アップルの今回のイベントでは新しいiPhoneは発表されなかったが、新しいスマートフォンを含むアップルの次世代ハードウェアすべてで使われる新しいチップが発表された。このA14 Bionicは最初にiPad Airに搭載されアップル最速のタブレットとなる。
A14はCPU、GPUの軍拡競争における画期的な製品だ。同社によれば、同社として初の5nm(ナノメートル)プロセスによるチップだという。極めて小さな基板上に118億個のトランジスタを集積した強力なアーキテクチャで前世代の7nmチップに比べて40%能力が向上しているという。毎秒11兆回の演算能力がある。
新しいiPad Airは、価格が魅力的なために若い層にもヒットしそうだが、このチップの採用によりゲーマーやアナリストなどのパワーユーザーにも適した製品となる。写真編集だけでなくさまざまなデータ分析も高速になる。このチップは16コアのニューラルエンジンを搭載しているためAIの中心的テクノロジーの一つである機械学習の分野で大きな威力を発揮する。
また A14は全体として極めて効率的な製品に仕上がっている。強力なパワーに対して消費電力が少なく、16コアの採用によってさらに多数のプロセスが並列的に処理できる。同社によれば、新しいiPad Airは一般的なWindowsノートと比べて最大2倍、最速のAndroid タブレットの3倍、最速のChromebookの6倍のスピードで作動するという。残念ながらアップルは具体的な製品名は挙げなかった。
激しい競争を繰り広げているコンシューマー向けエレクトロニクス製品市場において、チップは文字どおりデバイスの心臓部だ。次世代チップの能力はそのまま次世代デバイスの競争力となる。先日、NVIDIAが長年アップルにチップデザインをライセンスしてきたArmを4.2兆円で買収する計画を発表している。
これまでArmはいわばCPU メーカーのスイスだった。つまり多数のメーカーと等距離を保ちつつ求めるものに新しいチップアーキテクチャを提供してきた。A14はArmアーキテクチャをベースとしてアップルが独自に設計したチップで台湾のTSMCが製造する。
画像:Apple
【Japan編集部追記】アップルサイトによれば、新iPad AirはW-iFiモデルが税別6万2800円からなどと発表されている。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)