米国拠点のロケット打ち上げスタートアップであるAstra(アストラ)は、初の軌道飛行テストの準備を進めている。天候に応じて、今週末か来週末にも打ち上げを実施する。同社は、アラスカ州コディアクから「Rocket 3.1」と呼ばれるロケットを打ち上げる。厳密に言えば軌道飛行テストに分類されるが、米国時間7月30日に開かれた記者会見では「最初の3回の打ち上げが、どれも正しく軌道に載ると信じているわけではない」とジャーナリストに対して早々に釘を刺していた。
「ホールインワンを狙っているわけではありません」とCEOのChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は言う。「これはパー3のコースです。3回の打ち上げを行った後に、適切に軌道飛行が行えると確証を持てるだけの経験を積もうと考えているのです。私たちにとってそれは、予定どおりに第1段のエンジンが燃焼し、第2段が正常に分離されることを意味します。そこで習得したあらゆることを、上に積み上げてゆきます。私たちは、第2段が点火すれば満足です。そして第2段が、次の打ち上げをもっとうまくやるための何かを教えてくれたらそれで十分なのです」。
Astraのロケットの建造と打ち上げに対する考え方は競合他社とは異なっている。このスタートアップは創業からまだ3年しか経っていない。同社は、オークランドにほど近いカリフォルニア州アラマダでロケットを建造している。Rocket 3.1は、高さおよそ40フィート(約12m)で、小さなペイロードを打ち上げることができる。現在、数多くの企業が地球の低軌道で運用する衛星コンステレーションを打ち上げているが、それを構成する小型衛星1基が搭載できる程度だ。ちなみにSpaceXのStarlink計画では、一度に60個の衛星を載せて打ち上げている)。
結局は受賞者を出さずに終了したDARPA(米国防高等研究計画局)の打ち上げコンテストに初めて挑戦する前にケンプ氏が私に話した(未訳記事)ところによると、低コストで大量にロケットを作り、SpaceX(スペースX)やRocket Lab(ロケット・ラボ)などの新進宇宙企業よりも、失敗を許容するマージンを大きく取るのだと強調していた。
「最初の1回で成功させるために何年間も費やすのではなく、我々は軌道への挑戦を何度も繰り返します」とケンプ氏は、来週の打ち上げを前にした7月30日の記者会見で話していた。
Rocket 3.0型では、最初の計画から何度もやり直すこの方法で、同社は異常事態によりロケットを丸ごと失うという事故に見舞われた(未訳記事)。同社はその後、設計を見直して失敗の原因になったものを含めいくつもの問題点を解決した。今回の打ち上げは、もともと3月末に予定されていたものだが、新型コロナウイルスの影響で延期されていた。だがAstraは、オフィスに従業員を集めて仕事を続けることができる数少ない企業のひとつに国から指定されている。なぜならその事業が、国の安全保障にとって重要なものだからだ。
これから行われる3回の打ち上げテストでは、ペイロード(積載物)は搭載されない。理由のひとつとして、少なくとも最初のロケットは完全に失われることを想定しているという点がある。しかしAstraのロケットは、その経済性のために多少の失敗は許容できる。1回の打ち上げ費用は、小型衛星を打ち上げたいときに候補に挙げられるSpaceXやRocket Labなどの乗り合い型ミッションと比較しても、ずっと安い。
最初のAstraのテストの打ち上げ計画は、米国時間8月2日から8月7日の間の、米国太平洋夏柑午後7時から午後9時(日本時間8月3〜8日の間の午前11時)の間に設定されている。いまのところ、現地の8月2日の天候はあまり芳しくない。しかし同社によれば、天候は目まぐるしく変化するため、注意深く観察し、柔軟に対応するとのことだ。
画像クレジット:Astra
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(翻訳:金井哲夫)