Matt Saincome(マット・サンカム)氏は、我々がTechCrunchによく書いているスタートアップの買収案件と比べて、ウェブサイトを100万ドル強で売った(大部分を現金で、株式はわずか)話などたいしたことではないと知っている。
「でも、パンク風刺メディアとしてはどうだろう? 」と彼は言う。同氏は自虐的な物言いが好きだが(そもそも彼はパンクロック風刺ニュースサイトの共同創業者兼CEOである)、自身がThe Hard Times作り上げたものを真の誇りだと思っているようにも見受けられる。外部の資金を調達したことはなく、過去にも買収提案はあったが、同氏は常に、そのことでサイトの意見が影響を受けることを恐れていた。
「これまではいつも自分が財政面の後ろ盾になっていた」とサンカム氏は言う。しかし、ある時からそれを「無責任だと感じ始めた」そうだ。そこで同氏は、彼自身と共同創業者で編集長のBill Conway(ビル・コンウェイ)氏をはじめとする編集スタッフがちょっとした安定収入(および医療保険と福祉も)を、受取りフリーランサーたちへの支払いも増額できるようになったことを喜んでいる。さらに同氏は「The Hard Timesは、この買収によってポッドキャストネットワークの構築など編集方針戦略に本格的な投資ができるようになるだろう」と説明する。
「The Hard Timesが好きな人にとっては、これからはThe Hard Times強化版になる」と同氏は言う。「方針は今までと変わらず、もっと良く堅牢になる」。
買収する側のProject M Group(プロジェクトMグループ)は、2016年に設立されたデジタルメディアとEコマースの会社で、ほかにRevolver Magazine(リボルバー・マガジン)と Inked Magazine(インクト・マガジン)も買収している。
Project Mモデルについて、創業者兼CEOのEnrique Abeyta(エンリケ・アベイタ)氏は「我々は、既存のメディア企業を視聴者とともに買収し、再活性化、再スタートさせたり資金を投入して視聴者を拡大する。そしてそれを、垂直統合されたEコマースプラットフォームに結びつけていく」と語る。
多くのオンラインメディアが、デジタル広告モデルの運用に苦労しているのは周知の事実だ。例えば、Revolverがヘビーメタルとロックに、Inkedがタトゥーに焦点を合わせていることを考えれば、Metallicaに関する記事を読んでいる読者はMetallica Tシャツも買いたくなるかもしれない。
アベイタ氏は、Project Mが買収するメディアの信頼性と買収後にも企業っぽくならないことが重要であることも強調した。「私はアリゾナ州ケーブクリークの自宅で会社を経営しているタトゥーを入れたモヒカン刈りの男だ」と彼は言う。「われわれは地球でいちばん企業っぽくない存在だ。起業家と組むのは、起業家とそのブランドと一緒に仕事をしたい気持ちが強いからだ」と説明する。
そういうわけで、サンカム氏をはじめとするHard Timesチーム全員が買収後も仕事を続ける。ちなみに同サイトの元の親会社はゲームとテクノロジーサイトのHard Driveの運営を継続する。同氏は、フリーランサーのための支払いツールを作っているOutVoiceの経営も続けると語った。ちなみに、買収契約の成果のひとつとして、Project M傘下の全メディアがOutVoiceを使用することになった。
「Hard Timesにおける私の役割は、ビジョナリーかブランド作り担当のような立場だ」と同氏。それで日常業務の問題を心配する時間とエネルギーが大幅に解放されるはずであり「そのエネルギーをOutVoiceにつぎ込む」と同氏は約束した。
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画像クレジット:The Hard Times
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )