モバイルアプリのダウンロードと利用がかつてないほどに増えている。App Annie(アップアニー)の最近のデータによると、モバイルユーザーのアプリ平均所持数は2015年12月時点で85個だったが、2019年12月時点では93個に増えている。利用アプリ数も月平均41個で、2015年は35個であった。この増加に関連して、ユーザーの1日あたりのアプリ利用時間も増加している。例えば、世界の平均で見ると、1日あたりのアプリ利用時間は2015年の2.1時間から2019年には3.1時間に増えている。
レポートでは、この利用拡大に伴って、トップアプリの顔ぶれが多様化していることも分かった。つまり、5年前に比べて、アプリの利用時間全体に占めるトップアプリの利用時間の割合が低下している。
このレポートを依頼したのがFacebook(フェイスブック)だったという点は注目に値する。App Annie(アップ・アニー)によると、過去5年間のアプリエコシステムの進化をつまびらかにしようとしたらしい。レポートは、人気のアプリカテゴリの観点からトップパブリッシャーの成長がどのように進展しているのかを明らかにしつつ、新しく成功しているアプリがどのようにして短時間で大きな成長を遂げているのか洗い出すことを目的としている。
過去にFacebookは、このタイプの市場リサーチデータを同社のOnavo VPNアプリケーション(プライバシーの問題で提供を終了)やその他同様のサービスにより自前で入手していた。
App Annieのデータチームの利用は、同社にとってこれまでと同様のデータを入手するための新しい方法に過ぎない。
App Annieの市場分析も、部分的にはサードパーティ製のアプリを使って行われている。同社はDistimo(ディスティモ)を2014年に買収し、2016年からはDistimoブランドでVPNアプリのPhone Guardianを提供している。2015年にはMobidia(モビディア)も買収し、My Data Managerを提供している(現在はApp StoreでDistimoブランドとして提供)。どちらのアプリもApp Annieとの関係を明らかにしており、収集するタイプのデータを例示してアプリが市場調査の目的で使われることを説明している。
レポートから新たにわかったことは、Facebookや他のトップアプリのパブリッシャーにとって、すべてが良い知らせではないかもしれない。アプリ経済が発展するにつれ、ユーザーがモバイル上で時間を費やす「場所」はますます増えている。
過去5年間、ダウンロード数は世界で増加を続けており、2019年には1200億に達している。この増加をけん引しているのは、インド(2019年前年比10%増)、ブラジル(同9%)、インドネシア(同8%)、ロシア(同7%)を中心とした新興市場だ。
成熟市場におけるダウンロード数も2019年に過去最高を記録し、米国(123億)、日本(25億)、英国(21億)、韓国(20億)、ドイツ(19億)、フランス(19億)で軒並み増えている。
1日あたりのアプリの利用時間が3.1時間に増えるにつれ、ユーザーが利用するアプリの種類も増えている。レポートによると、上位100アプリのうち35個が2019年に初ランクインしている。2016年の初ランクインは27個であった。ソーシャル、写真、ビデオ、コミュニケーション、エンターテイメントなどカテゴリは多岐にわたる。
旗艦アプリだけでなく、Instagram(インスタグラム)、Messenger(メッセンジャー)、WhatsApp(ワッツアップ)など、たくさんのトップアプリを長年提供しているFacebookなどのトップアプリのパブリッシャーにとって、これはおそらく気がかりなデータである。競争圧力が高まるにつれ、モバイルデバイスの利用時間全体におけるこれらトップアプリの利用時間の割合が減っているのである。新しいアプリを気軽に試すユーザーが増えており、ゲーム、エンターテイメント、ビデオのカテゴリでは特にその傾向が顕著である。
2016年、米国ユーザーのゲーム以外のアプリ全体の利用時間のうち、上位30のアプリの利用時間は69.4%を占めていた。2019年には65.5%になり、約4%も低下している。ゲームに関しても、49%から39%へ、10%低下している(米国のGoogle Playのデータ)。
レポートから、ユーザーが新しいアプリを試すことに抵抗がなくなっているだけでなく、新しいアプリがアプリストアですぐに成功できることもわかった。例えば、米国では、アプリの60%以上が最初の半年でカテゴリのトップ30に入っている。
この要因には、最初にプッシュ型のマーケティングが大々的に実施されることやユーザーのデバイス自体の機能、つまりストレージや処理能力が向上しているためダウンロードしやすいといったことが挙げられる。
