komham代表の西山すの氏に初めて会ったのは、大手テック企業の発表会だった。当時彼女は、PR会社で企業ブランディングを手がけており、その後も発表会で何度か顔を合わせることがあった。その西山氏が、地元北海道に戻ってバイオテックのスタートアップkomhamを起業したことを知り、今回取材を申し込んだ。
牧草由来の微生物群で生ゴミや畜糞を1週間で分解
komhamは、牧草由来の微生物群で生ゴミや畜糞を1週間で分解する技術を擁するスタートアップ。もともとは西山氏の父親が手がけていた事業を引き継ぐかたちで新たに法人化した会社だ。すでに導入して8年が経過している取引先もあり、微生物群の働きは実証済みだ。
そんな思いを抱きながらもPRやブランディングの仕事を続けていたころ、当時の部下がいつもエコバック持ち歩いたり、木のスプーンを使ったりとエコな日々を送っていたのを見たとき、環境に優しい半面、それをチョイスする生活者の意識に依存した仕組みでは継続が難しいと感じ、個人レベルではなく社会的にサステイナブルな事業を考え始めたという。
とはいえ、ゴミ処理系の技術はこれまで詐欺まがいの事例が過去に何度もあり、業界的にすんなり受け入れてもらえる素地は整っていないことを知る。業界に認めてもらうには、科学的根拠をしっかり公開したクリーンな経営が必要とされていることを認識。この点をきちんと進めれば、すでに実績も出ている事業なので勝てる可能性があるのではないかと感じたそうだ。
すでに10トン/日の処理実績、導入して8年の産廃処理業者も
課題は科学的根拠と大量生産技術
ネックとなるのは現状のkomham菌の製造方法で、大量生産の技術が確立されておらず、新規顧客は年間で1〜2社程度しか増やせないとのこと。そのため、後日発表する学術機関との共同研究で培養実験も開始する。培養実験が成功して大量培養できるようになった際に、一気にドライブかけられるようにしたいとのこと。処理するゴミの種類に合わせて菌のブレンドを変えて、バイオマス処理の効率化も図りたいという。
ほとんどの銀行が門前払いの中、唯一北海道銀行が融資 ・事業伴走
komhamは2020年1月設立の創業の間もないスタートアップで、現在はデットファイナンス(融資、借入)による資金調達で会社を運営している。拠点が東京でもなく、事業がSaaSやAI、ロボティクスなどテックでもないため、資金調達にはかなり苦労したそうだ。
バイオテック系の事業は、事業計画が半年、1年と遅れてしまうことケースが多くあり、起業したばかりで先が見通せない状況では、株主にとっても自分たちにとっても現状ではメリットが見い出せないため、まずエクイティファイナンス(第三者割当増資)の調達は難しいと感じたそうだ。ネットサービスやソフトウェアであれば、とりあえずローンチ日までに基本機能の実装を間に合わせて、あとでアップデートをかけていくという手法を使えなくもないが、バイオテック系の事業は人が頑張っても乗り越えられない壁があるわけだ。もちろん、前述した大学の共同研究によって、科学的根拠や量産体制が整えば事業シナジーのある企業やVCから調達したいと考えているが、現在はエクイティを検討する材料がまだそろっていないとのこと。
残るはデットでの資金調達となるが、創業したばかりで資本金100万円、社会的信用のないkomhamに対して、ほとんどの銀行から融資の前段階で却下され、申し込みすらできない状態だった。そんな中、唯一相談に乗ってくれたのが地元の北海道銀行だった。融資だけでなく、営業支援や会ってみたい人との仲介など、北海道銀行がサポーターとして伴走してくれていることは本当に心強く、事業を早くグロースさせて恩返ししたいという気持ちが強くなったという。
カテゴリー:バイオテック
タグ:komham、北海道
画像クレジット:komham
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/10/13/komham/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Hiro Yoshida