ソニーモバイルは、XperiaのSIMフリーモデル販売を本格化した。
これまでも一部のMVNOとSIMフリーモデルを展開した例はあったが、8月からは販路を広げつつ、取り扱うラインナップも多彩にした。キャリアから発売されたばかりのフラッグシップモデルをSIMフリー化するのは、今までになかった取り組みと言えそうだ。
ハイエンドモデルのSIMフリー版
SIMフリーモデルとして発売するのは、「Xperia 1 II」「Xperia 1」「Xperia 5」の3機種。これに、MVNO向けの「Xperia 8 Lite」も加えると、計4機種になる。
Xperia 1/5は19年のフラッグシップモデルで、現在販売中。20年のフラッグシップモデルで、5G対応のXperia 1 IIは10月30日に発売される。Xperia 8 Liteは、IIJmioやmineo、nuro mobileが取り扱う。
フラッグシップモデル3機種については、カメラにもソニーのデジカメ「α」のノウハウが注入されており、目にフォーカスを合わせる「瞳AF」や、画素数を1220万画素に統一したトリプルカメラを採用するのが共通項。
19年のモデルを新たに投入するのは珍しいが、これはデジカメでの成功例にならったとみられる。ソニーの「RX10」や「RX100」「α」などのデジカメは、世代を示す「II」「III」をつけ、それが併売されている。一概に世代が新しいほうがいいというわけでもなく、たとえば「RX10II」と「RX10III」では、前者が24-200mmで全域F2.8なのに対し、後者は24-600mmでF2.4-4.0とスペックに違いがある。どの倍率でも明るく撮れるRX10IIだが、ズーム倍率ではRX10IIIに軍配が上がるというわけだ。
Xperia 1とXperia 1 IIの場合は、どちらかと言うと直線的な進化で、Xperia 1 IIのほうがXperia 1より優れている点は多いが、販売価格が大きく異なる。5G対応でカメラのセンサーサイズも大きく、チップセットなどの処理能力も高いXperia 1 IIだが、そのぶん価格は12万4000円と高めなのに対し、Xperia 1は7万9000円とハイエンドモデルにしてはリーズナブル。Xperia 5はコンパクトモデルで、サイズに特徴があるため、併売する価値は高いと言えそうだ。
ソニーモバイルが抱えるSIMフリー市場への期待と迷い
ソニーモバイルは、19年には、Xperia 1のSIMフリー版として「Xperia 1 Professional Edition」を販売した。このモデルは、ディスプレイを個体ごとにチューニングするなど、その名のとおり“プロ向け”を意識したモデルだったが、ここでのユーザーの声が、SIMフリーモデルの拡大を後押しした。ソニーモバイルによると、同モデルの購入理由の1位が、「SIMフリーであること」だったという。
ただ、SIMフリー市場を見ると、売れ筋の端末は3万円前後のミドルレンジモデルが多く、ハイエンドモデルはなかなか数が出づらい。大手キャリアとは異なり、契約に伴う割引がないことや、元々通信費用の安いMVNOで使うことが前提のためで、ミドルレンジモデルのボリュームがどうしても大きくなる。どちらかと言えば、フラッグシップモデルは、ブランド力や技術力をアピールするために投入されるのが一般的だ。フラッグシップモデル3機種を投入したのは、ブランドを浸透させるのが目的と見ていいだろう。また、19年10月の電気通信事業法改正を受け、端末のトレンドにも大きな変化が出ている。大手キャリアでも、ハイエンドモデルの売れ行きが鈍り、売れ筋がミドルレンジモデルに集中し始めている。割引が2万円までに制限されたためだが、裏を返せば、ハイエンドモデルをわざわざキャリアで購入する必要が薄れつつある。こうした状況の中、SIMフリーモデルとしてXperia 1 IIなどを投入するのは、合理的な判断と言えそうだ。
販売数を稼ぐのは、約3万円とリーズナブルで、主力MVNOが取り扱っているXperia 8 Liteの役割と考えられる。Xperia 8 Liteは前身の「Xperia 8」とほぼ機能は同じ。Xperia 8はワイモバイルやUQ mobileが取り扱っているが、それをMVNOに拡大したと捉えることができる。一方で、キャリアはXperia 8の後継機にあたる「Xperia 10 II」を販売しており、Xperia 8 Liteが“型落ち”に見えるのも事実。Xperia 10 IIのSIMフリー版販売に踏み切らないところからは、ソニーモバイルの迷いも垣間見える。- Original:https://techable.jp/archives/136928
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- Author:Techable編集部