新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでオンラインショッピングへの移行が加速したが、Amazon(アマゾン)は米国時間8月27日、実在店舗は消費者の買い物行動において引き続き重要な要素であるという考えを強調する大胆な動きに出た。eコマース大企業のアマゾンは同日、ロサンゼルスのウッドランドヒルズ地域に初のAmazon Freshスーパーマーケットを開店させた(Amazonリリース)。同社はAmazon Freshを今後次々に開店する計画だ。今後展開する地域としてはイリノイ州のオークローン、シャンバーグ、ネイパービル、カリフォルニア州のアーバイン、ノースハリウッドが明らかになっている。開店時期を含め、計画についてアマゾンはこれ以上コメントしなかった。
Amazon Fresh Storesの責任者Jeff Helbling(ジェフ・ヘルブリング)氏はブログ投稿で、店舗は差し当たって地域住民へ送る電子メールに基づく招待制で、営業時間は午前7時から午後10時、としている。営業時間やキャパシティなどについてのアップデートはこちらで案内される。
「アマゾンはすでにWhole Foodsや、小型店舗のAmazon Goをすでに展開しているではないか」と思っている人もいるかもしれないが、要はアマゾンは異なる顧客をターゲットに、新しいスーパー体験を一から構築したいのだろう。実際、これは消費者向けパッケージ商品と同じようなものだ。あらるゆ人向けの多様他種のブランドを抱えていて、消費者はそこにお気に入りのものを見つける。
また、米国の実在店舗を支配しているWalmart(ウォルマート)のようなライバルとの戦いを互角にするために、Amazon Freshの展開はアマゾンが描く戦略の重要な一部でもある。Statistaによると、米国のグローサリー販売は断片化されているが、Walmartのマーケットシェアは2017年に26%だった。アマゾンのWhole Foodsのシェアはわずか1.6%。ただ、オンラインを含む他のチャンネルを合わせるとシェアは4%近くだとアマゾンは推定している。それでも小さいことに変わりはない。
Whole Foodsは主にオーガニック食材や健康食品を取り扱っている(高価格であるために「Whole Paycheck」とのニックネームが付いている)。Goは小規模店で、AIやカメラを使った自動精算というアプローチをとり、新しいもの好きの人に軽食などを提供している。一方のAmazon Freshは、広く知られている主流の大手ブランドで、急成長中のAmazonレーベルの商品、豊富な調理済みアイテムなどを揃えている。
だからといってAmazon Freshがテックをたくさん使っていないというわけではない。店舗にはアマゾン Dash Cartという新機能が備わっている。店舗に行く前に、アマゾンのデバイスやAlexaアプリのAlexa Shopping Listsで買い物リストを作成できる。そして素早く買い物を済ませるためにDash Cartsを使う。目当ての商品を探す買い物客にアドバイスするために店舗にはEcho Showデバイスも設置される。
また、プライム会員には無料の配達も行う。Amazon Freshはこれまでオンラインのみでの展開で、実在店舗は幅広いAmazon Fresh展開の拠点となるだろう。
一からスーパーを構築することで、アマゾンはエクスペリエンスにより簡単に多くのテックを統合させることもできる。
実在店舗にとっては、新型コロナが引き続き拡大しているのは厄介だ。どこに住んでいるかによって、買い物するときに守らなけれなならない規則は異なる。マスクの着用が求められるところもあれば、店舗への入店や店舗内での行動が制限されているところもする。また、制限付きでの営業だったり、極端な場合は店舗閉鎖というのもある。
店舗の営業形態については、Whole Foodsのものをベースにしながら独自の基準を設ける(Amazonブログ)、とアマゾンは話している。従業員は毎日体温チェックを受ける。そして従業員、顧客ともにマスクを着用する。必要な人には無料の使い捨てマスクを提供する。そして店舗内の人数は最大50%に制限される。
LA店舗のオープンは、アマゾンの動きをフォローしていた人にとっては大きな驚きではないだろう。同社はしばらくの間、LAを含め大型小売店を設置する場所を時間をかけて選んでいた。しかし何よりも、人材採用によって多くの人がアマゾンの小売店舗設置を予想することになった。
同社はまた、米国外のマーケットでもスーパーの設置を検討していると報道されている。噂では、英国で何年も物色しているとのことだ。やや騒々しい英国マーケットも米国同様にかなり断片化されているが、シェアトップのTesco(テスコ)にアマゾンは目をつけてきた。Tescoは財政難に陥っているためだ。
皮肉にも、そうした小売チェーンの苦境は部分的にはアマゾンのようなサイトでのオンラインショッピングへの移行の結果だ。
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