メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」が、フルモデルチェンジで2代目へと進化した。
従来モデルは車高が低く、都市部での機動力に優れていたが、SUVらしさは希薄だった。しかし新型は全高が高くなり、よりSUVらしいスタイルに。さらにSUVならではの機能性も高まっている。今回はそんな注目モデルの魅力をご紹介したい。
■初代より堂々として見える新しいGLA
初めて新型GLAの姿を目にした時、初代のイメージに引きずられたせいなのか、それとも、初対面がメルセデスのオフィシャル写真だったせいなのか、随分、平べったく、ヤワなクルマに見えた。
GLAと同じタイミングで日本に上陸した「GLB」は、SUVの王道をいくスタイルで、実車を目にする前にGLAとGLBの二択を迫られたら、迷わず後者を選択していたと思う。
ところが実車を目にして、完全に印象が変わった。新型GLAは写真で見るよりも、ずっと堂々としている。平べったくてナヨッとした印象などカケラもない。それもそのはず、コンパクトSUVの範ちゅうに収まるボディサイズを維持しながら、ディメンジョンが大きく見直されているのだ。
新しいGLAは、ホイールベースが初代より30mm長い2730mmとなるのに対し、全長は15mm短い4415mmに。また全幅は30mm広がって1845mmになっている。大きく変わったのは全高で、110mm高い1620mmになっている。
日本国内では、タワーパーキングに収まる条件から1550mmという値が全高のボーダーラインとされているが、新型GLAはその対応よりも、スタイルを優先したということだ。もちろん、クルマの保管環境は人それぞれなので、1550mm以下という全高は譲れない人もいるだろう。しかしスタイリングに関していえば、新型の全高アップは正解だ。SUVらしく、たくましく見えるようになった。しかも、押しつけがましさはなく、スタイリッシュなのがいい。万人受けしそうなルックスだ。
ディテールでは、下端のコーナー部に大きなエアインテークを配置したかのような、アグレッシブなデザインのフロントバンパーが印象的だ。かなり低い位置まで伸びているように見えるから、タイヤ止めブロックのある駐車スペースに前向き駐車する際、ぶつけるのではないかと心配したほどだ。
しかし、結論からいえば全くの杞憂で、コンパクトとはいえさすがはSUV。バンパーとタイヤ止めとのクリアランスはたっぷりとられていた。
■GLAはAクラスの“ユーティリティ拡張版”
GLAのベースとなったのは、パワートレーン(エンジン+トランスミッション)を横置きにレイアウトするハッチバックの「Aクラス」だ。同じ2リッターのディーゼルターボを搭載する「A200d 4マチック」を基準にGLAの寸法をチェックすると、GLAは5mm短く、35mm幅広く、200mm背が高いクルマということになる。
一方、インテリアの仕立てはAクラスに準じたもの。インパネのカウルを廃し、大型のタブレットを横に2枚つないだようなワイドディスプレイを備えるのが新鮮だ。
フロントシートは初代モデル比で100mmほど高い位置に配置され、よりSUVライクなポジションになっている。その分、Aクラスよりも腰の移動量が小さく、ラクに乗り降りできる。
メルセデスによると、フロントピラーの断面形状を最適化した結果、前方の視認性が向上したとのことだが、シートポジション(ヒップポイント)が高くなったのに伴ってアイポイントが高くなっていることも手伝い、前方視界は良好で開放感がある。そのため、車高の低いAクラスよりもリラックスした状態で運転に臨める。
リアシートには、140mmの範囲で調整できる、2:1分割式の前後スライド機構を備える。シートバックは2:1:2の割合で三分割に可倒でき(これはAクラスも同様)、荷物の量や乗車人数に応じてアレンジ可能だ。ラゲッジスペースの容量は、初代モデル比でプラス14L、Aクラス比でプラス65Lとなる435Lを確保している。
Aクラスをベースとしているので当然なのだが、こうして機能やスペックを対比させてみると、GLAはAクラスの“ユーティリティ拡張版”であるのがよく分かる。見晴らしが良くて(取り回しも含めて)運転しやすく、居住性やラゲッジスペース容量といった使い勝手もAクラスよりも上だ。スタイリングに関しては、Aクラスはスポーティでパーソナル感が強いのに対し、GLAは新型になってSUVらしい力強さを増しながら、都会的でカジュアルなイメージを重視している印象だ。
こうしたAクラスとGLAの関係性は、「マツダ3」と「CX-30」のそれに似ている。SUVに間口の広いキャラクターを持たせることで、ハッチバックはターゲットを絞ったコンセプトにすることができる。また、メカニズムの基本はAクラスであり、その派生車がGLAではあるのだが、実はクルマとしてのキャラクターはGLAの方がベーシックで、スポーティ&パーソナルに仕立てたのがAクラスという位置づけになっている。つまり、メルセデス・ベンツが展開するコンパクトカーセグメントのど真ん中に位置するのは、むしろGLAなのである。
■さすがはメルセデスといいたくなる静粛性の高さ
日本仕様のGLAは単一グレードで「200d 4マチック」のみの設定となる。エンジンは“OM664d型”と呼ばれる2リッターの直4ディーゼルターボで、最高出力は150馬力、最大トルクは32.6kgf-mを発生する。そこに8速のデュアルクラッチ式ATを組み合わせたところは、ひと足先に上陸したA200dと同じだ。
メカニズムに執着する(?)筆者としては、このトランスミッションがことのほか気になっていた。Aクラスのガソリン仕様に組み合わされる7速のデュアルクラッチ式ATよりギヤが1段多く分、変速比幅が広くなる。その分、一般的には発進性が向上し、高速走行時のエンジン回転数が低くなって燃費が向上する。
メーターで確認したところ、GLA 200d 4マチックの100km/h走行時のエンジン回転数は1500回転を少し下回る程度。極めて低い部類に入るが、それだけ低い回転域から十分な力を発生しているという証でもある。エンジン回転数が低いこともあってノイズレベル自体が低めだが、遮音も行き届いているので、エンジン回転数が高まるような走りをしても、ノイズが気分を邪魔するようなことはない。さすがはメルセデスといいたくなる静粛性の高さだ。ちなみに、同じデュアルクラッチ式のATを使用するフォルクスワーゲン/アウディの各モデルと比べると、GLAは1速ギヤがカバーする範囲が広いようで、その効果か、発進が力強いのも好印象だ。
そこに組み合わされるフルタイム4WD=4マチックの働きは、メーターに表示されるグラフィックで確認できる。前輪がスリップしたらカップリングユニットに内蔵される多板クラッチの圧着力を高めて駆動力を後輪に配分し…などというのは、もはや前時代的な制御であり、走行状況に応じて4輪のタイヤグリップを最大限に使い切るのが、現代的なフルタイム4WDの制御である。GLAの4マチックもそういった制御を採り入れていて、メーター表示を確認すると、弱い発進加速時にも後輪へと駆動力を配分しているのが分かる。もちろん、ドライバーが駆動力の変化に気づかないほど緻密な制御が行われていて、それがGLAの走りの安定感と安心感に結びついている。
新型GLAはコンパクトなボディサイズを維持しながらSUVらしさを強め、世界的にトレンドとなっているコンパクトSUVブームの波に堂々と乗っかってきた。その上、先進性、実用性、動力性能のいずれも申し分なく、メルセデスのコンパクトカークラスにおける主権をAクラスから奪う可能性も高そうだ。
<SPECIFICATIONS>
☆200d 4マチック
ボディサイズ:L4440×W1850×H1605mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:1949cc 直列4気筒DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:150馬力/3400〜4400回転
最大トルク:32.6kgf-m/1400~3200回転
価格:502万円
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文/世良耕太
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/322678/
- Source:&GP
- Author:&GP