米国ニューヨークを拠点とするVCであるFirstMark Capital(ファーストマークキャピタル)は米国6月16日、2つの投資ビークルのクロージングについて発表した。同社のポートフォリオには、Shopify、Riot Games、Pinterest、Airbnb、InVisionなどが含まれる。
FirstMark VはシードおよびシリーズA投資を対象とする3億8000万ドル(約400億円)のアーリーステージのファンドであり、FirstMark Opportunity IIIはポートフォリオ企業への追加投資とグロースステージの投資に特化した2億7000万ドル(約290億円)のビークルだ。FirstMarkの投資ビークル全体で管理する総資産は22億ドル(約2400億円)に上る。
FirstMarkの投資チームは5人のパートナーで構成する。Rick Heitzmann(リック・ハイツマン)氏、Amish Jani(アミシュ・ジャニ)氏、Matt Turck(マット・ターク)氏、Beth Ferreira(ベス・フェレイラ)氏、Adam Nelson(アダム・ネルソン)氏だ。
FirstMarkはニューヨークのエコシステムのみに絞っているわけではないが、 取引の少なくとも半分は東海岸で行われ、特にニューヨーク、ボストン、トロント、オタワ、フィラデルフィア、ワシントンD.Cなどの東海岸沿いのテクノロジーハブに重点を置いている。
同社は新型コロナウイルスのパンデミックによって追い風を受けた業界に早めの賭けをいくつか行った。ヘルスケア(Kinsa、Parsley Health)、ゲーム(Discord、Riot Games)、エンタープライズワークフロー(InVision、JustWorks、Pendo、Guru)、自動化(Ada、nextmv、Hyperscience)などだ。これらの分野で投資機会を引き続き探しているが、特に医療技術とゲームに力を入れる。
ゲーム業界には大きなチャンスがあるものの、プラットフォーマーと製作会社が大きな力を持っているため、割って入るのは難しそうだ。それでも、パートナーのジャニ氏は、業界内の勢力が分散しつつあると考えている。
「UnrealやUnityが現れる前の世界について考えてほしい。その頃はゲームエンジンを含め、すべてを開発する必要があった」とジャニ氏は語った。「結局その部分は独立した機能になった。ストリーミング用のゲームインフラサーバーもそうだ。コミュニケーションについて考えるとき、Discordはゲームにおけるオーバーレイメッセージングフレームワークの大部分を占めている。それも1つのレイヤーとして独立したようなものだ。市場が膨らんで非常に大きくなるにつれ、ゲームの多くの要素がバラバラになってきた。我々は確かにツルハシとシャベルを信じている(最終製品市場ではなくそれを作り出すのに必要な道具やインフラに投資する戦略)」。
同社はまた、Brooklinen、Airbnb、Roなど、D2Cでいくつか大きな勝利を収めている。「一般的に、D2Cは規模を追うかニッチに行くかのいずれかになる傾向がある」とジャニ氏は述べる。「サプライチェーンがある程度差別化されており、自らの力で成長できる本当にユニークなブランドを見つける必要がある。多くの場合、その条件を満たすのはコマースエクスペリエンスを提供できる非常に大きなコミュニティからなる組織だ。購買という行為は、何かを単に買うことでなく、ブランドが提案するライフスタイルや体験、その周辺にあるコミュニティを共有することだ」。
場合によってはAirbnbのように、規制の変更が絡むこともある。
FirstMarkは単に小切手を切るだけでない。ポートフォリオ企業を育成・成長させる包括的なアプローチを取っている。その基盤となるFirstMarkプラットフォームは「人材ネットワーク」「企業ネットワーク」「専門家ネットワーク」で構成されている。
専門家ネットワークは、GitHub、Grubhub、Looker、Cloudera、Twilio、Zendesk、Cloudflare、Mailchimp、PagerDutyなどの企業のCEO、CTO、CRO、CMOが率いる100以上のイベントで構成されている。人材ネットワークは、専門家ネットワークと有機的に結びついている。スピーカーとして参加してもらったり、CXOや独立の立場としての役員、場合によっては創業者としてFirstMarkのポートフォリオ企業に加入することもある。一方、企業ネットワークは、ポートフォリオ企業が大企業と取引を行う支援をする。
FirstMarkプラットフォームの戦略の一環として、データ、デザイン、エンジニアリングに関する複数の公開イベントのシリーズも実施している。
同社はまた、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏事件の抗議行動とより広範なBlack Lives Matter運動を受け、パイプラインとポートフォリオを多様化する使命も持つ。2019年以降、FirstMarkの取引の半分は、女性や有色人種の創業者など、白人男性以外に関わるものだった。ただし、「過小評価されている」創業者はFirstMarkのポートフォリオ85社の約3.5%を占めるにすぎない。3社だけが黒人またはラテンアメリカ系の創業者だ。
ジャニ氏はTechCrunchに、ポートフォリオにおける真の多様化はパイプライン段階での測定から始まると説明した。資金を提供する多様性ある創業者の数や彼らに投資された金額だけではない。これはBLCK VCのSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏の思いとも一致する。同氏は最近TechCrunchに対し、ファンドがもっと包摂的になるために取りうる行動が何かについて語った。ネットワーク効果のサイクルを打破し、VCが多様性ある創業者に資金を拠出する流れを作るには、資金調達プロセスの最上流まで含めて測定する必要があると述べている。
同社は、VC業界における人種差別問題全般に対処するため、週1回の常設タスクフォース会議を設置し、多様性ある創業者が「ドアに入り込む」にはどうすればよいのかについて社内でより深く考える機会を設けた。ドアの先にはさまざまなスタートアップが机を用意し、ゆくゆくはその数を1%に伸ばす。
ジャニ氏はまた、熟考の末、FirstMark CapitalがJuneteenth(米国の奴隷解放記念日)を休日とするのではなく、会社の従業員がコミュニティにボランティアやメンターなどの形で恩返しをする奉仕の日にすると決定したとも述べた。
画像クレジット:FirstMark Capital
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(翻訳:Mizoguchi)