米司法省は20日、Googleを独占禁止法違反で提訴しました。同省による巨大テック企業を相手取った大型訴訟は、Windowsが問題視されたMicrosoft以来となります。もっとも、この訴訟はGoogle単体で完結する話ではありません。提訴の主体はあくまでもGoogleですが、主に問題となっているのはAppleとGoogleの契約だからです。
Googleから110億ドルが支払われていた
何年も前からGoogleは莫大な契約金をAppleに支払い、Safariのデフォルト検索エンジンとなる“栄誉”に授かっていることが指摘されてきました。巨大テック企業同士がこのような契約を行うことで、ライバル企業が競争から不当に排除されたと米司法省はみています。
この契約金の規模について、Goldman Sachs証券が95億ドル(約1兆円)、Bernstein証券が80億ドル(約8,400億円)と見積もっていましたが、AppleとGoogleは口を閉ざしており詳しい額は不明のままでした。
しかし今回、司法省が訴訟の際に用意した資料から、Googleが支払った額はAppleの年間収益の15%〜20%相当だったと判明しました。ここから、およそ110億ドル(約1兆1,490億円)がAppleに支払われたと、Wall Street Journalは見積もっています。つまり裏を返せば、Appleの収益にはGoogleの契約金が少なくないウェイトを占めていたことになります。
「あたかも一つの会社であるかのように」
Wall Street Journalによると、Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)とGoogleのスンダル・ピチャイCEOは2018年、協力して検索収益を増やしていくために話し合いの機会を設けていたことが分かっています。
さらに訴訟資料では、Apple幹部がGoogle幹部に対して「我々のビジョンは、あたかも一つの会社であるかのように協業することだ」とコメントしていたことも暴露されており、世間の想像以上に両社が緊密な関係を維持していたことが判明しました。
司法省が睨んだ通りであれば、消費者からの「Appleは表向きこそプライバシー尊重を掲げてGoogleと距離を保っていながら、裏では手を組んでいたのではないか」といった誹りは免れないでしょう。Appleはユーザーの情報で直接的には利益を得ていないだけで、実際にはGoogleが“汚れ役”を引き受けていたと見ることもできます。
Googleは「消費者のためにならない」と反論
もちろん、Googleも司法省の訴えをそのまま認めるつもりはありません。関係者によると、今回の訴訟は決着まで数年越しとなることが予想されています。
Googleの法務部門を統括するケント・ウォーカー氏は「この訴訟は消費者にとって何の助けにもならない」とブログで批判、「それどころか、低品質の代替検索サービスを人工的に手助けし、端末の料金を上げ、自分たちが使いたい検索サービスを見つけることをより難しくするだろう」と反論しました。
またAppleとの提携についても、他の企業同士が行う契約と差はないとし、違法性はないと主張しています。
Googleと距離を置き始めたApple
執筆時点(10月22日)でAppleは沈黙を保っていますが、訴訟が起きてから振り返ってみれば、Googleとの関係の切り離しは何カ月も前から入念に準備されてきたとも言えます。
例えば、iOS14ではトラッキング防止機能が採用されています。GoogleやFacebookはユーザーの位置情報やWebサイト閲覧履歴データをトラッキング(追跡)し、そのユーザーに最適だと思われる広告を表示(トラッキング広告)することで、莫大な利益を上げてきました。
つまりトラッキング防止機能の採用は、Googleの検索ビジネスから莫大な利益を得ていたAppleが、彼らの利益と相反する行動を採ったことを意味します。
また、これまではSafariが特権的な地位を有していましたが、iOS14からはサードパーティーのブラウザもデフォルト設定できるようになりました。これで「メール」アプリでURLをタップしても、Safari以外のブラウザ(デフォルト検索エンジンがGoogle以外のサードパーティーブラウザも含む)を起動できるようになります。
さらに9月には、SafariでGoogleの検索エンジン採用を止め、自社開発の検索エンジンへの変更を検討していることも報じられました。
こういったAppleの一連の行動は、ユーザーのプライバシー尊重が最大の目的だと考えられてきました。しかし、巨大テック企業への風当たりが強まり、政府当局の取り締まりが厳しくなることを見据えて、蜜月関係だったGoogleとの関係を見直す腹積もりだったとの指摘は可能でしょう。
いずれにせよ、両社の関係がこれだけ問題となった今、Appleが社是として掲げてきた“ユーザー第一”のビジョンがもう一度問い直されているのは明らかです。
Source:WSJ
(kihachi)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-323163/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania