TikTok(ティックトック)に差し迫る運命について洪水のように流れる報道についていけないと思うなら、私からアドバイスがある。ついていく必要などまったくない。ごらんの通り投資史上まれに見るドタバタ劇なのだからありのままを楽しめばいい。
安売りで知られるWalmart(ウォルマート)が参戦したのも面白いが、Oracle(オラクル)はB2Bの本業とTikTokの買収にどのようなシナジーを考えているのやら。Z世代をエンタープライズソフトウェアに惹き付けようという戦略だろうか?Trillerの参戦は(はてTrillerってどんな会社だっけ?、辺境の氷の惑星ホスに所在するらしい)アセットマネージメント企業をバックにしている(Bloombrg記事)という。ともかくBloombergの記事によればCentricustという会社だそうだがTikTokは断ったらしい(Nasdaq記事)。Twitterも手を挙げているという。Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏はソーシャルネットワークの拡大に関する戦略的助言を(ヨットクルーズ仲間の)ビヨンセから得ているのだろう(Vulture記事)。
ソフトバンクが買収を考えているのは間違いない(The Information記事)。同社はグループのモバイルネットワーク事業の株式、140億ドルを売却すると発表(Wall Street Journal記事)として人々を驚かせた。同グループにとって幸いな点は、TikTokの株価下落(少なくともその大部分)は投資する前に起きたことだ。
すべてて意味不明な話だが、そういうならTikTok自体が意味不明だ。TikTokに流れているビデオも会社の急成長ぶりも、確固たる理由がわからない。大統領がいきなり設定した売却期限の根拠もよくわからない。どういう手続なのかも不明だ。TikTokのような大企業を45日のうちに売るなどできっこない。 新型コロナウイルスの感染蔓延で安売りの石鹸が必要な消費者が多くなれば別だろうが、ウォルマートはニューヨーク市に嫌われており、いまだに出店ができずにいる。
私は2週間ほど前に TikTok買収関連の噂を煽っているのは投資銀行(未訳記事)だと指摘した。これは今でも正しいと思っている。我々はM&A銀河系の外れまでやってきており、TikTokの価値下落で痛手を被った投資銀行は躍起になって買収金額を釣り上げようとしているからだ(本艦はまもなくCentricus惑星系に突入する!)。
こういう次第なので、ここ1週間ほどはアナリストの帽子を脱ぎ道化師の衣装を着たほうがいい。TikTokの株式を持っていたり買収によってひと儲けを狙っていたりするのでなければこの一幕は大いに楽しめるはずだ。
新型コロナウイルスの感染蔓延も都市における社会的正義の実現も重大な問題だ。大統領選挙も11月に迫っている。映画「ブラックパンサー」でトゥチャラ王を主演したChadwick Boseman(チャドウィック・ボーズマン)氏の訃報が伝えられた。ハリケーンの「ローラ」がメキシコ湾を北上している。戦後日本で在職機関の最長記録を作った安倍首相が健康上の問題から辞職すると発表した。こうしたニュースのほうがTikTokをめぐるから騒ぎよりはるか大きな重要性がある。
TikTok問題については経済面をざっと眺めてあーなるほどと思う程度で十分だ。
一連の騒動は後日、もしかするとこの物語全体が次の偉大なビジネス書「Barbarians at the Gate」(門前の野蛮人)になるかもしれない。しかし、少なくともこの「野蛮人」は、適切なレベルの負債レバレッジで会社を破壊する方法を知っていた。そこにあるのは、ある案内係がもたらしてくれた会社が入札している、以前くすぶっていた事業の残骸を見ることができる。
どういう結果になろうと、順当にいけばマイクロソフトが買収に成功するだろうが、TikTokに流れている何百万というティーンエージャーの不器用なダンスのショートビデオと市場のアナリストの貪欲かつこの上なく真剣な目つきの対照は今の多難な時期にあたって思わず笑いをさそう光景だ。こういう息抜きを提供してくれた点については多いに感謝している。
画像:Jose A. Bernat Bacete / Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)