でシェルターの支柱を削り、薪を作り、魚や肉を捌いて調理する。気分はロビンソン・クルーソーか、はたまたトム・ソーヤか…。野趣とロマンあふれるシーンです。
旅やアウトドア、日曜大工が趣味と仕事になっている私のガレージにも、たくさんのナイフがあります。旅先の金物屋や古道具屋をのぞくのが好きで、良さそうな品があるとつい買ってしまい、気がつけばナイフだらけになっていました。しかしどのナイフも、どこかの誰かが作ったもの。色々と眺めているうちに、
「これ、自分で作れるんじゃね?」
という考えが頭をよぎりました。そうなると、もうおしまい。どうやったら作れるのかばかりを考えてしまうのが、DIY愛好家の常。
とはいえ、木工DIYは何度もやってきた私ですが、前回「鉄筋焚き火ハンガー」で悪戦苦闘したように、金属DIYの経験はほとんどありません。
そんな素人でも「果たしてナイフを作ることは可能なのか?」
例によってグーグル先生にお伺いを立ててみると、出てくるは出てくるは、巷には金属プレートを削り出し、オリジナルナイフを作るDIYerが大勢おりました。
「これは俺も負けてられないぞ!!」
ということで今回は、金属DIY初心者の私が、初めて自作ナイフに挑戦してみました。
■初めてのカスタムナイフ作りに挑戦!
ナイフ作りに挑戦するぞ! と決めたものの、何から手をつけて良いかわかりません。まずは愛好家のブログなどを参考に、作りたいナイフの下書きを描くことから始めました。
1.まずはデザインを決める!
DIYで作れるナイフは、刃を柄に折りたためるフォールディングナイフと、折りたたまず鞘に収めるシースナイフのどちらか。当然、折りたたみ機構の工作が必要なフォールディングナイフの方が難しいので、ここはよりシンプルなシースナイフでいくことにしました。
“絶海の孤島。荒波の打ちつける岩場で釣った魚をクッキング”
“広大な草原で馬を休めながら干し肉を切り取り一かじり”
“密林の奥深くに眠る古代遺跡の扉をこじ開ける”
使いたいシーンを妄想しながら、最高のオリジナルナイフを考えます。ブレードの形状や柄の握りやすさなど、そのナイフを何に使うかでデザインは千差万別。ネットや専門書にはカッコいいデザインが溢れておりますが、初心者はまずは作りやすさの観点から、なるべくシンプルなデザインにした方が後々の作業が楽になります。これは木工でも同じですね。
カスタムナイフで人気のある主要なナイフ形状の一覧を見ると、キャンプシーンで人気のナイフデザインは、欧米の狩猟文化がベースになっているものが多いです。日本伝統の刃物とは形状が同じところもあれば、違うところもあり興味深いですね。上下に刃がついた両刃のダガーナイフは日本では禁止されていますので、絶対に作らないよう注意してください。
ナイフのラフ画は、柔らかな曲線が多く出てくるので雲型定規を使用。
さてこちらが、今回製作する予定のナイフデザインです。参考にしたのは、カスタムナイフの神様といえるR.W.ラブレス氏の代表作のひとつドロップハンター。ナイフ先端(ポイント)が少し下に下がる形状のドロップポイントで、ハンティングで肉や皮を切ったり剥いだりするときに使いやすいデザインだそうです。
ただ私のデザインでは、緩やかにカーブする形状は工作が難しそうなので、ほぼまっすぐにし、あまりカッコ良くはありません。まあ最初ですから、無理はせずってことです。
完成したデザイン画のコピーを厚紙に貼り付けカッターナイフで切り抜けば、ナイフデザインの完成です。この段階で手に馴染むかなど確認しましょう。切る動作などやってみると気分も盛り上がってきますね。
2.ナイフ作りに必要な工具と材料を揃える
デザインが完成したら、いよいよ工作開始です。しかしその材料や工具は何が必要なのか? 木工ならどこのホームセンターのどの売場へ行けば良いかすぐにわかるのですが、今回は勝手が違います。そこで再びグーグル検索。
行き着いたのがナイフDIY愛好家向け専門の「Matrix-AIDA」。サイトには初めて見る工具やカッコいい完成品の写真が多数掲載されワクワクします。
サイト内では工具も多数扱っているようですが、かなりの部分は木工用の工具で代用できそうで安心しました。所有する電動ドリルやディスクグラインダーの刃などを金属用に変更するのは近場のホームセンターで十分です。その他必要な工具は、大きめの万力、金ノコ、ヤスリなどでした。
次に材料ですが、ナイフ用のステンレス製鋼材が多数取り揃えられています。
ステンレスとは、それで一種類の金属だと思っていたのですが、実はいくつかの金属を混ぜ合わせて作られた合金で、配合の具合で100種類以上のステンレスが流通しているそう。
ナイフショップのサイト内だけでも10種類以上あるようで、どれを選んでいいのやらと困っていたら、「初心者向け材料スターターセット」という、まさに私向きなものが販売されていました。
セットの内訳は
1.鋼材 440-C (3x30x250)。
2.加工済ヒルト(ニッケルシルバー)
3.ニューボルト(真鍮+SUS)
4.段付きドリル
5.ひも穴用パイプ 外径7mm
6.カシメピン 2mm(ニッケルシルバー)
7.ヒルト用接着剤(MX-98)
8.ハンドル用接着剤(MX-91)
ステンレス鋼材はもちろんのこと、金属用の接着剤やブレードと柄を固定する専用ネジなど、初心者が見落としがちなパーツがすべて揃っていて価格は円。早速このセットの購入を決めました。
ちなみにセットに付属の鋼材は、SUS440-Cというステンレス。SUS440-Cは、錆に強く、粘りと強さがあり、カスタムナイフの材料として非常に人気の鋼材なのだそうです。
3.ステンレス鋼材を粗く切り出す
発注して数日、我が家にナイフ材料がやってきました。いよいよ工作開始。まずは届いた鋼材に私がデザインしたナイフの型を貼り付けてサインペンでラインを引きました。
本来のドロップポイントのブレードはもっとカーブが強いのですが、鋼材の直線部分にフィットするようデザインしたのでカッコ悪い。まあその分カットするときに楽なのです。
次にステンレス用のドリルをつけたインパクトドライバで、サインペンのラインに沿って穴を開けていきます。この時に気をつけなければならないのが、穴を開ける位置。サインペンのラインより内側はナイフになる部分ですので、その部分に穴を開けてしまうとナイフが小さくなってしまうのです。
しかし金属に穴を開ける作業は難しく、ドリルの刃が滑って位置がずれることも多いのです。本来なら少し外側に刃を当てるのが正解なのですが、あとの切削作業を楽にしようと、ついついラインぎりぎりを狙ってしまい、失敗した穴も多数。あまり内側に入ってしまうと、小さくなるだけでなくデザインそのものも変わってしまうので注意しましょう。
穴あけが終わったら、その穴を手掛かりにステンレス用金ノコで切断。はっきり言って鋼材はかなり硬く体力と忍耐力が必要な作業なうえ、この辛い作業で得られる成果はギザギザのナイフに見えなくもない金属の塊程度なので、モチベーションはまったく上がりません。
しかし、この作業なしでは手作りナイフはできないのですから、耐えて頑張りましょう。一つアドバイスするとすれば、いい金ノコの刃を使うことです。明らかに所用時間が変わります!
さあ、こちらが私のオリジナルナイフ第一号(のベース)です。まだまだカッコ悪いですね。ここから形を整え、磨き上げていきますので、次回をお待ちください!!
写真・文/阪口 克
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/297945/
- Source:&GP
- Author:&GP