英国通信企業BTの最高責任者は、既存のモバイルインフラからのHuawei(ファーウェイ)製品の急速な排除を求める政府の動きはモバイル通信障害を引き起こし、セキュリティリスクを生み出しかねないと警告した。
ファーウェイは、国際的なネットワークと次世代5Gの供給面における役割の大きさ、そして中国政府との密接な結びつきのために、米国とその同盟国を含む西洋諸国政府の懸念対象となっている。こうした懸念は、ファーウェイ製品への依存によって国をサイバーセキュリティ脅威にさらし、安全保障を弱体化させることになる(未訳記事)という恐れにつながっている。
英国政府は7月14日に方針変更を発表すると見込まれている。これは、2020年初めの「ハイリスク」ベンダーに関する方針を転換し、そうしたベンダーの製品を2023年までに5Gネットワークから段階的に排除するというレポートを反映したものとなることが予想される。
13日朝のBBCラジオ4の番組で、BTのCEOであるPhilip Jansen(フィリップ・ヤンセン)氏は政府の新たな政策の詳細については把握していなかったが、あまりにも性急なファーウェイ製品の排除はリスクをともなう、と警告した。
「短期的にはセキュリティと安全性はリスクにさらされるかもしれない。これは本当に重要だ。というのも、ファーウェイ製品を買ったり取引したりできないというのは、ソフトウェアをアップグレードできないことを意味するからだ」と述べた。
「今後5年間で、我々は15〜20件の大きなソフトウェアアップグレードが必要になると見込んでいる。アップグレードしなければ、重要なソフトウェアが使えなくなる。これは、モバイル通信事業者のアクセスネットワークの35%を上限とするという点で、はるかに大きなセキュリティ問題となりえる」。
「かなり急速に対応しなければならない事態になれば、2400万人のBTグループのモバイル顧客へのサービスが怪しくなるかもしれない」とも付け加え、「通信障害もあり得る」と警告した。
2020年1月に英政府は、予定よりもかなり遅れて「ハイリスク」5Gベンダーへのアプローチを明確にする政策を発表(未訳記事)した。そこでは、アクセスネットワークにおけるそうしたベンダーの関与は35%を上限とすることなど、リスクを軽減するための制限が詳細にまとめられていた。ハイリスクベンダーは5Gネットワークの機密の「コア」への関与を完全に禁止される。しかし英政府は、妥協の政策について与党も含め国内外から反対意見に直面した。
米国のファーウェイに対する追加制裁や、英国の植民地だった香港への中国の接近(BBC記事)に対して制裁を科すなど、さらに地政学的な動きがファーウェイ製品の使用を部分的に容認してきた英政府に方針転換を迫った。
5Gで使用されている製品だけでなく、すべてのファーウェイ製品をBTが排除できるか尋ねられたヤンセン氏は、そうするには少なくとも10年はかかるとの考えを示した。
「すべてはタイミングとバランスだ」と同氏はBBCに語った。「英国中の全通信インフラからファーウェイ製品を排除したければ、10年以内というのは無理だと思う」。
政府の方針が5Gネットワークからのファーウェイ製品排除に限定されるのであれば、BTは実行するのに「理想的には」7年間は欲しい、と同氏は述べた。ただ「もしかすると5年以内にできるかもしれない」とも認めている。
「1月に発表された現在の方針は、アクセスネットワークにおけるファーウェイもしくは他のハイリスクベンダーの製品の使用を最大35%に制限するものだった。我々は2023年までに35%にする方向で取り組んでいる。展開コストには影響があるが、実現は可能だと考えている」とヤンセン氏は続けた。「もし政府が1月に発表した方針からの転換を決定すれば、我々は考えられる影響とその帰結を把握する必要がある」。
「繰り返しになるが、BTはいつもGCHQ(英政府通信本部)と協議している。我々は常にセキュリティが絶対的なものというアプローチを取ってきた。セキュリティは最優先事項だ。しかし政府の方針転換が短期的にさらなるリスクにつながらないか、確認する必要がある。詳細部分が問題だ」。
ヤンセン氏はジョンソン政権に対しても警告を発した。ジョンソン政権は英国を「アップグレードする」という公約の一環として、ファイバー有線ブロードバンドの展開加速を推進してきた。ヤンセン氏はファーウェイ製品を排除するためのあまりにもタイトなタイムラインはこの「未来のための構築」を危うくすると語り、「常識的な」判断を促した。
「経済、国、そして我々が5Gや家庭へのファイバー完全敷設から得られる機会は膨大なものだ。ファーウェイ製品の排除を加速させれば、5Gもファイバー網も構築できない。ゆえに我々はそうした影響も理解しつつ状況を判断し、この複雑な問題に対応するための正しいバランスを見つける必要がある」。
「異なる視点での熟考を注意深く検討し、この問題に対応する正しい道を見つけることが極めて重要だ。政府の方針と、その方針を導いたものによるところが大きい。BTは皆がすべての情報と常識ある判断がなされたことを理解したと確認するために、政府の全部門、国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)、GCHQと直接話をする。常識の先に道が開かれ、正しい方向に進むと確信している」。
ファーウェイ製品排除の加速にセキュリティリスクがあるかどうかNCSCに尋ねたが、コメントは得られなかった。しかしNCSCの広報担当は先の声明を示した。そこには「我々のネットワークのセキュリティとレジリエンスは極めて重要だ。ファーウェイに対して追加の制裁を取るという米国の発表を受けて、NCSCは英国のネットワークに及ぶ可能性のある影響を注視している」とある。
TechCrunchはまたDCMSにもコメントを求めている。
アップデート:英政府の報道官は「我々はファーウェイに対する米国の追加制裁が英国のネットワークに及ぼしうる影響を検討している。継続中であり、適時情報をアップデートする」と述べた。
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