デジモノステーションに関わる識者やスタッフ陣はモノへのこだわりは人一倍強い。なぜ彼らは数多あるものからそれらの逸品を選んで使っているのだろうか? そこには目利きとして、どうしても譲れない想いや選ぶに至ったストーリーがそれぞれある。表面的な価格などに左右されず、選ぶべき人に選ばれた逸品。真に「安くていいもの」とは、彼らのように永きに渡り、これしかないと愛し、使い続けられるからこそ生み出されるのだ。ここに登場する逸品たちのように、ぜひ読者諸兄にも自分だけの偏愛的逸品を見つけてほしい。
GenreStationery
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Name :
山﨑真由子
Occupation :書籍編集・物書き
1971年東京生まれ。大学卒業後、雑誌編集業に従事。フリーランスの編集者として食、酒場、筆記具、カメラ、下町、落語などモノとヒトにまつわる分野での仕事多数。近著に『職人の手』(アノニマ・スタジオ)
自己満足を、究極までに
昂めてくれる……ペンが好き
ペンと紙があれば、生きていける……というキャッチを掲げた『ときめく文房具図鑑』という書籍を著したほど筆記具が大好物です。使う際に“少々手がかかる”モノに魅かれる傾向が強く、万年筆はその筆頭選手。好みの万年筆は、第一に「吸入式」であること、第二に「ペン先はB(太字)以上」であること。吸入式とはボトル内のインクをペン先から吸い上げ、万年筆内部にインクを補充する形式で、インクを吸うごとに内部をクリーニングするという、理にかなったスタイル。使い方は省略しますが、一連の所作を経て“書く”という行為に没頭する———これぞ至福の時間なのです。B以上のペン先ならば、“ヌラヌラ〜”となめらかな書き味の可能性がUP。素材はしなやかな「金ペン」がマストです。
なかでもヘビーユースがこの2本。カスタム「823」は、パイロット最大の“コース”というペン先を。カタログではF、M、Bのみですが、伝説の研ぎ師・森山信彦さんの万年筆専門店「フルハルター」の別注でした。太さは3Bといったところですが、森山さんに“4B”程度にまで研ぎ出してもらっています。ペン先の腰もやわらかく、気持ちのいい筆記が絶妙。さらにはプランジャーという独自の吸入方式で、ジュポッと大量にインクを充填できるのも魅力。12年ほど愛用しているでしょうか。
対して、ペリカン「M101N」は1937年に発売された名モデルの復刻版。キャップとボディとの黄金比がお見事で、かなり小ぶりながらもバランスよし。元祖のM101と比較すると、ややチープ感は否めませんが、勝手がよく、購入してからの3年、毎日使っています。ペリカンデビューには定番「スーベレーン」よりも、こちらをおすすめします。
最後にガラスペンを。昨年10月に98歳で亡くなられた、ガラスペン職人・菅清風さんによるもので4年前に入手。ほかのガラスペンと異なり、清風さんは非常に硬い“硬質ガラス”を用いるため、ペン先の磨耗がありません。“ねじる”ことで編み出された螺旋が美しく、ずっと眺めてはうっとりと。そう、筆記具は、つねに自分の視界に入ります。なので、見えて昂ぶるものを欲しているようです。
- No.57
- Product Name :M101N トータスシェルレッドType: 万年筆
Brand: Pelikan
Price: 5万4000円
- No.58
- Product Name :カスタム 823(コース)
(フルハルター特別仕様)Type: 万年筆
Brand: PILOT
Price: 3万円(購入時価格)
- No.59
- Product Name :硬質ガラスペン 93流れType: ガラスペン
Brand: 菅清風
Price: 1万6500円
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000124419/
- Source:デジモノステーション
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