世界初の技術を製品化
ノッチ不要を貫き通す
Vivoの名前は海外スマホを好きな人にはおなじみだが、日本では全くの無名と言えるメーカーだ。世界のスマホの出荷台数ではシャオミ、OPPOと共に、4位グループを形成。この3社は毎四半期ごとに4位、5位、6位の座が入れ替わるほど激戦を繰り広げている。
シャオミは高コスパを売りに成長し、最近は1億画素カメラスマホを出すなどカメラにも強いメーカーになった。OPPOは価格競争よりもブランドイメージを大切にそだて、若い世代への浸透を図っている。そしてVivoは世界初のスマホを次々と出すことで、先進的メーカーというアピールを怠らない。
2018年6月、フロントカメラを廃止した世界初のスマホ「Vivo NEX」の登場は世界をあっと驚かせた。今では中国メーカー各社が採用している、フロントカメラを親指大の小型サイズとして本体に収納、使用するときだけモーターでせり上げる構造を採用したことで、スマホのディスプレイ全体を表示エリアとして使うことができる。アップルがiPhoneのディスプレイに大きな欠き取りのある「ノッチ」を採用した際、他のメーカーも追従が相次いだが、Vivoの動きを見るや世界は「非・ノッチ」へと一気にシフトした。いまやiPhone以外で大きいノッチのあるスマホは少数派だ。
2018年12月には表も裏もカラーディスプレイという「NEX Dual Display」を発売。デュアルカラーディスプレイスマホ世界初の座は10月に先に発売されたNubia「nibia X」に譲ったものの、表裏共に有機ELディスプレイを採用、裏面も高解像度、カメラを一体化させた背面など完成度はVivoのほうが高かった。裏面もスマホになるということからカメラも裏面のみに配置され、表のディスプレイにはカメラやノッチは無い。Vivoにとってノッチとは「スマホに不要な廃止すべきデザイン」なのだろう。
このようにVivoのNEXシリーズは先進的な技術を搭載するモデルとして一定の認知を持つようになった。しかし製品化するにはまだ及ばない最先端の技術を世間に公表しないのはもったいない。そこでVivoは2019年1月からコンセプトモデルとして新たに「APEX」シリーズを発表した。最初のモデル「APEX 2019」は本体から一切のボタンを廃止。ボリュームコントロールや写真撮影などは本体側面までを覆うディスプレイをタッチパネルとして利用して操作する。USB端子も廃止するなど本体側面には一切の穴もない。将来的にはスマホの側面すべてをディスプレイで覆うデザインを考えているのだろう。
2020年1月には「APEX 2020」を発表。カメラにジンバルを内蔵することで手振れによる写真や動画の失敗を防ぐことができるモデルだ。もちろんこの機構は世界初。またフロントカメラはディスプレイの下に内蔵され、その存在は一切見えない。Vivoの「ノッチ不要論」が徹底している思想であることも明確なモデルだ。
これらAPEXシリーズはコンセプトモデルのため、実際には発売はされていない。しかしそのコンセプトの一部を製品化したモデルがついに登場したのだ。
世界初の手振れしないカメラ
ジンバル内蔵スマホ登場
最近流行りのYouTube、その動画を撮影しているユーチューバーはみなジンバルを使っている。ジンバルは小型三脚のようなサイズで、カメラやスマホを取り付けると動きやブレを吸収してくれる装置だ。スマホを片手に街歩きの様子を撮影すると上下左右のブレが激しく長時間の動画は見ていられないが、ジンバルを取り付けて撮影すると映画のようにぶれも無くなめらかな動画となる。家電量販店でもいまやジンバルコーナーには数々の製品が展示されているほどだ。
そのジンバルをスマホのカメラ部分に内蔵するという前代未聞のコンセプトをぶち上げたのがAPEX 2020だった。そのAPEX 2020の発表から半年で、Vivoは本当にジンバルを内蔵したスマホを世に送り出したのだ。それが「X50 Pro」である。
X50 Proのカメラは4800万画素、1300万画素、800万画素、800万画素の4眼構成。ジンバルは4800万画素カメラに内蔵されている。ジンバルを実現するためカメラモジュールを基盤にそのまま取り付けるのではなく、特殊な枠の中に装着するデュアルボールサスペンション構造とし、5軸手振れ補正を実現している。スマホで一般的な光学手振れ補正に対してX50 Proのジンバルカメラは300%の手振れ防止性能を誇る。Vivoによるとこのジンバル機構の内蔵には一般的なカメラモジュールに対して5倍のスペースを必要とするというが、それでもここまで小型化するのは大変なことだっただろう。
