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SNSは民主主義を守らなければならない、たとえ相手が大統領でも

「郵便投票に関する事実を見る」というなんでもない青いラベルから始まった。

先月、ドナルド・トランプ米大統領は、郵便による投票は不正を招くという事実無根の主張を繰り返しツイートした。これに対してTwitter(ツイッター)は、「市民の清廉性」と新型コロナウイルス関連の誤情報に関するポリシーに従ってファクトチェックを行い、主張が間違っていることを示すラベルを添付した。すると、トランプ大統領はソーシャルメディア企業を閉鎖に追い込むと脅しをかけてきた

これに続き同社は、警察官による暴行に関する大統領のツイートのひとつに対して、暴力を美化していることを根拠に、閲覧前に警告文を表示してツイートを隠す措置(The Guardian記事)を採った。すると大統領は、法的強制力がほとんどない大統領令を発して(Vox記事)ソーシャルメディア企業を黙らせようとした。米国時間6月8日、Facebook(フェイスブック)もこの喧嘩に巻き込まれ、同社の従業員はトランプ大統領の投稿に対する会社の無作為に抗議してバーチャルストライキを実施した。

トランプ大統領によるソーシャルメディアへの投稿は、しかし、主に米国内の黒人コミュニティーを標的とした有権者抑圧(The Guardian記事)や抗議者への暴力(Smithsonian Magazine記事)といった長く忌まわしい歴史の中の、つい最近の一要素に過ぎない。総合するに先週の出来事は、ソーシャルメディアがこうした民主主義への攻撃の最前線になったという厳然たる事実を、そしてデジタル偽情報への対処には、やるべきことがまだ山積みであることを浮き彫りにした。

暴力を美化するとの理由で大統領のツイートを非表示にしたTwitterの判断は、大きな注目を集めた。問題のツイートに含まれていた「略奪が始まれば銃撃が始まる」という一文は、そもそも1960年代に黒人が多く住む地域での攻撃的で差別的な警備方針で知られたマイアミの警察署長が言い出した言葉(NPR記事)を元にしている。しかし、抗議活動の参加者は「プロが統率している」とか「ANTIFAが率いる無政府主義者たち」といったトランプ大統領のツイートは、略奪や暴動はANTIFA(アンティファ、米国の反ファシズム運動)の活動家が組織しているという噂を広めることになったのだが、Twitterはどちらの投稿にもラベルを付けたり、非表示にしたり、削除したりはしなかった。同様の投稿がなされたFacebookも一切関与しないことを決めた。

同じく、Twitterがトランプ大統領の「不正投票」の偽情報にラベルを添付したことは、新たな進展だ。先週の火曜日に投稿されたツイートは、Twitterがトランプ大統領の発言にファクトチェックを行った最初のものとなった。もっとも、トランプ大統領はそのずっと以前から似たような主張を繰り返しているのだが。

ちょうど1週間前、ミシガン州とネバダ州の州務長官が郵便投票の範囲を広げようと違法な不正行為を働いたとの偽情報をツイート(NewYork Times記事)し、各州に補助金を削減すると脅しをかけた。大統領はまた「郵便による投票は『大量の不正と悪用』を、そして『偉大なる共和党の終わり』を招く」とFacebookに投稿した。郵便による投票と不正との間に関係性がなく、郵便投票がどちらかの政党に有利に働いたという証拠も一切ない(NewYork Times記事)にも関わらずだ。これに関しては、TwitterもFacebookも行動を起こさなかった。

新型コロナウイルスのパンデミックの最中に、郵便投票の信用を落とそうとデジタル偽情報を流すトランプ大統領の意図は、主に彼の選挙キャンペーンにおける投票者抑圧の歴史に関連している。2016年の大統領選挙に向けた準備期間中、トランプ大統領の選挙事務所のある上級幹部が「3つの大掛かりな投票者抑圧作戦が進行中だ」と口頭で漏らした(Bloomberg記事)ことがある。その一環として、同選挙事務所はFacebookの「ダークポスト」を利用した。特定のユーザーにしか表示されない投稿だ。

主に黒人の有権者をターゲットに選挙当日は家に留まるよう働きかけた。不気味なことに、これはソーシャルメディアを使ったロシアの選挙妨害工作(Brennan Center記事)と同調していた)。2020年の大統領選挙に向けて、トランプ陣営と共和党は、郵便投票を制限する大規模なキャンペーンを計画して(Washington Post記事)いる。政治的プロセスへの信用の低下を目的に不正投票に関する偽情報を流しているのは、この戦略の一部だ。

TwitterとFacebookの暴力と市民参加に関するポリシーは、少なくともソーシャルメディア上でのこれらの問題への対処にいくぶんか近づいてはいる。どのプラットフォームも、暴力の美化や奨励を禁じている(TwitterのGlorification of violence policy)。そして双方プラットフォームで(Forbes記事)では、いつ、どこで、どのように投票するかに関する間違った情報を含むコミュニケーションも、投票を妨害する有償広告も禁じている。

ところが、こうしたポリシーはこれまで公平に適用されてこなかった。どちらの企業も、これまで大統領の投稿内容の審査をしたことがなかった。特にFacebookは政治家の投稿を明示的にファクトチェックから除外したことで批判を浴びている。トランプ大統領の最近の危険な投稿に何も手を打たないことは、Facebookのポリシーが流動的である証拠だ。それが6月8日のストを招き、公民権活動のリーダーたちの非難を浴びる結果(Axios記事)となった。

TwitterもFacebookも、市民参加と暴力に関するポリシーは、デジタル偽情報の影響に対する一般からの圧倒的な抗議に応える形で導入している。たとえ合衆国大統領であっても、そこから免除される者がいてはならない。Twitterはこれを踏まえ、大統領の危険なツイートをファクトチェックし非表示するという小さな一歩を踏み出した。だが将来的には、TwitterもFacebookも、それぞれのポリシーの適用に一貫性を確保していく必要がある。たとえ、権力者に適用する場合においてもだ。

【編集部注】この記事は3人の著者の共著だ。Margaret Sessa-Hawkins(マーガレット・セッサ=ホーキンス)は、MapLight筆者であり、インターネット上の不正な政治的メッセージの影響を追求するジャーナリスト。Ann M. Ravel(アン・M・ラベル)はMapLightデジタル偽装プロジェクトのディレクターであり、連邦選挙管理委員元会議長。Hamsini Sridharan(ハムシニ・スリダラン)はMapLightプロジェクト・ディレクター。

画像クレジット:Blake Callahan / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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