AIは学習の際に大きなエネルギーを消費する。これに対して人間の脳は、スーパーコンピュータ並みの処理を行っているにも関わらず、消費電力はわずか20ワット(スーパーコンピュータの100万分の1)程度だという。
ヒトのニューロン間の処理メカニズムを真似た「ニューロモーフィック・コンピューティング」を実現すべく、オーストリアのグラーツ工科大学の研究者らは、分散型の機械学習アルゴリズム「e-prop」を開発した。
同研究は、EUの資金提供で進められる神経科学とコンピューティングの研究プロジェクト「Human Brain Project」の一環だ。
分散型アプローチで脳の処理を模倣
脳では、ニューロン同士が電気信号(スパイク)をやりとりして演算処理が行われている。スパイクやりとりの頻度は必要最低限に抑えられ、これが消費エネルギーの節約につながっているという。研究者らは、この原理を機械学習アルゴリズムに取り入れている。
以前にも同様のアプローチは考案されていたが、ストレージ容量を圧迫するなどの問題からうまくいかなかったようだ。e-propでは、分散型アプローチをとることでニューロン間の処理の模倣に成功。エネルギー消費を抑えつつ、既存の機械学習アプローチと同程度のパフォーマンスを発揮するとのこと。
完全オンラインで動作
現在使用されている機械学習アプローチの多くでは、数ステップごとにネットワークのアクテビティを保存している。メモリとプロセッサ間で頻繁にデータの転送が発生することからエネルギー消費量が過剰に。e-propは完全にオンラインで動作し、ローカルのメモリを使わないため、学習の際のエネルギー効率が大幅に向上するのだとという。
研究者らは、Intelと連携してe-propをニューロモーフィック・コンピューティング用チップ「Loihi」の次世代バージョンに統合するなど、実用的なステップを推し進めている。
将来的にはe-propをモバイルシステムに組み込むことを目指していて、そうなればスマホでのエネルギー消費を抑えた機械学習が可能になりそうだ。
- Original:https://techable.jp/archives/132111
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:YamadaYoji