暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年8月2日~8月8日の情報をまとめた。
ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」がBinanceで約3億1700万円相当のSANDトークン販売
中国・香港を拠点とするゲーム開発会社Animoca Brands(アニモカブランド)は8月5日、暗号資産取引所Binanceが提供するIEOプラットフォームBinance Launchpadを通じ、ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」のSANDユーティリティトークン300万ドル(約3億1700万円)相当の販売を発表した。
The Sandboxは、Animoca Brandsの子会社TSB Gamingが開発するブロックチェーンベースの仮想空間(メタバース)で、コミュニティ主導型ゲームおよびゲーム作成プラットフォーム。いわばブロックチェーン版のマインクラフトといったところ。SANDは、暗号資産Ethereum上で発行されたERC-20準拠トークンで、メタバースにて利用できる主要トークンとなる。The Sandboxにおいてコンテンツ制作者は、ゲームのアセットやゲーム体験を収益化することが可能になる。
SANDトークンセールは、Binance Launchpadにて8月13日より開始、SANDの総供給量の12%にあたる3億6000万SANDトークンが販売される予定。
The Sandboxゲームシリーズは、2012年に携帯電話向けに開発されたゲームプラットフォームで、その後、Windows版などが登場した人気のシリーズ。ブロックチェーンベースのThe Sandboxは2020年後半にローンチ予定で、現在開発中。一部、3Dボクセル(ブロック)アセットを作成できる「VoxEdit BETA」と、VoxEditで作成されたゲーム内アセットを取引するための分散型マーケットプレイス、無料で3Dゲームを作成できるビジュアルスクリプトツールボックス「Game Maker」のアルファ版が公開されている。
ユーザーは、アセットを使用しゲームを作ったり、他人の作ったゲームをプレイしたりできる。また、所有する土地(LAND)やキャラクター、アイテムなどデジタルアセットについても、NFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)としてマーケットプレイスで売買可能。アセットは、その希少性に応じてERC-721またはERC-1155規格のNFTになるという。
The Sandboxは、すでに仮想空間内の土地(LAND)を販売する4回のプリセールを行い、1万以上のLANDを売却し、数千ETHを超える資金を調達、売り出されたLANDおよびアセットはすべて完売している。
TSB Gamingは、ゲーム業界からも注目されている。2019年7月から9月の期間、SANDユーティリティトークンの発行およびSAFE債(将来株式取得略式契約スキーム)による資金調達を実施。スクウェア・エニックス、True Global Ventures、B Cryptosら複数の投資家を引受先として、現金83%、BitcoinおよびTetherの暗号資産17%からなる総額201万ドル(約2億1200万円)の出資を受けたことを発表している。
さらにAnimoca Brandsは8月4日、以前よりパートナーシップ契約を結ぶビデオゲーム界の老舗メーカーAtari(アタリ)との契約を拡大し、70年代から80年代の名作ゲーム「Pong」「Asteroids」「Centipede」「MissileCommand」など全15種類のタイトルについて、ブロックチェーンやNFTなどを含む開発および流通(公開)の権利を取得したことを発表している。
中国国営商業銀行がデジタル通貨ウォレットアプリの大規模テストを開始
ロイターおよび中国広東省下の国営経済情報紙21st Century Business Herald(21世紀経済報道)によると、中国の主要な国営商業銀行が、デジタル通貨(数字貨幣)ウォレットアプリの大規模内部テストの実施しているという。
21世紀経済報道は、「深センを含む都市の州の銀行の従業員が送金と支払いを行うためにアプリの内部テストを開始した」という情報筋による証言を引用している。
中国政府が人民元の中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行に積極的な態度を示していることは知られている通りだ。21世紀経済報道によると、この動きは中国人民銀行(PBOC) デジタル通貨研究所が2020年4月中旬に公開した情報に沿ったものという。現在インターネット上で流通している、デジタル通貨電子決済(DC/EP)の情報は技術開発に関するクローズドテスト情報で、デジタル人民元が正式に公開されるわけではないと強調している。
また中国人民銀行 デジタル通貨研究所は、同じく4月の発表で、深セン、蘇州、雄安新区、成都の4都市でDC/EPシステムの内部閉鎖試験を実施しており、将来の北京冬季オリンピック会場でシステムを試験運用すると明らかにしたことも報じられている。
中国人民銀行は、2019年8月に開いた2019年後半の業務を確認するテレビ会議で、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の開発および暗号資産発展の研究を重要なタスクであることを明示している。CBDCの分野では、中国は先駆け的な存在になっている。中国は2017年に中国人民銀行デジタル通貨研究所を設立し、2018年6月には同研究所の100%子会社として深セン金融科技を設立するなど、積極的な活動を行っている。すでに、中央銀行デジタル通貨研究所は、CBDCに関する多くの特許を申請している。
ディーカレットと関西電力がブロックチェーンによる電力P2P取引決済自動化の有効性を確認
暗号資産取引所DeCurretを運営するディーカレットは8月5日、2020年3月より関西電力と実施していたデジタル通貨に関する実証実験について、その有効性が実証されたことを報告した。
ディーカレットは両社の実証実験において、自社が開発するブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォームを活用し、関西電力向けに実験用の独自デジタル通貨を発行し、電力P2P取引における決済処理の自動化について有効性を確認することができたという。
現在、電力業界における電力供給システムは、大規模集約型から個人や企業が電源を保有する分散型への移行期間にあるという。将来、分散型の電力供給システムにおいては、自身で発電した電気の余剰分を売電する生産消費者(プロシューマーという)と電力消費者は、専用プラットフォームを介し、電力が直接取引(P2P取引)される可能性があると見られている。
電力会社は、電力のP2P取引来歴を明確にするのは今後必須であり、取引来歴には耐改ざん性に優れ、透明性の高いブロックチェーン技術の活用が期待される状況であるという。来歴管理のブロックチェーン活用は、すでに国内外で多く実施されており、ディーカレットはデジタル通貨を用いて、プロシューマーと電力消費者のP2P取引と同時に発生する決済処理の自動化について実証実験を実施した。
実証実験では、プロシューマーと電力消費者の間で電力取引が行われると、スマートコントラクトがそれを記録し、取引量に応じた料金が電力消費者のウォレットからプロシューマーのウォレットへ送付されることを確認する。同時に取引手数料がプロシューマーウォレットからプラットフォーマーウォレットへデジタル通貨で送付される仕組みについて検証を行ったところ、その有効性が確認できたという。
実証実験に用いられたディーカレットのデジタル通貨プラットフォームは、利用企業が自身のブランドでデジタル通貨を発行できる機能を備えている。プラットフォームは、スマートコントラクトを利用した処理の実装も可能で、今回はP2Pによる電力取引まつわる一連のプロセスを実装した。
ディーカレットは同プラットフォームを活用し、商品やサービスの価格を需要と供給のバランスに合わせて変動させる価格戦略(ダイナミックプライシング)やリアルタイム決済といったブロックチェーンの特性を活かした幅広いサービスの展開を支援していくとした。今後、ディーカレットはプラットフォームの事業化を目指していく。
関連記事
・暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.7.26~8.1)
・暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.7.19~25)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/08/11/weekly-blockchain-20200802-0808/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Takashi Higa