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ハスラーとは結構違った!ダイハツ「タフト」はイマドキ遊びグルマの最右翼

世界の自動車マーケットを席巻しているクロスオーバーSUVブームの波が、軽自動車のクラスにも到来。同ジャンルのパイオニアであるスズキ「ハスラー」に待ったを掛けるべく、ダイハツはニューモデル「タフト」を投入してきた。

今回は単なるハスラーのフォロワーではなかった、新型車タフトの個性を分析する。

■ハスラーと似ている部分&異なる部分

今、クルマの世界でトレンドとなっているのがコンパクトSUV。トヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」、そして、2020年上半期の販売ランキングでトップになったトヨタ「ライズ」などの大ヒットモデルに加え、日産自動車から登場した「キックス」も発売1カ月で1万台のオーダーを獲得。さらに9月初旬には、トヨタからニューモデル「ヤリスクロス」が登場予定で、こちらも大ヒットが確実視されている。これらに共通するのは、運転しやすい小さなボディサイズで、街乗りを前提として快適性などにも配慮していること。そのため今の勢いは、当分の間続きそうだ。

そうしたトレンドは、軽自動車のクラスにも波及している。代表的なモデルといえば、スズキのハスラーだ。ハイトワゴンの定番モデルである「ワゴンR」から車体の基本構造やパワートレーンなど多くのメカニズムを流用して作られたモデルだが、オリジナルデザインが与えられたボディはオフロードでもガンガン走っていけそうなアクティブな雰囲気。さすがに激しいオフロード走行こそ厳しいが、車高を上げて最低地上高を確保しているため、一般的な軽自動車に比べると悪路や雪道における走破性に優れる。

そんなハスラーは、2013年末に初代がデビューするやいなや、スズキの予想をも超える大ヒットを記録。発売後1年で10万台以上を売り上げる人気モデルとなった。そして2019年末のフルモデルチェンジで登場した2代目も、丸いヘッドランプを始めとする個性的なデザインを継承。好調なセールスを記録している。

今回フォーカスするダイハツのタフトは、ひと言でいえばハスラーのフォロワーともいえるが、両車の商品コンセプトには似ている部分と異なる部分とが混在している。ここからは2台の違いを明らかにしながら、タフトの個性に迫ってみたい。

■フラットな荷室と前席空間を重視したタフト

ハスラーとタフトはともに軽自動車のクロスオーバーSUVであり、そのパッケージングはハイトワゴンを基本としている。スタイリングこそSUVらしい仕立てとなるが、リアシートを始めとする室内空間は、ワゴンRや「ムーヴ」に近い広さと実用性を確保している。

エクステリアデザインのテイストは、ともに無骨さを強調したアウトドアギア感覚の強いものだが、ヘッドライト形状はハスラーが“丸目”なのに対し、タフトは“角型”と路線は明確に異なる。ボンネット周辺の形状も、丸みを帯びたハスラーに対し、タフトは徹底して直線基調となっている。

ハスラーとタフトで大きく異なる点は、リアシートの位置づけだ。ハスラーの後席は、いうなれば、軽ハイトワゴンのスタンダード。空間をしっかり確保した上で、左右独立のスライド機構を採用するなど、一般的なハイトワゴンと変わらない使い勝手を盛り込んでいる。

対するタフトの後席は、方向性がかなり異なる。広い空間を確保している点こそ同じだが、スライド機構は非採用。後席の前後位置は、スライド機構が付いていると仮定した場合の最後端より少し前側で、リアシートを使用した際の居住性と荷室の広さとのバランスを図った位置にある。

タフトの開発者は「後席はスライド機構を省くことで座面下の構造をシンプルにすることができ、結果、着座位置が下がって頭上空間のゆとりが増し、軽量化にもつながった」と説明するが、注目すべきはなんといっても、リアシートの背もたれを倒した時だろう。背もたれ部が床下に低くキレイに収まり、まるで初めから後席がなかったかのように、スッキリとフラットな荷室フロアが現れるからだ。

