アールデコ様式のモダンな外観
歴史的建物に最新IT製品を展示
ファーウェイのフラッグシップストアは2020年6月24日、上海の繁華街である南京東路にオープンした。店舗は3階建てで床面積は約5000平方メートル。ファーウェイによるとこれは世界最大級の広さだという。ちなみにドバイにある世界最大のアップルストアは4650平方メートル(5000スクエアフィート)。ファーウェイのフラッグシップストアはそれを上回る広さなのだ。
店内では最新製品を展示するだけではなく、それを体験できるスペースを多数用意。ショールームや販売店という枠を超え、地元の人々や観光客がいつでも立ち寄り、ファーウェイ製品を通して新しい世界を楽しみ、学び、共有できる場所となっている。
店内にいるスタッフの数は220名。精鋭が揃っており、音楽やスポーツ、芸術などその道の経験者を多く採用している。最新のビデオブロガーの経験者もいるため、今はやりの「スマホを使った自分表現」へのアドバイスも受けられるだろう。フィットネスやプログラミングなど、60を超えるミニプログラムが毎日無料で提供されており、通いつめればスマホのプロフェッショナルになれることは間違いない。
フラッグシップストア内には人々がくつろげるスペースも多数用意されている。ベンチやソファー、そして広く清潔感のある階段などに来客たちが座り込み、そこで雑談をしたり買ったばかりの新製品を試すこともできる。また1階にある「ファーウェイコミュニティー」スペースでは講演なども行われる。著名な芸術家やその道のプロの話をここでも無料で聞けるのだ。夏の暑い日など、冷房の効いた店内で1日中過ごす上海の人もいるかもしれない。ファーウェイも自社製品に興味を持つ人ばかりを集めるためにフラッグシップストアを建てたのではなく、様々な人に集まってもらうことでそこから新しいコミュニティーが生まれることを期待しているのだ。
新しいライフスタイルを提案
1日中いても飽きない空間
1階の展示コーナーは広いテーブルを多数配置し、最新の5Gスマホやスマートウォッチ、タブレット、ノートPCなどを展示している。ファーウェイのスマホと言えばライカカメラを搭載したハイエンドモデルが日本でも人気だが、最新の5G対応したスマホも多数販売している。中国ではすでに10機種以上もの5Gスマホを出しているのだ。スマホ界で最高のカメラを搭載する「P40 Pro+」や折り畳みスマホ「Mate Xs」などもここでは自由に体験できる。
2階は5GとAIテクノロジーが提供するシームレスなAIライフを展示。スマートホームなど5つのエリアにわけて、スマートフォンやスマートウォッチを使った新しい生活スタイルの展示を行っている。それぞれのエリアはアールデコ調のインテリアで区切られており、実際の生活空間の中にいるような錯覚を覚える。ソファーに座りながらスピーカーに話しかければTV番組を変えることができるし、気が付けば空調が自動で温度を変えてくれる。スマートホームとはIT製品を自ら使いこなすものではなく、今の生活を自然な姿で楽にしてくれるものであることを体感できるだろう。
ファーウェイはスマホメーカーとして有名だが、実はスマホ以外の製品も多数展開している。もちろんスマートウォッチやノートPCなど日本でもなじみの製品もあるが、家電をつなぐための「HUAWEI HiLink」と呼ばれるシステムも提供しているのだ。これはアマゾンの「Alexa」やグーグルの「Google Home」と同類のシステム。HiLinkに対応した家電を家庭内に置けば、ファーウェイのスマホやスマートスピーカーから操作や監視することができるのである。
HiLinkに対応した家電やIoT製品はすでに多数販売されている。電子レンジやオーブンと言ったキッチン家電、スマートドアや窓の開閉センサーと言ったホームセキュリティー、さらにはLEDライトやスピーカーなどのインテリア機器など様々だ。ハイセンスやTCL、ハイアールなど中国大手家電メーカーもスマート家電をHiLinkに対応させている。ファーウェイは家電の展示会にも出展しており、スマートホームを手掛けるメーカーとしても存在感を高めているのだ。
この2階にあるコリドーからは外の景色を眺めることもできる。南京東路は1日中人であふれており、夜には夜景も美しい。そして3階には多目的スペースとカスタマーケアセンターが併設される。
ポスト・スマホを提案する
「シティースクエア」
ファーウェイのフラッグシップストアの雰囲気はアップルストアによく似ている。アップルストアは製品を販売するだけではなく、アップルの文化やブランドを消費者に浸透させ、さらに新しいライフスタイルを提案している。ファーウェイもアップルと同じメッセージを伝えるためにこのフラッグシップストアを開業したと言えるだろう。
しかしアップルストアで得られる体験は実生活のすべてをカバーしきれていない。たとえばスマートホーム関連を見ると、アップルの「HomeKit」に対応する製品そのものが少ない。対してファーウェイは快適なリビングや寝室環境もデモしている。ファーウェイが提供しようとしているのはエンターテイメントやスマートなワークスタイルだけではなく、起きてから寝るまで、さらに寝ている間も快適に過ごせるスマートライフ全般なのだ。
フラッグシップストアではファーウェイ製品に限ることなく、人々がITを生活の中に取り入れ、それを日常のツールとして自然に使うことで豊かな生活を送れる姿を具体的に見せようとしている。人々は思い思いに店に立ち寄り、時には製品に触れてメーカーやアーティストの提案を実際に体験し、シェアできる。ファーウェイはこのような空間を「シティースクエア」と名付け、今後店の数を増やす計画だ。
このように見た目の美しさはアップルストアに似ているが、ファーウェイがライバル視しているのはアップルではない。数々のIT家電を低価格で送り出し、いまや生活雑貨にまで手を広げているシャオミが強力な競争相手なのだ。シャオミの店舗ではスマートフォンと同じくらいのスペースを割いて、空気清浄機や洗濯機などの家電も展示されている。それらの多くが自社またはパートナー企業のものであり、ホワイトを基調とした製品のカラーリングまで統一されている。もちろん「Mi Home」を使いすべてを一括でコントロールできる。いつの間にかシャオミは生活全般をサポートする総合ソリューション企業にまで成長しているのだ。
近い将来、スマホ販売数のシェア争いをする意味は無くなるだろう。これからは消費者の生活をサポートし、楽しく豊かにしてくれるソリューションを提供してくれるメーカーが人々から支持を受けるようになる。スマホシェア1位のサムスンはスマートホームの分野ですでに先を走っている。ファーウェイが真のトップメーカーになるためには、今後フラッグシップストア、つまりシティースクエアのような空間を増やし人々へ情報発信していくことが必要だろう。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000127214/
- Source:デジモノステーション
- Author:山根康宏