同社に近い筋によると、皮革などの動物素材を使わずにコラーゲンを生産するGeltorが、新たに9000万ドル(約95億5000万円)の資金を調達した。
それは持続可能性と、動物製品に代わる細胞培養ベースの植物性置換製品の大きな将来性を示すまた新たな兆候だ。
持続可能なバイオ製品は、それが植物ベースや遺伝子組み換え、あるいは細胞培養方式であっても、2020年は良い年になった。2020年7月だけでも、動物農業(畜産と酪農)やその副産物に代わる持続可能な製品を開発している企業3社が、合計3億3500万ドル(約355億5000万円)の資金調達ラウンドを完了した。その3社とはこのGeltor、The Not Company(未訳記事)そしてPerfect Dayだ。
GeltorのCEOであるAlexander Lorestani(アレクサンドル・ロレスターニ)氏は新たなラウンドについてコメントを拒否し、複数の情報筋はリード投資家を明かさなかった。
Crunchbaseによると、同社はこれまでSOS VenturesやIndieBio、Fifty Years、Cultivian Sandbox Ventures、Starlight Ventures、New Crop Capital、Baruch Future VenturesおよびFTW Venturesなどから資金を調達していた。
2020年11月にTechCrunchは、同社の5000万ドルあまりの資金調達を報じたが、今度のラウンドでは調達額がおよそ1億ドル(約106億円)に達したようだ。
関連記事:非動物由来コラーゲン製造のGeltor、食品添加物の大型契約締結後に約54億円調達へ
同社とその技術に詳しい筋によると「Geltorの生産方法は持続可能性が大きく、動物虐待の必要性を排除しているが、しかし化粧品や食品の業界が同社の製品に殺到するのは、同社製品が動物由来のゼラチンやコラーゲンでは得られない機能性を実現するからだ」という。
市場調査企業のGrand View Researchによると、コラーゲンの世界市場の規模は2027年に75億ドル(約7960億円)に達する。またGrand Viewの別のレポートは、同じ時期のゼラチンの市場規模を67億ドル(約7110億円)と見積もっている。
Geltorの狙いは、これらの添加物と、その他の動物由来だったプロテインを安価かつ効率的に、そして動物を使わずに作ることだ。
化粧品やスキンケア製品、そして食品産業の製品の多くが動物の副産物を使用している。ラノリンは羊毛の脂肪から作られ、スクアランはサメの肝油が原料、そしてゼラチンは牛や豚の骨や腱、靭帯などから作られる。Geltorはこれらすべてを、ビールのような発酵素材の中で醸造した細胞由来のプロテインに置き換える。
創業者のアレクサンドル・ロレスターニ氏とCTOのNick Ouzounov(ニック・ウゾノフ)氏は、プリンストン大学の院生だったときに出会い、2015年に2人の会社を立ち上げた。
ロレスターニ氏が2019年のForbes誌に語っているところによると、ウゾノフ氏はいつも彼のところに、その会社のための新しいアイデアを持ち込んだ。卒業した2人はシリコンバレーへ移り、アクセラレーターのIndieBioが彼らを受け入れた。
Geltorは最初、ゼラチンの製造に挑戦した。それはマシュマロやゼリー菓子など、至るところで使われている食品添加物だが、同社はすぐに美容製品やダイエット用サプリに使われるコラーゲンにも手を広げた。そのときすでにGeltorは、コラーゲンの世界最大のメーカーであるGelitaと協力していた。
Geltorや植物性乳製品のPerfect Dayなどに投資が集まり始めていることは、産業生物学に日が当たってきたことを意味している。細胞の機能のリエンジニアリングやプロテインの開発が数十億ドル(数千億円)の企業価値を新たに作り出していることは、その一例にすぎない。
新しいバイオ製品に注目している投資家にとって、未来は非常にいきいきとしている。
画像クレジット:Getty Images