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暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.4~10.10)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月4日~10月10日の情報をまとめた。

NTT Comがセキュリティインテリジェンスを売買する「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」の実証実験

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月6日、セキュリティ対策に欠かせない情報セキュリティインテリジェンスを参加者間で売買し利活用するプラットフォーム「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」の実証実験の開始を発表した。同実験の参加者を募集する。

NTT Comが開発を進める「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」は、個人で活動するセキュリティエンジニアや企業が独自に入手したサイバー攻撃者のIPアドレスや悪質サイトのURLなど、これまでは入手が難しかったセキュリティ対策に有益な情報となるセキュリティインテリジェンスの売買が、プラットフォーム参加者間で可能となる。

プラットフォームには、ブロックチェーン技術およびスマートコントラクトが採用されており、安心・安全なセキュリティインテリジェンスの売買が可能な仕組みが実装されている。参加者はセキュリティインテリジェンスを売ることができ、また流通するセキュリティインテリジェンスを購入し、自社サービスなどに利活用できる。

プラットフォームのメリットとして、参加者は取引されるインテリジェンスの流通状態と購入者のフィードバックが確認可能なため、セキュリティインテリジェンスに対する評価および利用状況(人気など)を把握できる。

また、参加者間で相互に情報共有を行えるため、そのままでは利活用が難しいセキュリティインテリジェンスを利用可能にする方法などを学習できる。

実証実験は、プラットフォームのさらなる改善に向け、参加者からのフィードバックを目的に実施される。参加希望者は、専用の応募フォームより申し込み可能。法人、個人を問わず参加できる。

セキュリティインテリジェンスをビジネスへ展開

グループ会社であるNTTセキュアプラットフォーム研究所は、サイバー攻撃を継続的に収集・解析することで、最新のマルウェア感染の特徴を正確かつ効率的に特定する技術を創出してきた。

しかし昨今では、新たなタイプの攻撃やマルウェアの出現が非常に短いサイクルとなり、攻撃も複雑化するなど、サービスを創出することが単一の技術、単一の企業だけでは困難になっている。

そこで、同研究所はインテリジェンス創出技術の研究開発に着手し、NTTコミュニケーションズらと連携し、セキュリティインテリジェンスを総合リスクマネジメントサービス「WideAngle」へとビジネス展開をする。

一般的なセキュリティインテリジェンスは、サイバー攻撃防御用の情報を示す。同研究所のセキュリティインテリジェンスは、マルウェア感染時の通信先や感染者の通信先にかかわるIPアドレスやURLなどの情報で構成されている。

セキュリティインテリジェンスをビジネスへ展開するためには、悪性と判断した根拠情報や使用用途に関する情報を明示する必要がある。

同研究所では、おとりシステムであるハニーポットを用いて意図的に攻撃を受けて、マルウェアを収集する。ハニーポットへの通信を解析し、マルウェア感染の際に利用された脆弱性の情報を根拠情報として特定するとともに、マルウェア感染を防御するために有効な情報を特定するなど、他社では収集できない悪性サイトURLを特定。さらに、収集した悪性サイトURLを解析し、未知の悪性サイトURLを特定するという。

また、ハニーポットで収集したマルウェアを解析し調査することで潜在的な脅威を解明する。マルウェア感染によって発生する通信を解析し、追加のマルウェアを取得する際の通信先サーバーや、攻撃者が設置した指令サーバーなどを発見し、マルウェア感染の被害を抑制するために有効となる情報を特定することが可能だ。

マルウェアを解析する際に、解析環境におとりのウェブサイト管理者アカウント情報を配置しておくことで(ハニートークンという)、管理下のもとサイバー攻撃者に改ざんさせ、さらに最新の攻撃情報を収集できるという。

こうしたNTTセキュアプラットフォーム研究所で創出したセキュリティインテリジェンスが、NTT Comのサービスに現在活用されている。

今回の「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」による実証実験は、さらにその先にあるセキュリティインテリジェンスの創出方法を検討するものと見られる。

