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ツアラーの特性も光る!マツダ「ロードスターRF」は世界でも稀有なスポーツカー

4代目となるND型「ロードスター」のデビューから約1年遅れとなる2016年3月に発表されたマツダ「ロードスターRF」。リトラクタブル(格納式)ハードトップを備える“ファストバックスタイルのロードスター”としてデビューを飾りました。

ソフトトップ車が1.5リッターエンジンを採用するのに対し、ロードスターRFは2リッターエンジンを搭載。また、走りに関連するメカニズムにも変更を加えるなど、独自のキャラクター作りに取り組んでいます。

そんなロードスターRFもデビューから4年が経過。ほぼ毎年の商品改良で品質向上を図るのが昨今のマツダ車の特徴ですが、果たして最新モデルはどのような成長を遂げているのでしょうか?

■誕生からの4年間で中身が大幅に進化

リトラクタブルハードトップと2リッターエンジンを採用したロードスターRFも、登場から4年が経過。オリジナルのソフトトップ車ほどではありませんが、街中で遭遇する機会も増えてきました。

とはいえ、販売面での主流はもちろんソフトトップ車ですし、ラインナップやヒストリーから見てもRFは変化球的な存在であるのは事実でしょう。しかし、改めて接してみると、RFには独自の個性が備わっていますし、侮れない魅力を秘めていることに気づきます。ということで、まずはRFの主な変遷をおさらいしてみましょう。

・2016年3月:ニューヨーク国際自動車ショーで発表

・2016年12月:日本での発売を開始。2リッターエンジン(158馬力)や約13秒で開閉可能な電動リトラクタブルハードトップを採用

・2017年11月:商品改良で先進安全技術“i-ACTIVSENSE”を採用(一部グレードはオプション)。3色の新ボディカラー採用

・2018年6月:商品改良でi-ACTIVSENSEの多くの装備を標準化したほか、テレスコピックステアリングを採用。エンジンも出力を向上(184馬力)

・2019年11月:商品改良で“アドバンス・スマート・シティ・ブレーキ・サポート”に夜間歩行者検知機能を追加。新ボディカラーを追加したほか、本革素材の質感向上を図る

というのが、デビューから今日までの主な改良ポイントですが、中でも大きなトピックは、2018年に行われたエンジンなどメカニズム面のバージョンアップでしょう。

その内容は、吸気・排気系やシリンダーヘッドの見直しに加え、ピストンやコンロッドなど回転系部品の軽量化にまで及んでおり、最高出力は26馬力アップの184馬力、最大トルクは0.5kgf-mアップの20.9kgf-mとなり、最高回転数も6800回転から7500回転へと引き上げられています。

一方、ボディサイズはデビュー時から変わりなく、全長3915mm、全幅1735mm、全高1245mmを維持しています。また車両重量も、1100kgと変更はありません。

ちなみにソフトトップ車の「RS」グレードは、全長3915mm、全幅1735mm、全高1235mmで、車重は1040kg(“i-ELOOP・i-stop”付き)。エンジンは最高出力132馬力となっています。

■往年の名車を思わせる個性的ルックスは健在

久しぶりにドライブへと連れ出したロードスターRFは、ビルシュタイン製ダンパーやフロントサスタワーバーを備える頂点グレード「RS」。さらに、オプションのブレンボ製対向4ピストンキャリパーとBBS製鍛造アルミホイールも装着(セットオプション33万円)した、まさに“全部盛り”仕様です。

そんな仕様に少々身構えながらコクピットに収まりますが、ドアを閉めて真っ先に感じるのは、ソフトトップ車とは異なる密閉感でしょう。構造的にはRFもルーフ部分が開いていますが、素材によるたわみや伸縮がない分、クーペと変わらない包まれ感があります。オリジナルであるソフトトップ車の名誉のためにいえば、ソフトトップの仕立てや耐候性は文句のつけようがありませんし、屋根を開け放った時のパノラマ感はRFでは得がたい魅力といえるでしょう。一方、ル・マン24時間耐久レースなどで活躍した“コブラ・デイトナクーペ”や、悲運のエーシングカーである“ビル・トーマス・チーター”を思わせる、美しくも独特なルーフラインとプロポーションはRFのチャームポイントだと思います。

街中へと歩みを進めてからも、強く感じるのはハードトップによる遮音性や快適性で、いわれない限りルーフの開閉機構を備えているとは気づかないかもしれません。また、機構的には複雑ではあるものの、大き目の段差を通過するようなシチュエーションでもルーフからきしみ音が生じるようなことはありません。マツダ車は商品改良に合わせ、細かくパーツの仕様変更を行うことも少なくありませんが、ドアの開閉フィールなど細部のタッチも、デビュー当初よりクオリティが向上している印象です。

走りもソフトトップ車とはやや異なっており、RFは全体的に寛容なキャラクターに仕立てられています。元々1.5リッターエンジンより出力的に余裕がある2リッターエンジンですが、商品改良で得た26馬力のエクストラと全域でのトルク向上は、さらなる走りの余裕に振り向けられているようです。

■ソフトトップ車よりパンチのある加速

ロードスターRFは、2速、3速からの加速でソフトトップ車より明確にパンチのある加速を披露しますが、両者の違いが明確に現れるのは、流れに乗った街中や高速道路かもしれません。例えば、高速道路での追い越し加速など、1.5リッターではややもどかしく感じるようなシチュエーションでも、右足の動きだけで不満を解消できるといえば、違いをお分かりいただけるかもしれません。

とはいえ、高回転域まで軽やかに吹け上がるのが1.5リッターエンジンの大いなる魅力ですから、シフトダウンして快音に耳を傾けつつ、美味しいところを存分に味わうというのが正解でしょう。一方、最新のRFはちょっと横着しても右足に力を込めればOKですし、回転フィールも全体的に滑らかですから、そのままのギヤで息の長い加速を味わう、という楽しみ方もキャラクターに合っているといえそうです。

さてロードスターの本懐は、オープンエアの楽しみと、持てるポテンシャルを可能なだけ引き出して走らせる、というところにあるのは事実でしょう。そのコンセプトにシンパシーを感じるファンから見れば、ロードスターRFはラインナップやヒストリーの本流ではない、ニッチな存在かもしれません。しかしスポーツカー界全体で見れば、ツアラー的な性格を備えたコンパクト2シータークーペ、さらに屋根も開くという、これまた稀有な個性を有した1台であることに気づきます。そう考えると、ロードスターRFは俄然、存在意義が際立ちますし、ソフトトップ車とは少々異なる走りのキャラクターと進化の方向性も、道理にかなっていると思うのです。

<SPECIFICATIONS>
☆RS
ボディサイズ:L3915×W1735×H1245mm
車重:1100kg
駆動方式:FR
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:184馬力/7000回転
最大トルク:20.9kgf-m/4000回転
価格:390万600円

文&写真/村田尚之

村田尚之|自動車専門誌やメーカー広報誌などを手掛ける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや飛行機、鉄道など、乗り物関連の記事を中心に執筆・撮影。そのほか、カメラやホビーアイテムの取材・執筆も得意とする。

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