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梶原由景が歩いて出会った 美味しいお店 梶原メシ I eat, therefore I am

そろそろ食の旅に行けそうだ。
さあ、またおいしい店を訪ねていこう。
食べ物の本とともに。

 

人生にとって大切なことのだいたいは食べ物の本で学んだ。僕にとっての食のバイブルといえば疑いなく「美味しんぼ」だ。喜んで飲んでいた牛乳は美味しいものではなく、本当の牛乳とは低温で殺菌したものだ。醤油も大手が製造しスーパーで手に入るものは本物ではない。日本中がドライビールで浮かれていた時にも、あれは本物のビールではないと断ずる。全てが真実ではないにしても、この姿勢は衝撃だった。以降、世の中全体の食に対する意識も変わったような気がする。

その「美味しんぼ」的要素を高濃度に凝縮させたような小説が「美味しんぼ探偵局—だれがラーメンを殺したか」だ。本物のラーメンのために本物の醤油や味噌、鶏、豚を求め、メロンパンや肉屋のコロッケ、とんかつを語る。煮込みの名店「岸田屋」を彷彿とさせる居酒屋も登場する。のちに本家「美味しんぼ」の「ラーメン戦争」としてほぼ同じ内容で描かれるのだが、本物を追求する姿勢は本家に勝るとも劣らない。絶版でKindle化もされないだろうから、状態の良い古本を見つけたら即ゲットだ。僕も複数冊所有している。なにより娯楽小説として凄く面白い。

ラーメンを普段僕はあまり食べないし、ラーメン屋に行くこともないけど、webの連載で読んでいた「ラーメン食いてぇ!」は何故か紙の本という形で持っておきたかったので改めて購入した。ラーメンをめぐる女子高生とおじさんの冒険。ラーメンが食べたくなるので困る(笑)。

もちろん「包丁人味平」も食の原体験に近い。ジャンプ漫画だけあり荒唐無稽な内容ながら、後に「料理の鉄人」という大ヒットバラエティのヒントとなったことでも有名。ラーメンをめぐる戦いも秀逸だったがやはり真骨頂はカレー。そう、ブラックカレー! 最近コロナ禍で歴史ある飲食店が相次ぎ閉業したが、神保町「キッチン南海」のカレーも相当に黒い。あれがモデルなのだろうか、、、。

食は出会い。そういう意味ではずっと探していた伊丹十三が装丁を手がけた名著「日本三大洋食孝」も幸運な出会いだった。この本を探しているということをブログに書いたところ、京都の名書店「恵文社一乗寺店」さんから入りましたよとご連絡をいただき購入したもの。一度しかお店には行けなかったけど、新橋「京味」の西さんとお会いできたのも貴重な体験だった。

食の漫画といえば、今や代表選手は「孤独のグルメ」だろうか。最初はグルメ漫画でも何でもなく「出先で食べる」という行為を描いただけの、空気の描写が肝の作品だったと思うが、ドラマはおいしい店の紹介のような体裁になっている。出た店は即行列店になるわけだけど、あらためて二巻を読むとドラマの方向性に近い。こっちのドラマ化っていうことかな。台湾でも人気があるようで、足裏マッサージに行ったら施術中録画したものを見せてくれた(笑)。

そういえば、いつ、食の聖都・台湾に行けるのだろう。いろいろなガイドはあるけど、意外や意外、モデルの舞川あいくさんの本はかなりプラクティカル。また、僕にとって、関西の食のガイドといえば関西のローカル番組「今ちゃんの『実は・・・』」。これまた出ると翌日から行列ができるといわれるほどの影響力を持つ番組だが、東京でもTVerで毎週楽しめる。関西方面に出張の多い方は要チェック。

もう20年以上前にテレビで「畑から自分でネギをとって刻み、うどんに乗せて食べるたんぼの中にある小屋のようなうどん屋」というのを見て、当時働いていた会社の高松支店の人に問い合わせたら、その後うどんブームの台風の目となる「おそるべきさぬきうどん」を貰った。以来、讃岐うどんに魅せられ、年に2回は彼の地を訪れた。香川はうどんのテーマパーク。でも人為的に作られたものではなく、現地に住む人たちが支える嘘偽りない食の姿だ。3月に訪れる予定だったが、コロナ禍の為延期した。

でも、そろそろ食を旅することができそうだ。さあ、またおいしい店を訪ねていこう。


text : 梶原由景

幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。デジタルメディア『Ring of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

 

 

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