なお、プラットフォームの今後の展開は、同実験の結果を踏まえ、来年度以降の商用化を目指し改善に取り組む予定となっている。

国際決済銀行(BIS)・日銀ほか主要中央銀行がCBDCの基本原則や機能についての報告書を共同発表

世界各国の中央銀行から構成される国際決済銀行(BIS)は10月9日、日本銀行など主要中央銀行7行と共同で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の基本原則およびコアとなる特徴についてまとめた報告書を作成し発表。BIS公式サイトにて、報告書「中央銀行デジタル通貨:基本原則とコア機能」(Central bank digital currencies: foundational principles and core features)を公開した日本銀行仮訳も公開)。

なお同グループは、CBDCの基本原則と基本的な特徴を報告書にまとめたが、発行するか否かについて意見を示すものではないこと、CBDCの実現可能性に関する研究を継続するものの、発行をコミットするものではないことを明示している。

報告書の作成は、カナダ銀行欧州中央銀行日本銀行スウェーデン国立銀行スイス国立銀行イングランド銀行米連邦準備制度理事会(FRB)および国際決済銀行によるグループにて作成されたという。

中央銀行は、公共政策の目的の一環として、何百年もの間、信頼できる資金を国民に提供してきた。しかし、世界は暗号資産、ブロックチェーンの登場により変わりつつある。デジタル社会の中で、中央銀行は公共政策の目的を進化させ追求するために、デジタル通貨を国民に提供することの是非について積極的に研究している。

報告書では、いずれの法域においてもCBDCを検討するためには、一定の基準を満たす必要があるとして3つの基本原則を示した。当局はこれらを堅確に満たす必要があることを強調。

またこれらの原則に基づき、将来のあらゆるCBDCシステムが備えるべき基本的な特徴もまとめている。

同グループに参加した各中央銀行のCBDCを検討する共通動機は、決済手段としての利用という。信頼されるマネーの供給は、中央銀行がその使命を実現し、広範な政策目的を支えるための中核的な方法と指摘。取引目的の現金利用の低下は、人々による中央銀行マネーへのアクセス低下という課題を生むほか、金融包摂、プライバシーにかかる権利についての懸念を高めかねない。現金が引き続き頻繁に使われている法域においても、この点でCBDCは、国内決済システムの強靭性および多様性を高めうるとしている。

またCBDCは、これまで現金では実現し得なかった機会を提供する可能性もあると指摘。利便性と利用可能性を備えたCBDCは、民間マネーの安全性が低い場合にはその代替を果たし、利用者へのプライバシー提供、違法な活動の抑制、財政給付の円滑化、あるいは「プログラマブル・マネー」の供給を実現するとしている。

しかし、こうした機会はトレードオフを伴う可能性があるほか、通貨への信認を脅かすなど中央銀行の任務遂行能力(マンデート)に関わりがない限り、中央銀行にとっては副次的な動機とした。

さらに、CBDCの導入は金融安定への含意を有しており、慎重に評価し管理する必要がある点を指摘。第一にストレス時の「デジタル逃避」の可能性、第二に銀行の資金調達へのより長期的な影響が含まれる点を挙げた。

CBDCの3つの基本原則の目的と内容

報告書は、中央銀行の公共政策の目的に貢献するために、CBDCと支援インフラが必要とする共通の3つの基本原則と主要な特徴を概説する。それにより、国際的な基礎的作業を前進させるとした。

報告書の基本原則は次のことを強調している。

中央銀行がCBDCの発行を検討する際に重要な基本原則は、共通の目的から導かれているという。

ひとつ目は、「害をおよぼさない」こと。中央銀行が供給する新たな形態の資金は、引き続き公共政策の目的の達成を支援すべきであり、中央銀行の通貨・金融の安定のための任務遂行能力(マンデート)を妨げたりしてはならない。

