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AppleのApp Store全体における2019年売上は約56兆円

米国の監査当局による独占禁止の調査が厳しくなっている(Axios記事)最中に、Apple(アップル)はApp Storeエコシシテムについての最新情報を発表した(Appleリリース)。通常、同社はWWDCキーノート中にApp Storeに関する数字を発表するが、米国6月15日にApp Storeエコシステムにおける2019年の売上は5190億ドル(約56兆円)だったと明らかにした。これまで発表されてきた数字よりも広範を網羅した数字であり、Appleが手数料を取るものだけでなくApp Storeが絡む全決済を含む。

Analysis Groupのエコノミストが実施した調査は、App Storeエコシステムを完全分析しようという初の試みだ。App Storeエコシステムは今や200万近くのアプリを扱っている。App Storeは2008年に始まり、毎週175カ国の5億人が利用する。ユーザーはこれまでに合計で何千億回もデバイスにアプリをダウンロードした。一方、Apple Developerエコシステムは2300万人のデベロッパーをサポートしている。

調査では、App Storeで行われる決済も調べている。これまでにデベロッパーに1550億ドル(約16兆6000億円)を直接支払ったとAppleは発表したが、その額は物理的な商品やサービスといった他のソースからの売上を含めたときの総額の「ごく一部」と調査は位置付けている。

言い換えると、例えばTargetやBest BuyのiOSアプリで買い物したときのようなApp Storeを通じた小売売上高の数字も調査では考慮されている。ここにはUberを予約したり、DoorDashやGrubhubで料理を注文したりしたときの売上高も含まれている。

Appleはデジタルの商品やサービスに関連する売上からのみ手数料をとっているため、「総額5190億ドルの85%超がサードパーティーのデベロッパーやあらゆるサイズの事業者に渡っている」と調査は指摘している。

5190億ドルの内訳を説明しよう。

物理的な商品やサービスの売上高の割合が最も大きく、4130億ドル(約44兆3000億円)と推計している。Mコマース(モバイルコマース)アプリが売上の大半を生み出し、中でも小売が2680億ドル(約28兆8000億円)で最大だった。小売部門にはTargetのような実在店舗やEtsyのようなバーチャルマーケットプレイスが含まれるが、グローサリー配達サービスは対象外だ。

他の上位Mコマースアプリとしては、ExpediaやUnitedのような旅行アプリがあり、570億ドル(約6兆1000億円)だった。UberやLyftの配車サービスアプリの売上は400億ドル(約4兆3000億円)で、GrubhubやDoorDashなどのフードデリバリーアプリは310億ドル(約3兆3000億円)だった。グローサリー配達はわずか140億ドル(約1兆5000億円)だったが、ただしこの調査は2019年新型コロナウイルス(COVID-19)前のデータに基づいている。

一方、デジタルの商品やサービスの売上高は2019年に610億ドル(約6兆5000億円)だった。ここには音楽やビデオのストリーミングサービス、フィットネス、教育、電子書籍、オーディオブック、ニュース、雑誌、デートなどのアプリが含まれる。ゲーム部門はデジタル商品、サービスの部門で最大だが、610億ドルにおけるゲームや他のアプリの割合についてはこの調査では明らかにしていない。Appleがゲーム、音楽ストリーミングサービス、ビデオストリーミングサービス、オーディオブック、電子書籍、サブスクニュースサービスを扱っていることを考える、サブカテゴリーデータの欠如は興味深いものだ。

アプリ内広告の売上高は450億ドル(約4兆8000億円)でその44%である200億ドル(約2兆1000億円)はゲーム内広告によるものだった。アプリ内広告で相当な売上をあげているゲーム以外のアプリは、大体がTwitterやPinterestのように無料のものだが、一部のアプリは MLB.comやThe New York Timesのようにサブスク型だと調査にはある。

この調査結果発表のタイミングは偶然の一致ではない。

Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)、そしてFacebook(フェイスブック)とともに、米下院の独禁法調査委員会は司法委員会のテック企業の競争証明の一環として、アップルに証言するようにプレッシャーをかけているというAxiosが最近報じた。テック大企業4社のうち、アマゾンだけが議会証言に応じることを明らかにしている(The Washington Post記事)。

これに関しては、アップルは反競争的なアプリマーケットプレイスを運営していると非難されてきた。そのアプリマーケットプレイスでは自前のサービスがライバルと競争を展開している。これらの競合相手はアップルにApp Storeでの決済手数料を払わなければならない。アップルはまた、Epic Games Storeのように他のアプリがアプリ販売することを認めていない(AppleInsider記事)。OSをしっかり統合できる似たようなプロダクトを立ち上げ、競争相手を一掃するために有利な立場を利用している。例えばアップルは紛失したものを探し出すAirTagを今後リリースする予定だが、同社はファーストパーティーであり、この事実は現在この分野をリードしているTileよりも有利に働く。

そうしたことから、この調査の視点がアップルがいかにデベロッパーに恩恵をもたらしているかというところから、App Storeでは事業決済が自由に行われていることを強調するものへとシフトしようとしていることが明らかだ。いわばAppleが関わることなく業界が何十億ドル(何千億円)も生み出しているという絵を描いている。

しかしこれは、アップルの手数料を回避するために事業所が取らなければならなかったすべてのワークアラウンドを無視している。

例えばアマゾンは何年もの間、電子書籍やオーディオブック、最近ではビデオを購入できるウェブへとユーザーを誘導してきた。Spotify(Spotifyリリース)やNetflixを含む多くのトップデベロッパーは「Apple tax」を回避するためにアプリから「アプリ内ユーザー登録」をなくした(未訳記事)。結果として、ときに購読者の減少につながることもある。

調査では、こうしたワークアラウンドはデベロッパーの「選択」とみなしている。

5190億ドルの地理的分布を調べているという点でも、この調査は注目に値する。例えば中国が2460億ドル(約26兆4000億円)なのに対し、米国は1380億ドル(約14兆8000億円)だ。そして欧州の510億ドル(約5兆5000億円)、日本の370億ドル(約3兆9000億円)が続き、その他の国の合計は470億ドル(約5兆円)だ。

2019年のApp Storeに関するこの調査は新型コロナパンデミックの最中に発表され、パンデミックにより2020年以降はかなり異なる数字になることが予想される。

「App Storeは、世界で最も安全で活気のあるアプリマーケットプレイスだ」とアップルはニュースリリース内でいう。「あらゆる年齢のさまざまなバックグラウンドを持ったクリエイターやドリーマー、学習する人に、明るい未来やより良い世界を構築するために彼らが必要とするツールや情報を提供している」と述べた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:Mizoguchi

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