長かった梅雨が明け、一気に真夏日となった8月上旬。&GP編集部から一本の電話が入りました。
「今、フォルクスワーゲンのゴルフ2(2代目ゴルフ)がすごく人気でしょう? 実はうちの編集長も本気で欲しいと思っているみたいなんですよ。よかったらゴルフ2の中古車を見にいくのに付き合ってもらえません?」
クルマは乗るものもいいけれど、何を買おうか選んでいる時が一番楽しいもの。ただ、ネオクラシックやヤングタイマーと呼ばれる1980年代〜90年代初頭のモデルとなると、中古車の状態や相場を見極めながら選んでいく必要があり、それを面倒に感じたり、難しいと思う人も多いでしょう。でも信頼できるお店に教えてもらいながら買うクルマを選べば、怖気づく必要はありません。
そこで、編集長とともにゴルフ2の専門店を訪問。その魅力と中古車購入のポイントを前編・後編に分けてお届けします。
■ゴルフ2にはどんなタイプがあるのか
我々が訪れたのは、神奈川県相模原市にある「スピニングガレージ」。常時100台前後の在庫がある、全国にその名が知られるゴルフ2専門店です。
実は今、1980年代から90年代にかけて人気のあった欧州車は軒並み流通量が激減し、中古車サイトを見ても数台掲載されていればいいほうという状態に。当然パーツも入手しづらくなっています。ただしゴルフ2は日本でもかなりヒットしたので、イタリア車やフランス車に比べると流通量は豊富。しかしここ数年でだいぶ中古車の数が減ってきています。
代表の田中延和さんによると、お店にはゴルフ2の現役時代を知っている人だけでなく、初めてのマイカーとしてゴルフ2を選ぶ20代前半の人も多く訪れるそう。彼らは最新モデルで自分の感性に合う選択肢が見つからず、ヤングタイマーに目を向けていると言います。
「若い人に共通するのは、デザイン的にも機能的にもシンプルで、今でもちゃんと乗れるクルマということでゴルフ2に注目していることです。きっと編集長が若い頃は細かいことを気にせず『好き』というだけでクルマを買っていたと思いますが、今の子たちはノリと勢いではなく、しっかり情報収集をしてゴルフ2にたどり着いているんだろうということを感じます」
流通量が減少傾向とはいえ、まだまだ中古車は見つけやすいゴルフ2。さらに
・何かあったときのパーツが探しやすいこと
・同時期の輸入車に比べ、夏でも乗りやすいこと
・ATの流通量が多いこと
これが選ぶ理由になっているそうです。
「一方で、免許取立てなのに『絶対にマニュアルのゴルフ!』という子も来てくれます。自分の若い頃を見ているようでうれしいですね」
そんなゴルフ2は大きく分けると3つのタイプが存在します。
▼ベーシック系
ベーシックグレードのCiから上級グレードのGLiまで、ゴルフ2の王道的なモデル。CiとCLiには5ドアと3ドアがあり、ミッションも3ATと5MTが存在。GLiは3ATのみ。
▼GTI
走りに特化したホットハッチバージョンで、グリルとバンパーに入る赤いストライプが特徴。搭載エンジンは1.8Lで、1986年にGTI 16Vが追加されます(写真はイギリス仕様のGTI)。
▼カブリオ
オープンモデル。1983年にゴルフ2へとフルモデルチェンジした際、カブリオについてはゴルフ1が継続販売される形になりました。1991年には限定モデルとして本革シートがおごられたクラシックラインが登場。初回販売ではグリーンメタリックとダークブルーメタリック、2度目の販売でグリーンメタリック、ダークブルーメタリック、ワインレッドメタリックが用意されました。
▼<番外編>ジェッタ
ゴルフのセダンバージョンがジェッタ。ゴルフが丸目なのに対し、ジェッタは角目になります。日本には1985年から導入されました。ゴルフは乗っている人も多いし、人とはちょっと違うモデルが欲しいという人におすすめ!(写真はイギリス仕様のジェッタGTI)
これ以外にも4WDのゴルフシンクロ、最低地上高が高められたゴルフカントリーなどが存在しますが、流通量は極めて少なくなっています。
「ほとんどのお客様は、どのタイプに乗りたいというのは決まっています。そのほうが僕たちも、在庫からこれがいいというのをお勧めしやすいですね」
またゴルフ2には丸目2灯と4灯が存在しますが、これは乗る人の好みで簡単に変えられるそう。角目のジェッタを丸目にもできます。
「2灯と4灯は流行りがありますね。大昔はみんな4灯にしている時期もありました。その反動で10年ほど前は2灯の人気が高まりました。最近はどちらが人気というのはなくお客様が好みで選んでいますが、クラシックラインを2灯にする人もいますよ」
■田中さんが考えるゴルフ2の魅力
ところで、田中さんはゴルフ2のどこに魅せられて専門店を開くまでになったのでしょう。
「もともとは見た目で入りました。そして乗ったらすごく面白くて、若い頃はレースに出たりもしていたんですよ。最近すごく感じるのは、ゴルフ2はすごくシンプルで“ちょうどいい”クルマだということです。
クルマが軽くて、変な電子制御が入っているわけでもないから今でも走らせて楽しいと思える。そして室内が広いから使い勝手がいい。ケチをつけるところがないんですよね。もちろん、『ここがこうだったらもっといいのに…』という部分はありますが、それは大きな不満というほどではなく、どこをとっても80点は取れているという感じです。
僕はゴルフ2以外にも、90点、100点を求めて別のクルマに乗ったりもしますが、ゴルフ2より秀でた部分があるクルマは別のところが50点、60点だったりする。するとその部分が気になって、やっぱりゴルフ2がいいかな、となるんです」
田中さんの言葉からわかるのは、ゴルフ2は極めてバランスがいいクルマだということ。だからこそ長く愛することができるし、次々と新しいクルマが登場してもその魅力が色あせないのでしょう。
そして足回りとボディ剛性がすごくしっかりしているから、走りを楽しみたい人も満足できる。これもゴルフ2の魅力だと田中さんは感じているそう。
一方で、普段使いしやすいモデルとはいえ30年以上前のクルマなので、日常点検や予防整備などはきちんとする必要もあります。
とはいえ、「常にクルマの状態を気にしながら万全の状態にしないと!」と肩に力を入れて乗らなければいけないというクルマでもない。人間にも体調の良い時と悪い時があるように、いつでも同じように動いてくれるわけではないということを理解した上で、「今日の調子はどうかな」とクルマへの意識を持つようにする。そして「少し変だな」と感じたら、放っておくのではなく早めに見てもらうようにすれば、快適なゴルフ2ライフを楽しむことができるはず。
「僕がお客様と話す時、これまで国産車を乗り継いできた人には『壊れるつもりで乗ってください』と話します。ゴルフ2に限らず、この時代のクルマは壊れないための工夫がされてないパーツもあったりしますから。そして若い頃にゴルフ2に乗っていたお客様には『ご自身の体も若い頃に比べて無茶が効かなくなっていますよね』と話します。若い頃と同じようには走れないかもしれないけれど、体調を整えればまだまだスポーツを楽しめる。ゴルフ2もそれと同じです」
乗る前から故障を気にしすぎて躊躇すると、せっかく目の前にある楽しさを存分に味わえなくなる。あまり構えすぎず、適度な意識を持ってゴルフライフをスタートさせましょう。
次回はゴルフ2の相場感と実車チェックをお届けします!
>> スピニングガレージ
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/316671/
- Source:&GP
- Author:&GP