ふたつ目は、「共存」である。中央銀行には安定の責務があり、新しい領域では慎重に行動することとする。新しいもの(CBDC)と既存のもの(現金、準備金、決済口座)、それぞれ性質の異なる中央銀行マネーは、互いに補完し合い、公共政策の目的を支えるために強固な民間資金(たとえば商業銀行口座など)と共存すべき。また、中央銀行は現金に対して国民の需要がある限り、現金の提供と支援を継続すべきである。

最後は、「イノベーションと効率性」。法域内の決済システムの効率化を推進するための継続的なイノベーションと競争がなければ、利用者は、安全性の低い他の金融商品や通貨を採用する可能性がある。それは最終的には、経済・消費者に悪影響をおよぼし、金融および金融の安定性を損なう可能性がある。

さらに報告書では、これらの基本原則を満たすために、CBDCの制度、その基礎となるシステム、およびそれらが存在するためにより広範な制度的枠組みを網羅する、14の中核的特徴を特定し、記載している。

これらの基準をしっかりと満たし、同グループが(報告書に)設定した機能を提供するCBDCは、中央銀行が公共政策の目的を達成するための重要な手段となり得るとした。

ただし、中央銀行の懸念材料として、CBDCが銀行の資金調達や金融仲介に与える悪影響の可能性は、法定通貨の不安定化の可能性を含め、常にあるという。

中央銀行によるCBDC発行の決定は、これらのリスクがCBDCの設計に組み込まれたセーフガードと、より一般的な金融システム政策との何らかの組み合わせを通じて管理できるという、十分な情報を得た上での判断にかかっているという。

CBDC発行の可能性は、共通の原則および特徴に関する合意とともに、CBDCに関する将来の国際協力、知識共有および実験の余地がかなりあることを意味している。中央銀行によるCBDCの同時研究開発は、意図しない結果を回避しつつ、G20のロードマップ「CPMI第二次報告書」の一部として、国際送金を改善する方法を探求することもできるという。

CBDCの潜在的な市場構造への影響、金融の安定性への影響、および潜在的な緩和策を理解することは、同グループのさらなる作業領域であるとした。CBDCの詳細については、報告書を一読することをお勧めする。

日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する方針を発表

日本銀行は10月9日、世界的に話題となっている中央銀行デジタル通貨(CBDC)についての新たな方針を発表。「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表した

世界的には、CBDC発行に向けて具体的に動いている国がいくつか存在する。こうした国では、国民の現金使用比率が顕著に低下、あるいは自国通貨や決済に関するインフラが未整備であるため、最新デジタル技術を全面採用しイチから決済制度を構築したほうが効率的など、差し迫った事情がある。

日本にはそのような事情は存在しないため、日銀は、現時点でCBDCを発行する計画はないと明言。

しかし今後、よりCBDCに対する社会のニーズが高まる可能性もあり、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、将来の環境変化に的確に対応できるよう、しっかりとした準備が重要と考えているという。こうした認識のもと、企業や個人の利用を想定する「一般利用型CBDC」について、日本銀行の取り組み方針を示したとしている。

CBDCには、「一般利用型CBDC」のほかに、大企業・官公庁・地方自治体・金融仲介機関など大口金融取引での利用が想定される「ホールセール型CBDC」のふたつの形態があるとされている。

日銀は、CBDC導入時に期待されるCBDCの機能・役割として、「現金と並ぶ決済手段の導入」「民間決済サービスのサポート」「デジタル社会にふさわしい決済システムの構築」を挙げている。

一般利用型CBDCが導入される可能性について日銀は、現金流通高の対名目GDP比率が20%程度と高いことなどから、一般利用型CBDCを導入する必要性は当面生じないとの見方も少なくないと指摘。

仮に将来、暗号資産や民間のデジタルマネーの影響で現金の流通が大きく減少する状況が生じた場合、一方で民間のデジタルマネーが現金の持つ機能を十分に代替できない状況においては、現金と並ぶ決済手段として、一般利用型CBDCを提供することが考えられるという。