また、かつての目標指標である月間アクティブユーザー数(MAU)100万人を達成できるアプリも数多くある。2019年には、4600以上のアプリが100万MAUを達成しており、これにはソーシャルやコミュニケーション以外のアプリ、例えば、Netflix(ネットフリックス)、Roku(ロク)、Disney(ディズニー)、CBS、Amazon(アマゾン)、Alibaba(アリババ)、Walmart(ウォルマート)、Target(ターゲット)、PayPal(ペイパル)、Venmo(ベンモ)、Chase(チェース)、Capital One(キャピタル・ワン)、Uber(ウーバー)、DoorDash(ドアダッシュ)、McDonald’s(マクドナルド)、Starbucks(スターバックス)なども含まれる。
2015年から2018年のデータを分析すると、アプリが100万件ダウンロードを達成するまでの時間も短くなっている。App Annieによると、ビデオ、ファイナンス、コミュニケーション、ソーシャル、写真、エンターテイメントのカテゴリで言えば、67%のアプリが最初の12ヶ月で100万件ダウンロードを達成している。
この増加により、トップアプリ間での重複も増えた。レポートによると、現在モバイルユーザーはソーシャル上を含めて、同様のニーズに対処するために同じカテゴリまたは異なるカテゴリの複数のアプリを選んで使うことが多い。
例えば、2020年4月、米国のSnapchat(スナップチャット)のユーザーの89%はYouTube(ユーチューブ)を、75%はInstagarmを利用していた。
TikTok(ティックトック)は、Snapshatのユーザーに利用されている割合が2019年4月の17%から2020年4月には大幅に増えている。これは若い世代の支持が広がっていることを示す。
一方、ユーザーのアプリ利用時間の多くを占めつつあるのがビデオアプリとゲームである。この「遊ぶ」に大きくまとめられるカテゴリのアプリは、2019年に増加したアプリ利用時間の22%を占めている。
また、トップのゲームアプリにはソーシャル機能も備わっている。これには、Fortnite(フォートナイト)、Clash of Clans(クラッシュ・オブ・クラン)、Call of Duty: Mobile(コールオブデューティモバイル)、Township(タウンシップ)、Star Wars: Galaxy of Heroes(スター・ウォーズ/銀河の英雄)、New Yahtzee with Buddies(ニューヤッツィーウィズバディーズ)、Golf Clash(ゴルフクラッシュ)、Slotomania(スロットマニア)など上位50のゲームが含まれる。
上位50のゲームの3分の2以上にソーシャル機能が少なくとも1つは追加されており、友達をゲームに招待できるものや仲間と協力してゲームを進められるもの、ギルドやクラン機能、アプリ内チャットを利用できるものがある。この機能により、プレイヤーは友達とつながることができるため、結果としてユーザーのゲーム時間は増えている。
このトレンドをよく示すゲームの1つ、フォートナイトは、買収したHouseparty(ハウスパーティ)のテクノロジーをベースにしたパーティハブの提供を2019年9月に開始した。提供開始3ヶ月で、フォートナイトのプレイ時間は1.3倍に増加した。
ゲーム以外でも、ソーシャル、ビデオ、エンターテイメントの人気カテゴリの要素を融合したTikTokの利用時間が上昇している。Musical.lyとの統合後、TikTokはすぐさまビデオ編集機能を追加し、宣伝費を増やしてユーザーベースとエンゲージメント(繰り返し使ってもらうこと)の拡大に積極的に取り組んできた。2019年12月までの米国ユーザーの月あたりの同アプリ平均利用時間は16時間20分であったが、これは2018年8月の5時間4分から大幅に増えている。
レポートでは、国別の内訳も詳しく報告されているが、全体として、2019年はほとんどの国でダウンロード数が過去最高を記録しており、アプリの利用頻度や利用時間についても同様の傾向が見られることがわかった。
比較により面白いことも分かった。米国ユーザーは他の市場に比べてインストールしているアプリの数は多いが(97に対して93)、利用しているアプリの数は世界と比べて少ないということだ(36に対して41)。また、1日あたりのアプリ利用時間もわずかに少なく、世界平均が3.1時間であるのに対して、米国は2.7時間であった。
「このレポートからわかることは、現在のアプリ業界はかつてないほどに競争が激しくなっているということです。新しい企業が、ユーザー自身さえ気づいていなかったニーズを満たす革新的なアプリケーションを武器に成功を収めています」と、FacebookのNew Product Experimentationチーム(ソーシャルアプリの新しいモデルを模索するFacebookの社内チーム)のリーダーであるIme Archibong(イメ・アーチボン)氏は述べている。さらに「この選択と競争がすべてともいえる環境がイノベーションを生み出し、Facebookの原動力になります」とも付け加えている。
App Annieのレポート全文はここで入手できる。
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カテゴリー:ソフトウェア
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(翻訳:Dragonfly)