タフトはその状態を重視して後席のスライド機構を省いた、と考えればすべてが腑に落ちる。何しろ、背もたれを倒した状態の荷室は、ダイハツの軽自動車の中でフロアが最もフラット。その上、荷室を少しでも広くするために、リアドアのアームレストさえ装備していないなど、荷室の使い勝手に徹底的にこだわった跡が見て取れる。つまりタフトは、リアシートの居住性よりも、背もたれを倒して荷室を拡大した状態を重視したといえるだろう。

■標準装備の“スカイフィールトップ”は開放感抜群

後席と荷室の方向性を踏まえると、フロントシート回りの仕立ても理解しやすい。タフトのフロントシートは軽乗用車で主流のベンチタイプではなく、左右の席が独立したセパレートタイプ。

運転席と助手席はセンターコンソールで隔てられているため、ベンチシートの利点である左右席間のウォークスルーはできず、足下空間も狭くなっているから視覚的な開放感もスポイルされている。その分タフトは、SUVらしい“囲まれ感”を手に入れている。実用性を重視したハイトワゴンの延長ではなく、“SUVらしさ”を重視した結果といってもいいだろう。

一方で、タフトはフロントシートの頭上に“スカイフィールトップ”と呼ばれる固定式のガラスルーフを備える。一般的なクルマのサンルーフは、前席に座る人の視界に入ってはこないが、タフトはスカイフィールトップの面積が大きい上に、フロントピラーが立ち、ルーフが前方へ延びていることもあって、前席に座っていてもガラスルーフ越しの風景が自然と視界に入ってくる。

ちなみに今、新車で買える軽自動車の中でサンルーフやガラスルーフの設定があるのはタフトだけ。しかも、全グレードに標準装備というのだから恐れ入る。開放感満点のガラスルーフによるパノラマ感は、タフトでしか味わえない魅力。このクルマを積極的に選びたくなる理由のひとつといえそうだ。

こうして子細にチェックしてみると、あくまでハイトワゴンの延長線上にあり、リアシートの実用性や快適性を重視しているハスラーに対し、タフトは商品の方向性が根本から異なっていることが分かる。ガラスルーフなどの遊び心あふれる装備を盛り込み、人気の後席スライド機構を省いてまで、たくさんの荷物を積んだ際のラゲッジスペースの使い勝手を追求したタフトは、レジャードライブを中心とするアクティブな使い方に似合いそうだ。

■イチ押しは走りの余裕が増すターボ仕様

最後に、タフトのバリエーションをチェックしておきたい。

タフトには装備を徹底的にはぎ取った、いわゆる“廉価グレード”は存在せず、ベーシックグレードの「X」でも、オートエアコンや非接触式キーなどを標準装備している。しかし実際に購入するなら、プラス13万2000円でアルミホイールやシートヒーター、運転席の高さ調整機能、電動パーキングブレーキなどが備わり、ホイールハウス内が黒くなるなど見た目の上質感も高まる「G」の方が、所有欲を満たしてくれるはずだ。

ちなみに筆者のイチ押しは、Gに対してプラス12万1000円となる「Gターボ」。エンジンがターボチャージャー付きにアップグレードされて加速力が格段に向上する分、高速道路の合流時などでも余裕を持って運転できるからだ。

自然吸気エンジンを搭載するGとGターボの動力性能の違いはかなり大きく、また、加速中にエンジン回転数が高まる機会が減ることから、Gターボの方が車内の静粛性が高いというメリットも。価格差が小さいことを考えると、タフトはターボ仕様を選ばない手はないと思う。

そのほかタフトは、純正のオプションパーツが充実している点も見逃せない。写真からも明らかなように、メッキ仕立てのフード&バックドアガーニッシュを付けるだけでも、エクステリアはクールなイメージへと一変。

また、ルーフキャリアやホワイトのスチールホイール、ウッド調のサイドストライプなどをプラスすれば、クラシカルな装いへもカスタマイズできる。各種パーツを駆使して自分好みの1台を仕立てる楽しさも、タフトならではの魅力といえるだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆Gターボ(2WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1630mm
車重:840kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64馬力/6400回転
最大トルク:10.2kgf-m/3600回転
価格:160万6000円

<SPECIFICATIONS>
☆Gターボ(2WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1630mm
車重:830kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:52馬力/6900回転
最大トルク:6.1kgf-m/3600回転
価格:148万5000円

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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