ただし、クリーンで偽札も少ない銀行券に対し一貫して高い信頼が寄せられており、日銀は現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任をもって続けていくとした。

また、現金の流通が現状のままの場合においても、決済システム全体の安定性・効率性を高める観点から必要であれば、民間決済サービスをサポートするためにCBDCを発行することが適切となる可能性があるという。現状、暗号資産を決済手段とした場合、ボラティリティの影響が大きく実用的ではないとされていることから、法的に問題のない安定したステーブルコインの登場が望まれているが、その代替案として一般利用型CBDCの利用も考えられる。

これらに加え、より広い観点から、日銀がCBDCを発行したうえで、民間事業者の創意工夫により様々なサービスを上乗せして提供することなどが、デジタル社会にふさわしい安定的・効率的な決済システムの構築に繋がる可能性も考えられるとした。

一般利用型CBDCの発行形態と基本的特性

一般利用型CBDCを発行する場合は、「間接型」の発行形態が基本であり、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造を維持することが適当であるとした。

また、日銀は「間接型」の一般利用型CBDCに必要な基本的特性についても言及。

まず、CBDCを誰でも使えるものとするため、決済や送金時に利用する端末、カードなどの利用対象者を制限することがないよう、簡便性や携帯性に関する設計面を工夫した「ユニバーサルアクセス」が必須であるとした。

CBDCを安心して使えるものとするためには、偽造抵抗力を確保し、各種不正を排除するよう、「セキュリティ」を高める取り組みが必要である。また、CBDCは、エンドユーザーが24時間365日、常に利用できる「強靱性」を持った仕組みも必要となる。システム障害や通信障害を想定しオフライン環境下でも利用できる仕組みを確保することも、自然災害の多い日本においては重要なポイントになる。

さらにCBDCには、現金と同様に決済のファイナリティ(支払完了性)および「即時決済性」が求められる。多数のユーザーによる高頻度の決済を迅速に完了させるためには、システム面での十分な処理性能と将来の利用増加に備えた拡張性が必要となる。

運用システムについては、民間決済システムなどとの「相互運用性」を確保していることや、将来の民間決済サービスの高度化などに適応するために柔軟な構造となっていることも重要であるとした。

今後の取り組み方針

日銀は、CBDCに対する今後の取り組み方針として、実証実験を行っていくことも明らかにした。

今後は、これまでのリサーチ中心の検討ではなく、実証実験を実施し、具体的・実務的な検討を行っていくとした。まずは、「概念実証」(PoC。Proof of Concept)のプロセスを通じて、CBDCの基本的な機能などについて技術的に実現可能かどうかを検証する。PoCの結果、必要であればパイロット実験の要否についても検討するという。

PoCは段階的に行っていく予定で、システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行・流通(送金)・還収の基本機能に関する検証を行う「概念実証フェーズ1」については、2021年度の早い時期に開始することを目指す。

「概念実証フェーズ2」では、フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する。

PoCを経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形での「パイロット実験」を行うことも視野に入れて検討していくとした。

制度設計面の検討

日銀はPoCと並行して、「中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方」「CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方」「プライバシーの確保と利用者情報の取扱い」「デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方」など、制度設計面の検討も順次行っていくという。

こられCBDCについて日銀は、引き続き、他の中央銀行と連携しながら、CBDCの基本的な特性や実務面に及ぼす影響について理解を深め、自らの検討に活かしていく。

また、CBDCの導入については広範かつ大規模な取り組みが必要となることから、銀行やノンバンク決済事業者、ITや法律の専門家、関係当局など、内外関係者と協力し、様々な知見を今後の検討に活かすことを重視していくとした。

なお、各項目の詳細については「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の全文がPDFにて公開されているので、そちらを参照いただきたい。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NTTコミュニケーションズNTTセキュアプラットフォーム研究所国際決済銀行(BIS)セキュリティ中央銀行デジタル通貨(CBDC)日本銀行フィンテック

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