ジンバルを搭載するメリットは、カメラを使うときにスマホを片手で持つだけでブレの無い写真や動画を撮ることができることだ。特に1分程度のショートムービーを取るときなど、カバンからわざわざジンバルを取り出してスマホを取り付け撮影するのは面倒だ。X50 Proなら目の前に急に飛び出してきた猫が魚をくわえたまま逃げていくなんて面白い光景も、とっさにポケットからスマホを取り出し追いかけながら手振れしない動画を撮ることもできるのである。
ここ数年、各メーカーはスマホカメラの高性能化を進めた。美しい写真を撮るためには高画質で明るいレンズが必要で、いまやデジカメクラスのカメラを搭載するスマホも多い。しかし動画を撮影するようになると、8Kや4Kといった高解像度への対応はもちろんのこと、手振れ性能を高めたカメラが求められるようになる。つまりVivoはただ単に「世界初」を追い求めたのではなく、スマホカメラの使い方が写真から動画へと変わる時代の変化をいち早く察知していたのだ。技術力があるだけではなく、スマホを取り巻く環境の動きを常にリサーチしていたからこそVivoはこの偉業を成しえたのである。
5G+5GのデュアルSIM対応
5Gスマホでもリードを奪う
Vivo X50 Proは5Gの通信方式にも対応した最新スマホだ。だがVivoは他にも5Gスマホを多数市場に投入しており、他社にはない機能を持ったスマホもある。その中でも「iQoo Z1」は世界初の5GのSIMが2枚使える、5G DSDSスマホなのだ。
スマホを動かすためにはPCのようにCPUが必要で、さらに通信するためのモデムも必要だ。それらスマホに無くてはならない部材を1つのチップにまとめた統合チップセット(SoC)の最大手、クアルコムは5Gモデムを搭載したSoCの市場で圧倒的な世界シェアを誇る。だがクアルコムに追いつこうとするライバルの追い上げも激しい。ファーウェイやサムスンも自社製品を中心に5G SoCを開発しているが、台湾のメディアテックもこの世界ではメジャーな1社だ。そのメディアテックが開発した5G SoCの一つ、「Dimensity 1000+」は5GのデュアルSIMに対応する。
日本で家電量販店やMVNOが売っているSIMフリースマホは、ほとんどが4GのデュアルSIMに対応する。片側にドコモ、もう片側に格安SIMなんて使い方ができるわけだ。2枚のSIMを入れて2枚とも待ち受けできる、これをDSDS(Dual SIM Dual Standby)という。5GスマホでもデュアルSIMでDSDSのものが海外では多く出てきている。しかし5GのSIMともう1枚は4GのSIMしか入れられないのだ。
5Gの特徴の一つは光回線のように早いギガビット通信。現在販売されている5Gスマホでは1Gbpsの超高速通信も可能だが、5G DSDSスマホではもう1枚入れるSIMは4G回線のみしか使えず、4GのSIMでは実質0.1Gbps程度と、5Gの1/10の速度しか利用できない。
ところがVivoはiQoo Z1のSoCにDimensity 1000+を他社に先駆けて搭載し、2枚入れたSIMのどちらもギガビット通信に対応させた。日本でも5Gが始まったばかりだが「ドコモの5GのSIMと、KDDIの5GのSIM」という贅沢な使い方もできるのだ。いずれMVNOの格安SIMも5Gに対応すれば、iQoo Z1を使うメリットはさらに広がるだろう。5Gスマホをまだ出していないメーカーもある中で、Vivoはそこからさらに2歩以上もリードする5G DSDSスマホをあっさりと製品化しているのだ。
数年もすれば5G DSDSスマホは当たり前になっているだろう。今はまだ5Gを必要とする人は少ないかもしれないが、逆に「5GでもDSDSがないと困る」という人もすでに存在するはずだ。5GスマホでもDSDSをいち早く投入することで、Vivoは最新技術をいち早く利用したい先進的なユーザーのニーズにも応えようとしているのだ。
日本では知られていないVivoが、他社にはない魅力的なスマホを多数出していることがおわかりだろうか。もしもVivoが日本に参入したら、日本のスマホ市場に大きな衝撃を与えるだろう。5G普及が始まる今こそ、Vivoの日本上陸はちょうどいいタイミングではないだろうか。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000127447/
- Source:デジモノステーション
- Author:山根康宏